大型バイクを乗りこなす精鋭「白バイ」の隊員。七転び八起き、入隊から試練を乗り越えて、自らとも戦い続けた新人の女性警察官、1年の成長記録。

「旋回」に苦戦 立ちはだかる難関の検定

巧みな運転技術を駆使して、悪質な交通違反を取り締まる白バイ隊員。厳しい訓練と努力、アクシデントを乗り越えて、この春、1人の新人が一人前の隊員として認められた。

愛媛県警交通機動隊の川本真由巡査(24)。子どもの頃の夢を実現させた女性警察官だ。川本巡査は、2021年4月に交通機動隊に配属された4人の新人の1人。

愛媛県警交通機動隊・川本真由巡査(24)
愛媛県警交通機動隊・川本真由巡査(24)
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川本真由巡査:
憧れの白バイ隊員と同じ制服を着ているので、不思議な感じもありますが自覚も持ちました

しかし、これだけでは一人前といえない。交通機動隊に入隊してから立ちはだかる次の関門は、3カ月後の検定。

これに合格しないと公道に出られない。隊員が乗りこなすのは排気量1000ccを超える大型バイク。パワーがある分、自在なコントロールには高い運転技術が求められる。

石田浩二指導員:
上体が硬い硬い!力が入るのは腰から下だけ!

川本さんが苦戦するのは小さく回る「旋回」。検定種目のひとつで、白バイの機動力を高める重要な運転技術だ。

石田浩二指導員:
足出すなよ!

転倒する川本巡査の白バイ。

石田浩二指導員:
起こす!足を出すな!

旋回するとつい失速気味に。バランスを取ろうと足を出すのが癖になっていた。

石田浩二指導員:
こけた時にアクセル持っとったら、後輪が回るから足が折れてしまう。絶対出すな。絶対出さん、足は。こけるにしても意地でもステップに乗せとけ

厳しく注意され、足を出さないよう意識するものの力みすぎてスムーズに旋回できない。そして恐れていたことが…。バランスを崩して、とっさに左足を出してしまった。この転倒で川本さんは左足のじん帯を断裂。

回復には長くかかり、6月の検定は断念せざるをえない状況になった。柔道少女だった川本さんが白バイ隊員を目指したのは小学生の時だった。

川本真由巡査:
小学生の時に交通事故に遭って。一番最初に白バイ隊員の方が来てくれて、優しい対応をしてくれたので「格好いいな」って

子どもの時の憧れが将来の目標に。川本さんの心の支えだ。

恐怖と戦い…諦めず食いつく川本巡査

年の瀬も押し迫った12月、交通機動隊の庁舎に川本さんの姿があった。

川本真由巡査:
1カ月くらいは松葉杖で生活していたので、不便でしたね

5月末には仕事に戻っていたが、リハビリのために他の隊員をサポート。白バイに乗れない焦りがあった。それでも…。

川本真由巡査:
他の新隊員や先輩の訓練を見て、うまい人の技を盗んで。見るのも勉強になるので

大けがから約8カ月、川本さんの訓練が再開した。

川本真由巡査:
やっと始まるなという感じ

同期はすでに公道デビューし、交通違反の取り締まりにあたっている。訓練に挑むのは川本さんただ1人だ。

川本真由巡査:
恐怖はすごいあったんけど、ずっと恐れとっても次には進めないんで。こけても足は出さんと心に誓いました

石田浩二指導員:
体を入れる、体を中に入れる!開けてついてこいや!

ブランク明けでも容赦ない指導。大けがをした「旋回」の訓練、倒れても足は意地でも出さなかった。

折手一智指導員:
恐怖と戦って走るわけなんで、その辺りは声を出してあげて。自分はそれくらいしかできないんで

川本真由巡査:
自分ができなかったことができるようになっていったので、楽しいなっていう感情が生まれて。どんどん上手くなっていきたいなって、前に前に進むようになりました

迎えた検定本番 9種目に挑む

訓練を再開して3カ月。2022年3月、ついに川本さん1人の検定がやってきた。

大けがを負った「旋回」でも転倒することなくスムーズに回れている。検定は9種目あり、大きなミスなく乗り越えて見事、合格した。

次のステップは「特別訓練生」。競技としての運転技術を磨き、2022年秋に開催される全国大会に出場する。

川本真由巡査:
白バイは私の憧れで夢です。みんなから格好いいって思われる、憧れる白バイ隊員になりたいです

(テレビ愛媛)

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