水素エンジンに山梨県も協力
素早いピット作業を終え、爆音をあげて走りだしたのはトヨタが開発し、2021年からレースに本格参戦している「水素エンジン車」。
この記事の画像(14枚)CO2を排出しないほか、既存のガソリンエンジン車の技術を応用して開発できるなど、脱炭素社会へ向けたクリーンな車として注目されている水素エンジン車だ。
しかし、ここへ来て、脱炭素燃料で走る新たなライバルが続々と参戦。さらに、意外なところから水素でつながる心強い仲間も登場した。
3月、三重県の鈴鹿サーキットで行われたカーレース。2021年に引き続きシーズンフル参戦するのが、トヨタ自動車が開発する水素エンジン車。
エンジンの性能をガソリン車並みにまで鍛え上げてきたほか、今シーズンからは新たに別のカーボンニュートラル燃料で走る車も投入するなど、燃料の選択肢を広げながら脱炭素へのチャレンジを加速させている。
2022年も自らドライバーとして参戦する豊田章男社長。レース前の会見で強調したのが...
トヨタ自動車・豊田章男社長:
昨年の富士スピードウェイで8社だったバックボードのロゴも今回は22社まで増えた。意志ある情熱と行動に共感いただいた多くの仲間の方々にあらためて感謝申し上げたい
目指すのは、水素社会の実現に向けた仲間づくり。同じ自動車メーカーからは、マツダがバイオディーゼル燃料車で参戦。
そしてスバルもバイオマスなどを由来とした合成燃料を使った車でレースに本格参戦する。
マツダ・丸本明社長:
さまざまな気温やレース環境の中で、石油を一滴も使わないバイオディーゼル燃料の実証実験を行うこと。マツダのあくなき挑戦を積み上げ、性能改善を積み上げてまいります
スバル・中村知美社長:
カーボンニュートラルの実現に向けた選択肢を増やすことと同時に、こういったことを通じて次世代のエンジニアの人材育成も図っていきたいと思っています。
それぞれがそれぞれの強みを生かして進める、脱炭素へ向けた取り組み。そして今回、新たに水素を作る仲間として手を挙げたのが山梨県だ。
これまで提供されてきた福島・浪江町で作られた水素に加え、山梨・甲府市で作られた太陽光由来の水素も提供されることになった。
山梨県が主体となり、東京電力ホールディングス、東レと連携して製造した水素がトヨタの水素エンジン車に使用される。
山梨県・長崎幸太郎知事:
今回のレースに完全CO2フリーのグリーン水素を提供しています。太陽光、あるいは再生可能エネルギーからグリーン水素を作る。この仲間に入れていただきましたこと、心から感謝を申し上げます
官民の垣根を越え、着実に広がってきた仲間づくり。目指す脱炭素社会の実現に向け、その輪はさらに広がるとみられる。
仲間との"競争"と"協力"
Live News αでは早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。
小澤陽子キャスター:
水素エンジンで走るクルマが普及するための鍵は何になるのでしょうか?
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
キーワードはネットワークの規模だと思います。どんなに水素自動車が性能が良い車だとしても、燃料を供給する水素スタンドがあちらこちらにないと単なる箱になってしまう。しっかりとネットワークを広げることで水素エンジンの価値を高めることが大切になります。世界がEV1本で行こうという流れがある中で、日本発の技術として水素の仲間を作ってネットワークの規模を拡大することがビジネス上重要だと思います
小澤陽子キャスター:
今回のレースではトヨタの水素エンジン車に加えてマツダがバイオディーゼル燃料車で参戦するなど幅が広がっている印象を受けました。
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
EVはやはり先進国では良いかもしれませんが、世界中で使うにはまだ課題が多いんです。それを考えると様々な選択肢を提案していくことが自動車メーカーとして大切な義務になります。そしてそれを最終的に選ぶのは市場です。そのためのアイデアを持ち寄る仲間づくり、ネットワークが重要になってきます
小澤陽子キャスター:
仲間づくりということですが具体的にはどのようなカタチになるのでしょうか?
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
トヨタ、マツダ、スバルはEVやハイブリッドですでに様々な形で連携をとっています。トヨタは大きな会社でいろいろな開発をしています。一方で、マツダやスバルは非常にエッジのきいた車を作る会社で、その多様性はトヨタにとってもメリットがあるわけです。そういった会社が水素だとか、EVではないCO2排出を防ぐ取り組みをしていく。その仲間作り、エコシステムを作ることが日本にとって非常に重要ですし、世界にとっても大切なことになってきます。仲間作りをしっかりすることが日本の自動車産業を支えることにもなりますし、競争優位の大きな源泉になっていくと思います
小澤 陽子キャスター:
未来の車作りをどれほど加速させてもスピード違反にはなりません。それぞれの強みを生かしながら連携の強化が期待されているようです
(「Live News α」3月30日放送より)