東南アジア・ラオスの観光地で今年1月、ノルウェー人女性の遺体が発見された。それから約3ヶ月後の4月15日、ラオス警察は38歳の日本人の男を殺人容疑で国際手配した。男の名前はオグ・ヒロユキ容疑者。現在も逃走を続けるこの日本人の男はいったい何者なのか。

東京出身の「尾久宏幸」容疑者

ラオス警察が国際手配したのはオグ・ヒロユキ容疑者(38)だ。オグ容疑者のパスポート情報などによると出身は東京都で、漢字表記は「尾久宏幸」とみられる。

ノルウェーメディアDagbladetなどによると尾久容疑者は今年1月、ラオス中部の宿泊先で、交際していたノルウェー人女性ネリド・ホイネス(Nerid Hoiness)さん(30)を絞殺し、遺体をジャングルに遺棄した疑いが持たれている。

ネリドさんの遺体には激しく暴行を受けたあとがあり、後頭部に損傷も見つかったという。ラオス警察は、尾久容疑者が宿泊先のホステルの部屋でネリドさんに暴行を加えた上で絞殺し、遺体をバイクで運んで遺棄したと断定し、ICPO=国際刑事警察機構を通じて4月に国際手配した。

尾久宏幸容疑者(Interpolホームページより)
尾久宏幸容疑者(Interpolホームページより)
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二人の出会いはどこ?

2人はどこで出会ったのだろうか。
ノルウェーメディアDagbladetの取材によると、尾久容疑者とネリドさんは、タイ南部のリゾート地・パンガン島で出会ったとされる。ネリドさんは2019年秋、自宅があるノルウェーの首都オスロからタイ・パンガン島へ向かい、地元のヨガスクールで仕事をする予定だった。この島でネリドさんは尾久容疑者と出会い、恋人関係になったという。

その後、尾久容疑者はネリドさんと共に2020年1月8日、タイ北部からラオスに入国した。そして首都ヴィエンチャンから車で4時間ほど離れた観光地バンビエンのホステル「フリーダム・ホステル」にチェックインした。このホステルに数日滞在したが、その後、ネリドさんは行方不明となり、1月末にジャングルで遺体が発見された。

尾久容疑者の拠点は?

尾久容疑者はどこを拠点としていたのだろうか。
地元当局などへの取材から、尾久容疑者はタイを拠点にしていたことが分かった。

FNNが入手した出入国記録によると、尾久容疑者は観光ビザでタイ国内に滞在していて、年に何度も出入国を繰り返してビザを延長していた。2019年には2月、5月、6月、8月、11月と5回以上の出入国を繰り返していた。

また尾久容疑者がバンコク市内のマンションに居住していたことも分かった。
バンコク市内にある尾久容疑者の滞在先マンションの管理人によると、事件が起きた1月以降、尾久容疑者は帰宅しておらず、部屋にあった私物も知り合いの日本人によって既に運び出されたという。最後の家賃は未払いの状態だった。

では尾久容疑者はタイで何をしていたのだろうか。
ノルウェーメディアDagblasetは、元交際相手などの複数の証言をもとに、尾久容疑者が違法薬物に関わっていた可能性があると指摘している。しかし現時点では、これ以上の詳細は明らかになっていない。

尾久容疑者の逃走先は?

尾久容疑者は現在、どこにいるのだろうか。
まず考えられるのが拠点としていたタイだが、地元当局の出入国記録によると、尾久容疑者は2020年1月8日にラオスへ出国して以降、再びタイに入国した記録はない。

また、尾久容疑者がラオスの隣国カンボジアに逃走しているのではないか、という情報も出ている。カンボジアメディアCNEは14日、尾久容疑者と見られる男が国内のカンポットで目撃されたとのSNS情報を報じた。しかし現時点でカンボジア当局は把握していない。

国際手配をきっかけに、事件の全容解明が待たれている。

【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】

佐々木亮
佐々木亮

物事を一方的に見るのではなく、必ず立ち止まり、多角的な視点で取材をする。
どちらが正しい、といった先入観を一度捨ててから取材に当たる。
海外で起きている分かりにくい事象を、映像で「分かりやすく面白く」伝える。
紛争等の危険地域でも諦めず、状況を分析し、可能な限り前線で取材する。
フジテレビ 報道センター所属 元FNNバンコク支局長。政治部、外信部を経て2011年よりカイロ支局長。 中東地域を中心に、リビア・シリア内戦の前線やガザ紛争、中東の民主化運動「アラブの春」などを取材。 夕方ニュースのプログラムディレクターを経て、東南アジア担当記者に。