新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世間でも普及が進むテレワーク。この影響で盛んになってきたのが、ビデオ会議アプリなどを活用した「Web会議」だ。

通信環境と接続用の端末さえあれば、場所を選ばずに参加することができ、互いの姿を見ながら意見を交わすこともできる。もともと利便性が高いシステムではあったが、感染防止対策にもつながることから、さらに注目を集めるようになった。

その一方で、Web会議にはコミュニケーションが難しいという側面もある。画面上のやり取りだけでは感情の変化などを読み取りにくく、こちらの気持ちも伝えにくい。

そうした皆がまだ慣れない環境では、新たなハラスメントのリスクもあるはず。管理職や上司の立場にある人が気を付けるべきことは、どのようなことだろうか。

ハラスメント対策の専門企業である「クオレ・シー・キューブ」に聞いた。

在宅勤務では「自宅」が「職場」

――Web会議ではどんなハラスメントが起きる可能性がある?

日頃から一方的な会話に終始する傾向のある上司は、部下の現状、意見、質問に耳を貸さず情報が滞ってしまい、部下のモチベーションが削がれたり、業務に支障が生じたりするでしょう。

また、複数人が参加する会議では、特定の個人に攻撃的な対応をすると、それがストレートに伝わりやすく、周囲もフォローしにくい環境にあります。そのため、攻撃的な対応をされた当事者はもちろん、会議の参加者全員が負の影響を強く受けてしまうことも考えられます。
 

負の影響を強く受けがちという(画像はイメージ)
負の影響を強く受けがちという(画像はイメージ)
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――Web会議の問題点とは?

在宅勤務は多くの人にとって突然始まったことであるため、住宅事情やネット環境などはWeb会議に相応しくない場合もあります。他人がそのことに不満を露わにしたり、個人的な事情に立ち入ろうとすれば、言われたほうは土足で踏み込まれた感覚を抱きかねないので、そこで発する一言がパワハラやセクハラとなる可能性は十分にあります。

在宅勤務では「自宅」が「職場」であることに留意する必要がありますし、特に上司は、部下のプライベート空間に踏み込んでいる状態にもなりうることに気を付けておきたいものです。


――実際の相談例などはある?

普段から人格攻撃や部下の尊厳を傷つける発言をする上司から、他の同僚も参加しているWeb会議で公開で叱責された。こうした行為について会社から注意してほしい。このような上司の下で働き続けたくないので異動させてほしい。という相談が寄せられたことがあります。
 

微妙なニュアンスの取りこぼしがある

――Web会議で注意すべき行動や発言はある?

Web会議では、声のトーン、顔色、表情などの非言語コミュニケーションが伝わりづらいことなどから微妙なニュアンスを取りこぼしてしまい、誤解を生むことがあります。会話量が偏らないように(回答者が自由に考えて答えられる)オープンクエスチョンで質問したり、伝えたいことが伝わっているかの確認をすることが必要だと思います。不用意にプライバシーに踏み込む発言も控えたほうがいいでしょう。


――上司や管理職が注意すべきことは?

ハラスメントは相手に対する配慮の欠如や一方的な思いこみの積み重ねが徐々に関係悪化を招き、我慢の限界を超えて訴えにつながると考えられます。画面上で見えることと、直接会うのとでは、空気感やニュアンスなど、双方が受け取る情報の質も量も違います。Web会議でも、思うようにコミュニケーションが取れず、イライラすることもあると自覚しておくべきでしょう。

画面上では伝わらないこともある(画像はイメージ)
画面上では伝わらないこともある(画像はイメージ)

オンライン飲み会は相手の立場を考えて

――オンライン飲み会についてはどう思う?

業務上必要ではないことで、不快感を与えたり忍耐を強いる行為は避けたほうがいいでしょう。オンライン飲み会に誘う=パワハラにはならなくても、部下にとって、上司からの飲み会の提案を拒否することは難易度が高く、「強要」や「命令」に近い行為と言えるでしょう。

また、住環境や家族構成などによっては、職場の人間関係を自宅に持ち込むこと自体、マナーの問題に抵触することもあります。家族らに気遣いをしなければならない人もいること、プライベート空間に踏み込んでいることを覚えておく必要があります。
 

相手の家庭環境などを考えて誘おう(画像はイメージ)
相手の家庭環境などを考えて誘おう(画像はイメージ)

――このほか伝えたいことは?

在宅勤務では否応なく「自宅」が「職場」になります。職場がプライベートに持ち込まれるオンライン会議などによって、それまで物理的に保たれていた、自分の生活と仕事との健全な距離感がなし崩しになったケースもあるでしょう。画面を通しては伝わり切れない部分に配慮し、気遣いを持った関係性を築くことで、ハラスメントは未然に防ぐことができるかもしれません。

いずれにしても、これまでの関係性が増幅された形で現れるものだと思いますので、仕事のあり方や上司部下・同僚との関係を見直して、どうすれば皆の能力が発揮されるのかを模索し、挑戦する機会と捉えていただければと思います。


Web会議は便利な反面、配慮のない行動や言動は、会議の参加者全員に負の影響を与えてしま
うこともあるようだ。

画面に相手の姿が見えているからといって安心せず、自分の伝えたいことが伝わっているか、相手がどう受け止めているかを今一度、確認することを心がけたい。

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プライムオンライン編集部
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