ロシアのウクライナへの攻撃が激しさを増す中で、フェイスブックなどのSNSで、ある動画が拡散された。
国民に降伏を呼びかけるニセ動画
その動画というのが、ウクライナのゼレンスキー大統領とされる人物が国民に降伏を呼びかけるニセ動画。
この記事の画像(10枚)“ゼレンスキー大統領”のニセ動画:
最初私はドンバスを取り戻すことを決めたが、取り戻すことができなかった。だんだんひどくなってきました。あなたたちに「さよなら」を言いたい。武器を捨てて家族の元へ戻ってください。この戦争で死ぬ意味がない
榎並大二郎キャスター:
加藤さん、ぱっと見た印象どうですか?
加藤綾子キャスター:
(ニセ動画だと)知っていて見ていると、やっぱりちょっと違和感あるかなと思うんですけれども、これが生活している中で送られてきた場合に気づけるかなとは思いました
榎並大二郎キャスター:
そうですよね。では本当のゼレンスキー大統領の動画と見比べてみます
左側がウクライナ大統領府の公式映像、右側がニセ動画。
同時に再生して比べると、偽物のゼレンスキー大統領とされる人物は、本物に比べ頭と体のバランスが不自然で、首が少し長く、喉仏や肩の形も違うように見える。また本物が手の動きも含め表情豊かに話しているのに対し、偽物は首から下が全く動かないのも少し不自然だ。
音声も偽物は、話すトーンも低く聞き取りにくい印象。一方で、口元や喉は声と連動し、自然にまばたきもするなど手の込んでいる部分もあった。
加藤綾子キャスター:
違いは、このように比べてみるとわかりますね
ニセ動画に本物のゼレンスキー大統領は?
こうしたニセ動画に対し、本物のゼレンスキー大統領はこう切り捨てた。
ゼレンスキー大統領:
子供じみた挑発行為。私が訴えたいのはロシア軍の兵士が武器を置き祖国へ帰ることだ
イット!ではコメンテーターで社会学者の古市憲寿さんに話を聞いた。
古市憲寿さん:
さすがに、これはまだ安っぽいというか、偽物と言われたら気づく人も多いと思うんですけれど。これがもっと精巧になった場合には、深刻な問題になりそうです。こういう「ディープフェイク」の動画というのが、この10年の新しい現象かもしれませんが、情報戦ということで言うと、本当にその人がこんなことを言うのかという文脈とかを考えることが大事なのかも知れませんね
ニセ動画はどこまで進化するのか
結局、ゼレンスキー大統領のニセ動画はSNS上で削除されたが、こうしたニセ動画は「ディープフェイク」と呼ばれ、AI=人工知能を使って本物そっくりの映像を作る技術のことだ。
アメリカ大統領選ではトランプ前大統領のニセ動画が数多く作られ悪用された事例もある。
今回のゼレンスキー大統領のニセ動画は顔の輪郭や声が違うということで、すぐに偽物と判断されたが、技術的にはもっと精度の高いものも作成可能だ。
例えば元フェイスブックのザッカーバーグ氏のニセ動画。この動画はイギリスのアーティストがあるイベント用に作成したものだが、見ていても何の違和感もない。
今後、ゼレンスキー大統領についても見分けのつかないニセ動画が流れてくる可能性がある。
加藤綾子キャスター:
古市さん、これロシア側の情報戦という見方もできそうですよね?
古市憲寿さん:
ただ情報戦ということで言うと、圧倒的にウクライナの方が勝っているなと思うんですね。世界の様々な国がどういう見方をしているかというと、ウクライナ側にシンパシーを感じている人が日本国内でも多いと思うんですね。仮にこれからロシアが軍事的に優勢になったとしても、ウクライナに対する同情とか、ロシアに対する批判というのは消えないと思うんです。そうすると情報戦については、今のところウクライナの方が有利な状況にあるのかなと思います
加藤綾子キャスター:
戦い方というのも変化しているのかなと思いますね
(イット! 3月18日放送より)