世界的にも有名なあの日本画家の作品が一堂に集まる展示会が、福岡・太宰府市の九州国立博物館で開かれている。

国内史上初となる一般公開に研究員も緊張

4月1日、九州国立博物館の搬入口にやってきた2台のトラック。到着を待っていた関係者も、どこか緊張している様子が伝わる。

(Q.中にはなにが?)
九州国立博物館 桑原有寿子 研究員:
トラックの中にはですね、あの有名な葛飾北斎の作品がたくさん入ってるんです。ここまで来たかって、どきどきしてます

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世界で最も有名な日本の画家、葛飾北斎。江戸時代の平均寿命を大きく上回り、90歳まで生き、弟子の数も200人を超え、残した作品も数え切れないほど。

取材カメラも覗かせてもらおうとした、その時…

九州国立博物館 桑原有寿子 研究員:
ちょっと、実はこの先、あの…撮影はご遠慮いただいてまして…。
(Q.だ、だめですか?)
そうなんですよ

防犯上や安全上のため、搬入作業の撮影はNG。後日「準備が整った」ということで、特別に作品の一部を見せてもらえることに。ただし、1時間の制限つきだ。

九州国立博物館 桑原有寿子 研究員:
作品が中にありますので、ボールペンがお使いいただけないんですよ

ここでも撮影上の注意が!ボールペンは、落として作品にインクが付く可能性があるので持ち込み禁止。そのほかにも持ち物チェックをクリアし、ようやく撮影の許可がおりた。

花村枝里リポーター:
チェックが通りましたので、早速、中に失礼します

絵画専門の研究員、畑靖紀さんの後方には北斎の作品が!しかも、実はこれ…

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
ほとんど見た人がいなかったという、研究者の中では幻の作品と言われていたものなんです

筆で勢いよく描かれた獅子や獅子舞。
北斎が晩年に、魔除けのためにほぼ毎日、朝起きて描いたといわれる重要文化財「日新除魔図(にっしんじょまず)」。

以前は個人の所蔵だったが、5年前「博物館から一切出さない」という約束で譲り受けた。全219枚を一般公開するのは国内では史上初となる。

その見どころの一部を畑さんから教えてもらった。
例えば、12月12日に描かれた1枚。年の終わりの“精算”をイメージしてか、獅子が算盤を弾いている。その左端に書かれた文章には…

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
獅子智廿八(ししち・にじゅうはち)…九九なんです

(Q.北斎はだじゃれ好き?)
九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:

江戸っ子ですからね(笑)

北斎 お酒を「飲める」「飲めない」論争に決着も?

ほかにも…

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
ここに書いてある字を読むと、「酒を飲んで描いたんだ」って書いてあるんです

畑さんによると、うまく描けなかったのをお酒のせいにしているのではないかという見方もできる一方で…

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
北斎先生、お酒飲んでたんじゃないかなって

お酒を「飲める」「飲めない」と、いまだ論争が絶えない北斎。

実は「日新除魔図」には、北斎が朝晩毎日飲んでいたという直筆のお酒を使った“長寿のレシピ”が付属されている。この貴重なレシピは、研究者の中でも初めて見る人が多いのではないかということだ。

「日新除魔図」には北斎直筆の“長寿のレシピ”が付属
「日新除魔図」には北斎直筆の“長寿のレシピ”が付属

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
もしかしたら、北斎のお酒飲んだ飲まない論争に決着が…つく?かなと(笑)

70年間枯れることなく画家として生き続けた

そんな北斎の代表作と言えば…カメラの前に現れた「冨嶽三十六景」の2枚。
当時、最先端だった西洋の青い絵の具を用いた鮮やかな海に、堂々と聳え立つ赤富士が目を引く。

雄大で力強い作品は北斎が70歳ごろから描き始め、数年で46図描き上げたと言うから驚きだ。

九州国立博物館 畑靖紀 主任研究員:
画家として70年活躍してるんですけど、画家として70年間枯れることなく最後まで走りきった人生、どんな幅広さなんだろう、どんなエネルギッシュな人生だったんだろうかと思って見てもらえればうれしい

世界中を魅了し続ける葛飾北斎。

国の重要文化財にも指定されている美人画などを見ることができる「北斎展」は、九州国立博物館で6月12日まで開催(展示入れ替えあり)。また「日新除魔図」については、九州国立博物館の所蔵ということもあり、異例の写真撮影OK!

ゴールデンウィークに“北斎”はいかが?

(テレビ西日本)

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