国連サミットで採択された国際目標・SDGs(持続可能な開発目標)には、「質の高い教育をみんなに」という教育に関する項目も定められている。

2015年に国連サミットで採択されたSDGs。17のゴールで構成される
2015年に国連サミットで採択されたSDGs。17のゴールで構成される
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その一方で新潟県内では、小中学校の不登校の児童・生徒数が年々増加している。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた2020年度は、過去最多の3112人となった。

不登校の児童・生徒数(新潟県内の小中学校)
不登校の児童・生徒数(新潟県内の小中学校)

そんな中、不登校の子どもたちが自分らしく輝ける社会を目指して奮闘する1人の男性を取材した。

NPO法人立ち上げた現役教師 “どの子も自分なりの輝き方を”

「学ぶべきことは教科書の中にだけあるのではない」ーー。不登校経験者の体験談などが記されたフリーマガジンがある。これは不登校の子どもたちを応援しようと作られたものだ。

不登校の子どもたちを応援するフリーマガジン「OPEN Schooling」
不登校の子どもたちを応援するフリーマガジン「OPEN Schooling」

このフリーマガジンの企画・構成に携わったのは、現役の小学校の先生だ。
2022年春、新潟市西区の内野小学校に赴任し、5年生の担任をしている佐藤裕基さん。

内野小学校 教員 佐藤裕基さん
内野小学校 教員 佐藤裕基さん

児童:
優しくて分からないところとかは何でも教えてくれる
児童:
優しくて、あまり怒らない

児童から穏やかな印象を持たれている佐藤さんには、もう一つの顔がある。

佐藤さんは2018年、不登校の子どもたちを支援するNPO法人「みらいびらきLabo.」を立ち上げた。主な活動は週に2日、不登校の子どもに対して無料で行っているカウンセリングだ。

NPO法人「みらいびらきLabo.」
NPO法人「みらいびらきLabo.」

この日は新型コロナウイルの影響で、登校が徐々に難しくなったという中学1年生の高杉颯さんと母のみどりさんが佐藤さんのもとを訪れた。

カウンセリングと言っても、佐藤さんが颯さんと向き合う上でメインとしているのは、カードなどを使ったゲーム。

佐藤さんは、子どもが好きな遊びなどを通じて、自分の能力に気づくことが重要と考えている。

みらいびらきLabo. 佐藤裕基さん:
学校に行けている、行けていないということに限らず、どの子も自分なりの輝き方をしていいということを色んな人に伝えられれば

佐藤さんの思い
佐藤さんの思い

“引け目感じずに外へ” フリーマガジンの1ページに込めた思い

「不登校でも輝けるように」という思いから佐藤さんが作ったフリーマガジンには、こだわりのページがある。

それは一番最後、“不登校の子が外に出て学びを深めている最中である”という“証明”が掲載されたページだ。

フリーマガジン 最後のページ
フリーマガジン 最後のページ

人目を気にし、外出を遠慮しがちな不登校の子どもたち。佐藤さんはこのページを持つことで「うしろめたさを感じずに、外に出てほしい」と話す。

みらいびらきLabo. 佐藤裕基さん:
学校に行っていないからと引け目を感じてしまって、活動がしにくくなっているお子さんに、積極的に色々なことにチャレンジしてほしいということで、あのページを作った

そんな佐藤さんの思いは颯さんにも届いていた。

高杉颯さん:
他の人から見て、不登校ってあまりいいイメージではないかもしれないけれど、積極的に外に出ていいという見方もできるんだなと思った。自信と言っていいか分からないけど、自信がついてくるような気がする

高杉颯さん
高杉颯さん

高杉颯さんの母 みどりさん:
「不登校でもいいじゃないか、色んな生き方があるよ」というのを読んで、ちょっと気が楽になった

「能力・強みが形になるのが質の高い教育」社会の理解を広げたい

この日、佐藤さんは新潟市西区にあるフリースクール「ロビオキ」を訪れた。

ロビオキ代表 野口治さん:
この『ただいま学びのために外出中です』というパスポート。これが皆さん、すごくいいと言っていて

ロビオキの代表を務める野口治さんは、佐藤さんの活動に共感し、フリーマガジンの配布にも協力している。

ロビオキ代表 野口治さん
ロビオキ代表 野口治さん

ロビオキ代表 野口治さん:
支援する側の目線だと、本当はもっと支援できる場所が増えていってほしい

みらいびらきLabo. 佐藤裕基さん:
不登校の子どもたちをどうしていってあげるべきかということは、学校だけで解決していくことではない

「不登校の子どもたちの学びの場を広げていきたい」そのためにも、佐藤さんはフリーマガジンをより多くの人に届けることで、社会の理解を深めていきたいと考えている。

みらいびらきLabo. 佐藤裕基さん:
その子が持っている能力・強みが実際に形にできるという仕組みが質の高い教育だと考えている。どんな状況にある子でも安心して暮らしていいし、自分の実現したいことに向かって全然臆することなく頑張っていっていいと思える社会ができるといい

すべての子どもたちが強みを生かし、羽ばたける社会を目指して、佐藤さんの活動はこれからも続く。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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