全国各地が直面している少子高齢化と過疎化。愛媛県砥部町の山あいで、新たな取り組みが進んでいる。

暖炉でリラックス 山小屋をイメージ

体験と宿泊で地域の魅力を発信。砥部町の南部に位置する広田地区に2022年春、宿泊施設が完成した。

愛媛・砥部町の南部に位置する広田地区
愛媛・砥部町の南部に位置する広田地区
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心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
玄関を入って大きく深呼吸していただくと、木の香りと木のぬくもりを感じられると思いますが、暖炉があります

まきがくべられた暖炉。室内は山小屋をイメージしていて、リラックスして過ごせる空間になっている。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
街みたいにコンビニに行けば、何でもそろう状況でもない。だけど、皆さんに提供できるものがあるんじゃないかな

宿泊施設の名前は「心の宿とんとんとん」。運営するのは、向井京子さん(65)だ。

2022年春に完成
2022年春に完成

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
今は教室として子どもさんからご年配の方まで、お米を使った菓子パンやピザ、食パンを作っています

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー
心の宿とんとんとん・向井京子オーナー

向井さんは広田で工房を経営し、地区を訪れた人が田舎暮らしを体験できるプログラムも開いている。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
若いころは全く思わなかったですけど、広田地区の自然が私にとっての活力源になっていた

東京からUターンの甥と魅力発信

プログラムのメニューは、餅つき・しめ縄づくり・そうめん流し・川遊びなど。

広田の四季折々にあわせた様々な体験ができる。地域の文化や自然を生かした内容は、特に若い世代に人気だという。

向井さんのおい・藤原佳祐さん:
おばちゃんが、今まで蓄えてきた色々な食事や文化を伝えたいと、そう言っていたので。僕もふるさとに対する思いがあったので、共感しました

向井さんのおい・藤原佳祐さん(27)
向井さんのおい・藤原佳祐さん(27)

向井さんをサポートするのは、おいの藤原佳祐さん(27)。藤原さんも広田出身で、2021年に東京からUターンした。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
私は食事担当ばばあ、お客さん対応。(おいの藤原さんは)宣伝担当

向井さんと藤原さんの「おばとおい」のコンビで手掛けるのは、「田舎暮らし体験」と新たにオープンする施設での「宿泊」をセットにした滞在型の体験観光。

広田でゆっくり過ごしてもらい、地域の魅力をより感じてもらいたいという狙いがある。

コロナ禍”発散”の場になれば…地域文化を伝える

この日の田舎暮らし体験は「シイタケの植菌」。東温市から、藤原さんの高校時代の同級生ら3人が参加した。

 
 

1メートルほどに切り出したクヌギの原木にドリルで穴を開け、シイタケの菌を植えこんでいく。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
エンジンの音がジェイソンみたいで、怖いかもしれんのやけど…

体験に参加した藤原さんの同級生・山口千比呂さん:
めちゃ楽しいです、感触がハマる。くせになる。藤原くんが広田地区で活動しているとSNSで知って、いつか来たいなとずっと思っていました

お昼ごはんは、イリコやシイタケが入った炊き込みご飯に、手作りの麦みそを使ったみそ汁。広田地区のおふくろの味だ。

体験に参加した藤原さんの同級生・山口千比呂さん:
すごく風味が良い。香りがすごい。味噌、めっちゃおいしいです

向井さんは、松山市中心部の産直市の運営に10年以上携わっていたが、コロナ禍で2020年に閉店。産直市で働いていた当時に知り合った大学生らが広田に遊びに来たことが、この体験プログラムのヒントになった。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
(大学生たちが)発散する場所が全くない。「さえずりや川の流れの音、今までそんなに感じなかったものがすごい初々しく感じる」と聞いた時に、今のコロナ禍だからこそ、こういった所が大事じゃないかなと思ったんですね

7年ぶりにUターンした藤原さんも、ふるさとの変化を感じていた。

向井さんのおい・藤原佳祐さん:
僕が小さいころに残っていた文化が、今もうなくなりかけているところがあったり、担える人がどんどん減ってきているのは身に染みて感じていて

広田地区の人口は約560人で、そのうち6割は65歳以上の高齢者。広田にとっても、少子高齢化や過疎化は深刻な課題となっている。

ふるさとの姿を次の時代に残すために、向井さんらは広田以外の人たちにこそ、地域の文化や歴史を知ってもらいたいと考えている。

心の宿とんとんとん・向井京子オーナー:
地元の良さを違った地域の方、県外の方に参加していただいて、一緒にともにその場で楽しむ。心の中に私たちの歴史や伝統が残っていけば

新たに完成した宿泊施設は、5月から営業が始まる予定。

これまでになかった滞在型の体験観光への期待が高まる一方、他の地域にはない魅力を打ち出していく。愛媛の山あいから、新たな挑戦が始まる。

(テレビ愛媛)