レストランなどで食べ残した料理を詰めて持ち帰るための容器「ドギーバッグ」。最近は提供する飲食店も増えてきたようだが、活用したことはあるだろうか。

そんな中で、ロイヤルホストなどを展開するロイヤルフードサービス株式会社と、デニーズなどを展開する株式会社セブン&アイ・フードシステムズが、共同で食品ロス削減活動の実証実験を2021年5月から2022年2月28日まで実施した。

ロイヤルホストの店舗(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
ロイヤルホストの店舗(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
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料理を食べきれなかった客の中で、希望する人に無料で“食べ残しお持ち帰り専用容器”をロイヤルホストとデニーズで渡し、「おいしい食べ物を適量で残さず食べきること」などの普及と啓発を推進するもの。

ロイヤルホストでは、2020年10月から農水省が推奨する食品ロス削減国民運動キャラクター「ろすのん」を活用し、メニューブックの表紙など数カ所に「残した料理を持ち帰りたい方はご相談下さい」と明記して既に“持ち帰り”の案内をしていたが、「食品ロスに対する課題が、一企業の取り組みだけで解決する課題ではない」などの理由から今回の実証実験に参加。

実証実験は環境省の食品ロス削減活動「mottECO(モッテコ)」の導入モデル事業としても採択されており、今後、利用者の声や実績を検証し、実施規模やパートナーの拡大を図っていくという。

(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)

なお、ロイヤルフードサービスを含むロイヤルグループでは、SDGsの達成に向けて2020年6月に事業会社横断の「食品ロス削減タスクフォース」を立ち上げている。これまでにグループ全体で食品廃棄量を直近5年間で約10%の削減をしたとのことだ。(2015年比較の2019年実績)

食品ロス削減施策は優先度が高い社会課題

実証実験ではどのくらい食品ロス削減ができたのだろうか。また実証実験を経て今後、どのような取り組みを考えているのだろうか。ロイヤルフードサービス株式会社に話を聞いた。


――食品ロスの問題をどのように捉えている?

食品を扱う企業として、優先度高く対応していく社会課題と認識しております。また食品ロス削減施策は、弊社が考える全てのステークホルダーに対して有益であり、企業価値の向上だけでなく、持続可能な社会を創り出すために大切な施策と考えております。

「持ち帰り」をメニューブックで案内 画像下が「ろすのん」(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
「持ち帰り」をメニューブックで案内 画像下が「ろすのん」(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)

――実際、ロイヤルホストでは「食べ残しによる廃棄」は多い?

ロイヤルホストの場合、1店舗当たり約900Kgの「生ごみ」を排出しています。(2019年度月間平均) 一人当たりにすると約90g程度と推計され、一般的に言われる国民一人当たりの食品ロス量お茶碗一杯より少ないです(農水省発表値:茶碗一杯約124gの食品ロス) 。食品ロス削減の取り組みを考えるにあたり、廃棄が起きないようにするための取り組みが大切であると考えております。


――今回、モデル事業に参加した理由は?

食品ロスに対する課題は、弊社グループ全体で真剣に取り組む課題と認識しておりますが、一企業の取り組みだけで解決する課題ではないと考えております。今回、日頃、環境課題について意見交換をさせていただいている、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ様より、本事業の共同実施のお誘いをうけ、参加いたしました。

1カ月平均で1店舗当たり約10件の利用

――2月末までの実証実験で、どのくらいのお客が活用した?

2つの異なる企業ブランドで取り組んでいるため検証はこれからのため、現時点ではまだ正確な数字は提示できませんが、ロイヤルホストでは、1カ月平均で対象の26店舗で1店舗当たり10件ほどのご要望をいただいております。

また1件あたりのお持ち帰りされた量は、100g強と推計しています。 今回の実証実験において、ロイヤルホストでは、削減する実量よりも、「食べきれないものは持って帰ることができる」、食べ残しを自己責任で持ち帰ることをお客様に知っていただくことが取り組みのひとつであったと考えております。


――実証実験を経て、今後はどのような取り組みを予定している?

今後は、さまざまな方々より届けていただく大切な食材を美味しくお客様に食べていただけるように、「食の安全・安心」を担保し、無駄なく食材を使い切るように、努力してまいります。また、小皿料理の一品料理を充実させて、お客様が食べたい量に合わせて選んでいただけるような取り組みを継続してまいります。

(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)

――2020年に「食品ロスタスクフォース」を立ち上げている。今回の他に、どのような食品ロス削減の取り組みをしてきた?

ロイヤルグループは、外食事業、コントラクト事業、ホテル事業、食品事業の4事業を各事業会社が担っています。その各事業会社からメンバーを集め、グループ横断で食品ロス削減の取り組みを行ってまいりました。

例えば、自社製造の一部製品で賞味期限の年月表示化などに取り組み、食品ロス削減の効果を検証しております。


――最後に、SDGs に対する認識を聞かせて。

本年2月14日に発表いたしました、ロイヤルグループの第6次中期経営計画に記載がございますように、SDGsについては弊社グループが、「“食”&“ホスピタリティ”企業グループとして、事業活動を通じて、社会・環境問題への対応に積極的に取り組み、各ステークホルダーとのつながりを大切に明るい未来の創造と持続可能な社会の実現に貢献する」ための施策策定に、大切な指標と認識しております。

(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)
(画像提供:ロイヤルフードサービス株式会社)

持ち帰り容器や小皿料理の提供など、ロイヤルホストでは色々な取り組みを進めていた。しかし、重要なのは私たちの意識だろう。担当者も「『食べきれないものは持って帰ることができる』、食べ残しを自己責任で持ち帰ることをお客様に知っていただくことが取り組みのひとつ」と今回の実証実験を振り返っていた。

自分が食べることができる量を考えて注文し、万一残してしまったら持ち帰る。ひとりひとりができることは小さいかもしれないが、このような行動が食品ロスの削減へとつながるはずだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。