成人年齢引き下げで、18歳・19歳が新たに成人となり、様々な契約を親の同意なしで結べるようになった。
そんな新成人たちに狙いを定めているのが、「悪質商法」だ。

「ビジネスのノウハウ」「簡単に儲かる」…こうしたうたい文句の先にある実態を取材した。

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高額SNSコンサルティング

 大学生のAさん(22)。
2019年、19歳のとき高額な契約を結びトラブルになった。

Aさん:
中学を卒業したら、もう起業するっていう生き方で考えていたので。会社を運営して行くにあたって、その下積みの段階でマーケティングを学びたい

経営者になるためにSNSを使った広告宣伝を勉強したいと考えていたとき、あるYouTubeの動画を見つける。
詳しい話を聞くためLINEで直接連絡をすると、コンサルティングの受講を勧められた。

Aさん:
『誰でも簡単に稼げちゃう』という、うたい文句だった。そんな簡単に集客できる方法があるのかと引っかかっちゃった。不信感は覚えたけど、リミットが迫っているというか、人数に制限があるよっていう脅しをかけられて、急かされた感じ

焦らされたAさんは、98万円という高額にも関わらず、起業に必要と、親に援助してもらい契約することに。

「これで“SNSでの広告宣伝方法”が学べる!」そう考えていたAさんだったが…。

Aさん:
要は、僕たちはただフォロワー稼ぎの駒にされているだけで、運営方法を学べていない

結局ユーチューバーは、AさんにSNSアカウントの投稿作成を指示するだけ。自分の商品の売り上げを伸ばす手伝いをさせていたのだ。

だまされたと感じたAさんは弁護士にも相談したが、裁判を起こすしか方法がないことを知り、返金を断念した。

Aさん:
きれいな人間ばかりだと思っていたのが実際のところ。大人を信じ切ってしまったという面も強くありますし。何よりも向こうはお金稼ぎのために話しかけているので、すごい優しい口調で契約に持ち込んでくる。急がされているし思考停止に陥っている中で、考える間もなく契約って感じで、信じちゃったのかな

狙われる若者 10代からの相談が増加

副業や投資などのノウハウを紹介するとうたう、いわゆる情報商材や、インターネットなどで手軽に投資ができる暗号資産に関する10代からの相談は増加傾向にある。 

このような消費者トラブルは、SNSが入り口になるケースが多いということだ。

日常的にSNSに触れている“新成人”たちは、どう思っているのだろうか。

 大学新入生:
ビジネスに興味ありませんか?っていう(ダイレクトメッセージ)は来ましたね、よく。そういうのは怪しいなって思っていました
(ダイレクトメッセージに)全然返してないです。危ないことはしたくないので。
そういうアカウントは基本あんまり見ないようにしている。どれが本当かもわからないので。SNSの情報はあまり頼りにしていないですね

しかし、詐欺などの心理学に詳しい専門家は、現実には様々な方法で警戒心をかいくぐってくると指摘する。 

立正大学 心理学部 西田公昭教授:
怪しいものとして認知できているものは、実はごくごく単純で分かりやすい一部に過ぎなくて、ほとんどの仕掛けはそんな甘いものではないことをよく知っていないといけない。『まさかそこの人が』とか『この仕掛けがそういうものだった』とか、気づかないところで起きているっていうのが普通なんです

新成人を狙うその手口とは?

 「暗号資産マルチ」

中部地方に住む専門学生のBさん(19)。
数カ月前まで、あるマルチ商法にはまり、人生を台無しにする一歩手前だった。
自分と同じ経験をする人を減らしたいと、母親とともに取材に応じてくれた。

Bさん:
中学からの(同級生)が、インスタとかで広告みたいな感じで『なんかやってるな』みたいな。なんか変なことしているってのは周りから聞いていたので、『あまり関わらないようにしよう』と思っていたんですけど。ある時、電話がかかってきて、その子に『ご飯行こう』って言われて。『誰と行くの?』って聞いたら、『仲良い友達2人と一緒にごはん行くよ』と言われて。じゃあ『それだけだったらいいな』と思って行ったんですけど

食事の誘いのはずが、海外を拠点とした暗号資産への投資の勧誘だった。

家族が経営する自動車整備工場を大きくするためにお金が必要だと考えていたBさんは、アルバイト代からまず14万円を入金する。
警戒心はなかったのだろうか。

Bさん:
最初は僕も『詐欺かな』って疑いの心を持っていたんですけど、だんだんそれが『本当なのかな』みたいな。周りの人たちも良い人いっぱいいたし、『これは詐欺じゃないな』っていう気持ちが芽生えてきて、本格的にスタートして。言葉とかは、難しくて理解はできてなかったんですけど、そのお金を生むサイクルみたいなのができているんだなと思って、これは本物なんだなみたいな感じに思っていました

当時の様子について母親は…

 Bさんの母親:
全く人が変わったような感じになった。もうそれしか見えてないっていう、周りが見えない、投資をすることだけに一生懸命になっちゃっていて。最初のうちは、『詐欺だよ』とか、『そんなのあるわけないじゃん、そんな楽して稼げることはないよ』っていうのをずっと言っていたんですけど。聞く耳持たずに、上の人とか、(暗号資産を)やっている友達のことを信じて、『お母さんとお父さん何言ってんだ?今に見てろよ、稼いでやるぞ』ぐらいの感じでしたね

一向にやめる様子がない息子に、母親はある懸念を持っていた。

 Bさんの母親:
4月から18歳以上が成人になるっていうことで、クレジット(カード)とかも親の許可なしで作れるようになって、お金も借りられるようになるっていうので、すごく不安がありました。親に黙って借りて、そのお金の中から、投資に回しちゃうんじゃないのかっていう不安がずっと付きまとっていました

入金額が多いほど紹介者の見返りが増える仕組みの“暗号資産マルチ”。
Bさんは“上の人”から、投資金を増やすようしつこく求められた。

Bさん:
上の方からのお話で、最大1000万円までなら借りられる方法みたいなのを言っていて。会社を作る建前でお金を借りて、倒産したって言って返済しなくていいっていう風にすれば(借金)できるみたいなことを聞いて、僕もそれをやろうとしていた

彼を救ったのは“成人年齢”だった。当時は未成年扱いだったため、借金はできず人生を台無しにせずに済んだ。
そして“上の人”が、祖母に買ってもらった大事なパソコンまで売るように迫ってきたとき、目が覚めた。

 Bさん:
『お金にしか目がないんだな』っていう。祖母に買ってもらった気持ちなんてどうでもいいんだなって思った時に、続けるのはよくないなって思って、そこからやめる決断をしました。今、考えると、何も借りられずに済んだので、良かったなって思っています。友達に「ビジネスどうだ?」っていう風に声かけたりとかしたときに、ちょっと仲良かった友達とかも失ってしまったので、そこが一番苦しかった

漠然とした夢や期待、不安を抱える新成人たち。
今、自分を守るため“大人”の心構えが求められている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月21日放送)

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