ロシアの立場が軟化しているとするウクライナ側は、数日から1週間ほどで合意の可能性があることを示唆。停戦交渉をめぐっては15項目の合意案の一部が明らかに。専門家が双方の立場から分析しました。

5つの項目から見えるロシアの狙い

イギリスのフィナンシャルタイムズ紙が、停戦交渉をめぐっての合意案の内容を報じました。ウクライナ側は「近日中に停戦に至ると大いに確信している」と話していますが、15項目の合意案の一部は一体どういう内容なのでしょうか。

右側の赤色部分がロシア寄り、左側の黄色部分がウクライナ寄りで考えると、明らかにロシア寄りなのは「ウクライナのNATO加盟断念」。そして、ウクライナ寄りなのは「ウクライナ軍の維持」「ロシア軍の撤退」というように見えます。

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ロシア政治に詳しい筑波大学の中村逸郎教授は、“ロシアの一本勝ち”で有利な内容になっていると指摘。実は、項目がロシア寄りなのではないかと見ています。

まず「ロシア語の公用語指定」。これを行うと、例えば公務員試験をロシア語でやることが可能になり、そうなると公務員にロシア出身者あるいはロシア系住民が増えます。そういった意味でロシア寄りの条件なのではないかということです。

そして「ウクライナのNATO加盟断念」というのもロシア寄り。さらに「米欧などの安全保障と引き換えに他国軍の基地や兵器の国内排除」と「ウクライナ軍の維持」の項目について、中村教授はこう指摘します。

筑波大学 中村逸郎教授:
アメリカやイギリスなどの安全保障があったとしても、他国軍の兵器や基地がなくなると、軍は存在しても兵力は弱くなってしまう。

また「ロシア軍の撤退」というのもウクライナが有利なように見えますが、実はロシア寄りだというのです。その理由はなんなのでしょうか。

報道自体が“ロシアの思惑”の可能性も…

中村教授は、クリミアや「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」が、撤退の対象地域ではなくなるのではないかと指摘。「ロシア軍の撤退」という合意案の一部が、ロシア寄りになることに繋がると言います。

さらに、こうした合意案の一部が報道されたこと事態が、ロシア側の思惑なのではないか述べています。合意案により世界の経済制裁がどのくらい解消されるのか見るために、ロシア側が合意案の内容を漏らしたのではないかというのです。

ロシア有利と見られる内容ではありますが、「撤退」という言葉が入っている中で世界、特にアメリカがどのように感じるのか、ロシアが観測気球を上げているのではないかと分析しています。

(「めざまし8」3月18日放送)