海上保安大学校の卒業式が26日、広島・呉市で行われた。式典に出席した岸田首相は、沖縄県の尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵入に言及した上で、「主権を守り抜くことを最前線で体現しているのは海上保安官だ」などと祝辞を述べた。
海上保安庁の幹部職員を養成する海上保安大学校で、岸田首相は祝辞を述べた。この中で、2001年に鹿児島県の奄美大島沖で起きた北朝鮮の工作船事件に触れ、「法執行機関として、国内法と国際法に基づいて冷静に毅然と対処するという海上保安官の行動原理は現在も変わらない」と述べた。
中国の海洋進出については、「尖閣諸島周辺海域では、ほぼ毎日、中国海警船が徘徊し、我が国領海への侵入も繰り返されている」と指摘。
また、日本海の大和堆周辺海域について、「外国漁船による違法操業が後を絶たず、北朝鮮公船も現れるなど、緊迫した海だ」とした。その上で、「主権を守り抜く、これをまさに現場最前線で体現しているのは、諸君ら、海上保安官だ」と強調した。
一方、岸田首相はロシアのウクライナ侵攻にも言及し、「国際秩序、世界平和が脅かされる事態となっている」と指摘した。そして、「今日の我が国の平和と繁栄が数多く人々の犠牲と苦労によって築かれていることを決して忘れてはいけない。平和を次の世代にしっかりとつないでいくことが私達に課せられた責務だ」と述べた。
さらに、「今、国際社会は海を巡って様々な課題に直面している」として、「これらの課題は力ではなく、法やルールによって解決されなければならない」と訴えた。海上保安大学校の卒業式への現職首相の出席は、2018年の安倍首相以来、4年ぶり。