プーチン大統領のロシア国内の支持率は7割を超えています。その要因の1つともいえるのが、政府関連機関や国営テレビによって報じられる徹底的ともいえる「情報統制」です。そのなかには12歳の女の子を起用した子供向けの“正当化教育”もありました。

12歳少女へ「SNSの情報は鵜呑みにしないで」

3月15日にロシアの教育省がオンラインで公開した、子供向けの教育映像。

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12歳の女の子:
きょう教えてくれるのは、デニス・ボヌンチュコフさんです。デニスさん、こんにちは。

デニス・ボヌンチュコフさん: 
こんにちは ソフィアさん。

番組に出演しているのは12歳の女の子。

12歳の女の子:
いつから兄弟のようなウクライナの人たちとこのような関係になったの?

デニス・ボヌンチュコフさん:
ウクライナ危機が始まったのは、きょうや昨日のことではありません。

話は、ウクライナ東部の親ロシア派地域の問題についても及びました。

デニス・ボヌンチュコフさん:
ロシアは解決のため、ミンスク合意によるヨーロッパの国々との協調を図りましたが、戦争は阻止できなかったのです。銃撃は継続し、人々が亡くなりました。

西側諸国がロシア側の停戦の求めに応じなかったため、多くの人が亡くなったと女の子に説明しました。そして、政府による情報統制が難しいとされるSNSについては…。

デニス・ボヌンチュコフさん:
ミサイルが幼稚園に当たった、部隊が戦車を破壊した、飛行機が攻撃されたなどのSNSの情報は信ぴょう性を確かめるべきです。

12歳の女の子:
そのようなニュースを注意して見ていなかったことが分かりました。これからは全て確かめます。

「SNSの情報は鵜呑みにしてはいけない」と説明する男性の言葉に、女の子はカメラ目線でうなずきました。

「父さん、信じて」父子で意見の食い違い

また、ロシア国内の情報を盲信する父と、その呪縛を解こうとする息子とのやりとりがインターネットに公開され話題を呼んでいます。

公開されたのは、父と息子の電話音声。何気ない日常のようですが、父はロシアに住み、息子はウクライナに住んでいます。公開したのはウクライナのミシャ・カツリンさん33歳。

ミシャ・カツリンさん:
お父さんは、私たちのウクライナ政権がナチス化して、ロシア語を話す人を迫害しているってことを本当に信じているの?

ミシャ・カツリンさんの父:
ウクライナには多くのロシア人がいて迫害を受けている。

ミシャ・カツリンさん:
自分もロシア語を話すけど、ウクライナに33年住んでいて一度も迫害を受けたことはない。

ウクライナ侵攻は「戦争ではなく人道支援」と信じ込むロシア在住の父。それに対し、ウクライナに住む息子が「これは戦争」だと説得する音声です。

カツリンさんは、自身のインスタグラムに父との出来事を投稿。すると「私も同じ経験をした」などのコメントが数千通も寄せられたことで、サイトを開設しました。そのサイトのタイトルは「父さん、信じて」。

ミシャ・カツリンさん:
アメリカ映画のように建物に砲撃が当たる。

ミシャ・カツリンさんの父:
いいえ、私は信じない。

頑なに信じようとしない父。しかし連絡を重ねることで、少しずつ変化が生じたといいます。「こんなことが起きるなんて心が痛い」「君たちのことがとても心配だ」。最後には、ウクライナは「戦争状態」にあると認識し我が子を思う複雑な心境を明かしました。

「情報の入手先」に世代間ギャップも

ロシア政治が専門の筑波大学・中村教授によると、実はこうした情報の入手先の違いによる意見の食い違いが、ロシア国内でも起きているといいます。

筑波大学 中村逸郎教授:
同じ世帯に住んでいても、インターネットとかも利用しない高齢者もいるんですね。そういう人たちはやっぱり国営放送だけを見てる。そして、若い世代にはインターネットとか外国の情報も入ってきている。そうするとウクライナ侵攻について親とかおじいちゃんおばあちゃんの世代と若い20代では全然意見が食い違うと。それで親子喧嘩が実際に起こっているという話を聞いてます。

(「めざまし8」3月15日放送分)