パンにあんことバターをサンドした「あんバター」と、名古屋名物の「小倉トースト」は、材料もほとんど一緒で見た目も似ている。最近人気のあんバターは、果たして小倉トーストの影響を受けて生まれたのか?
あんバター誕生の経緯を調べると、コメダ珈琲の小倉トーストに影響を受けて2017年頃に韓国で起こったあんバターブームが逆輸入され、日本でもあんバター人気となっていることがわかった。
バターとあんこの相性が絶妙 1日100個以上売れる
この記事の画像(29枚)名古屋市東区にあるベーカリー「テーラテール」。
ショーケースの中に「あんバター」(1個265円)が並ぶ。この店では、あんバターは1日100個以上売れる“トレンドパン”となっているという。
女性客A:
イチゴのあんバターは春の限定商品。スタバとかでも流行っていて
店内のイートインスペースでも、多くの人があんバターを注文。何が人々をひきつけるのか?
女性客B:
罪悪感とぜいたく感が一緒になった特別な感じ
パンに板状のバターと、北海道十勝産のあんこをサンドしたあんバターの最大の特徴は、バターの塩気とあんこの甘さのコントラスト。心地よい甘味が口いっぱいに広がる。
見た目ソックリの「あんバター」と「小倉トースト」
あんバターについて街で聞いた。
女性A:
あんバターはインスタで知った
女性B:
最近、みんな食べているイメージ
女性C:
(投稿が)SNSで多いなって
インスタで「#あんバター」と検索してみると、17.8万件もの投稿があった。多くの店で人気メニューになっているようだ。
あんバターには、食パンにサンドした「サンドイッチタイプ」から、あんことバターの上にバニラアイスが乗った「進化系」まで。
さらに大手メーカーも商品化するなど、あんバターはブームとなっているようだ。アラフォー世代に聞いてみた。
女性D:
あんバターは初めて聞きます
女性D:
小倉トーストに似ていますね。形以外は同じじゃない?
「小倉トーストに似ている」という意見も。あんバターと小倉トーストを比べてみると、確かに見た目が似ている。ちなみに、小倉トーストについて若者に聞いてみると…。
若い女性F:
あまり食べないですね…
若い女性G:
(小倉トーストを見たこと)ないです
中には、小倉トーストを知らないという人もいた。あんバターと小倉トーストには、どのような関係があるのだろうか。
名古屋ならヒットするのでは…2020年からあんバターを販売
あんバターのルーツを調べるために、2020年からあんバターをメニューにしている名古屋市昭和区の店へ。
この店の「あんバター」(270円)は、ハードタイプのパンにきな粉がかかったバターとあんこがサンドされていた。
店主:
やっぱり名古屋の方は小倉トーストとかあるし、あんことバターが好きなんじゃないかと始めたら、やっぱり好きでした
小倉トーストが受け入れられているなら、この組み合わせもきっとヒットすると思ったという。しかし、あんバターの発祥についてはわからなかった。
小倉トーストをヒントに生まれたのか 発祥の店で調査
続いて、円頓寺商店街にある小倉トースト発祥の店として知られる「喫茶まつば」へ。
トーストした食パンにバターとあんこを乗せた小倉トーストは名古屋のソウルフードで、その誕生は約100年前にさかのぼるという。
喫茶まつばの店主:
学生さんが、ぜんざいにパンをつけて食べているのをママさんが見て「あ、これイケる」と、小倉トーストが生まれた話を聞いています
小倉トーストは、ぜんざいにパンをつけたことがきっかけで生まれたという。店主にあんバターについて聞いてみると…。
喫茶まつばの店主:
(初めて見たとき)「小倉トーストじゃん、名古屋でずっと前からやっているじゃん」って。最近、流行っているって言ってるけど
店主はやはり“似ている”と感じたという。あんとバターをパンで挟むスタイルは、小倉トーストをヒントに生まれたのだろうか。
喫茶まつばの店主:
聞いた話では、青森の吉田ベーカリーが始めたって
青森の吉田ベーカリーがあんバターを開発したという説が浮上した。
70年前、まかないから生まれた「あんバター」
名古屋から遠く離れた青森に、あんバターのルーツがあるのではないか。
真相を確かめるべく、電話で吉田ベーカリーにその発祥について聞くと、店主ははっきり「うちがあんバターの元祖」と断言。その元祖あんバターは、見た目は同じサンドイッチタイプで、小倉トーストにとても似ていた。
店主によると、あんバターは昭和30年7月に発売。それ以来、地元では長年ソウルフードとして親しまれてきたという。しかし、小倉トーストが生まれたのは、あんバターの誕生より30年以上も前。あんバターは、小倉トーストの影響を受けていないのだろうか?
吉田ベーカリーの店主:
いや、全くない。ある日、職人さんたちが休憩にパンの耳に色々なモノを塗って食べていた。あんバターを食べた時に「これは今までにない味だ!絶対売れる!」って
実際に店で販売してみると、500メートルの行列ができるほどの人気になったという。
青森のあんバターは、まかないから生まれた青森独自のソウルフードで、小倉トーストとは関係がないことがわかった。
韓国から逆輸入されたあんバターブーム
しかし、これだけ似ている2つのメニューには、何らかの関係があるのではないか。名古屋めし研究家のswindさんに話を聞いた。
名古屋めし研究家 swindさん:
あんバターは完全に小倉トースト。名古屋のコメダの小倉トーストが、全国にあんことバターの組み合わせを浸透させ、非常に大きな影響を与えた
「コメダ珈琲」が今のあんバターブームに深く関わっているという。swindさんによると、コメダ珈琲は2003年頃に全国展開を開始。各地に進出していくことで、小倉トーストの知名度は一気に全国区となったという。その後…。
名古屋めし研究家 swindさん:
(最近のあんバターブームの)出発点は韓国。ちょうどコメダが全国に広まって、韓国の方も観光でたくさん来ている時期。韓国の方がコメダで「こんなおいしいモノあるんだ」と向こうで作った可能性もある
そして韓国では、2017年頃に日本に先駆けてあんバターブームに。その際、コメダの小倉トーストが参考にされたとswindさんは話す。
名古屋めし研究家 swindさん:
韓国のあんバターブームが日本にやってきたのは間違いない。あんこのバターの組み合わせは、すでにコメダによって広く受け入れられるようになっているので、非常に簡単に浸透していく
あんバターが小倉トーストの影響を受けて誕生したのかを調べた結果、コメダ珈琲の小倉トーストに影響を受けて2017年頃に韓国で発生したあんバターブームが逆輸入され、今のあんバター人気となっていることがわかった。
(東海テレビ)