誰もが世界へと発信できる時代。しかしクリエイティブな世界には、実力があっても日の目を見ない作品やアーティストも数多くいます。
そんなアーティストの可能性を広げるべく、立ち上がったのがTRiCERA(トライセラ)代表取締役の井口泰(いぐち たい)さん。彼が中心となって起ち上げたプラットフォーム「TRiCERA ART」には、世界中のアーティストの作品が展示されています。
井口さんの起業の経緯やTRiCERAの魅力を、タレント・まつきりなさんが聞きました。
アーティストが世界に進出する可能性を広げたかった
“創造力に国境なんてない”をミッションに、TRiCERAはアートやアーティストたちの前に立ちはだかる壁、言葉、距離を取り払い、全世界へ届けるアート・プラットフォーム「TRiCERA ART」を運営。交渉、集荷、配送などの作業を請け負い、自国にいながら活動に集中できる仕組みを築いている。
――井口さんがTRiCERAを起ち上げるまでの経緯を教えてください。
私はもともと子役として表現や演出の世界にいましたが、あるとき挫折を経験し表現の道を諦めてしまいました。
ただ、芸術や表現することへの気持ちの熱さだけは企業に就職しても冷めなかったんです。
――起業を決意するきっかけは何だったのでしょうか?
仕事の一環でアメリカ・ポートランドのアートフェアに行ったときです。そこには日本人アーティストの作品がまったくなく、日本人の作品が世界の人に見られる機会が少ないと感じました。
その時に私は自分のいままでの挫折や経験を活かして、彼らのサポートをしつつ、日本の芸術界を変えるきっかけを作れるのではと思いました。
よく芸術の世界で有名になれるのは全体の約0.001%くらいだと言われますが、その数字を1%〜3%まで引き上げられないかなと。芸術でご飯を食べていける人を増やせるんじゃないかと思ったんです。
もう1つ、子どもが生まれたことも起業する決意のきっかけになりました。子どもに挑戦し続ける自分の姿を見せたいと思ったんです。子どもの存在が起業を考えていた私の背中を押してくれました。
多種多様な作品に出会えるプラットフォーム「TRiCERA ART」
さまざまな経験を経て、2018年に井口さんが立ち上げた「TRiCERA ART」は、従来のクリエイティブな世界にはあまり見られない、新しい発想のプラットフォームとして注目されています。

――「TRiCERA ART」の特徴を教えてください。
世界126カ国以上、6,000人を超えるアーティストや作品に出会えるのが特徴です。現在、約5万点(3月22日時点)の作品が登録されています。
ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアなど幅広くアーティストが参加しており、作品のジャンルも絵画の他に彫刻、写真の作品を紹介しています。時代とともにアーティストのジャンルが多様化し、絵画も彫刻も手掛ける人が増えました。

――かなり多いですね。自分好みの作品を探すのが大変そうですが、検索のコツはありますか。
サイト内の検索機能は、さまざまな切り口から作品を探せるようになっています。例えば、青を基調とした絵画が見たいとき「青・絵画」と検索すると、その条件にあった作品が抽出されたり、絵画のサイズや価格で探すこともできます。
好みのアーティストをフォローすると、新しい作品が登録されたときに通知が届く機能もあります。
――ファンにいち早く最新情報が届くようになっているんですね。作品の価格はどれくらいなのでしょうか?
1〜2万円前後の比較的手に入りやすい作品から、数十万円する作品まで幅広く取り揃えています。
作品だけではなく、裏側にあるストーリーや思いも提供
アーティストが表現する作品には、必ずコンセプトがあり、思いが込められている。井口さんはそれらを作品と一緒に触れられるようにしている。

「TRiCERA ART」では、アーティストが直接、作品のコンセプト・思い・制作までの経緯を書き込めるようにしています。
言語は、翻訳ソフトを用いて8カ国の言語に対応できるようにしました。

――アーティストが直接、作品のコンセプトや思いを書くことは、どのようなメリットがあるのでしょうか?
アーティストが作品を通じて主張したいテーマやコンセプトの事を「ステートメント」と言いますが、何を問題として定義し、描きたいのかは個人によって異なります。
そのステートメントを作家さんが直接伝えられることはメリットですね。作品を見る側としても分かりやすくなるはずです。
また昨今は、それぞれの国や地域が抱える社会問題を絵に投影している傾向が強く、作品からそのような問題がある事を知ることもできます。
――具体的にどのようなアーティストの作品が登録されているのでしょうか?

Israel Padonuさんの作品は非常に面白いですね。ナイジェリア出身なのですが、お名前はイスラエルさんです(笑)。彼は2017年にアフリカのアートの大学を卒業後、さまざまな社会問題に取り組みながら作品を出しているアーティストです。
たとえば、今アフリカでは新興宗教の問題があります。日本でも1980年代から90年代にかけて起きた新興宗教に関する一連の事件のようなことです。日本にいるとアフリカのニュースに触れる機会は少ないですが、実はアートからそのような事が起きているのだと「知る」ことが出来るのです。
ゴミ問題を取り上げた作品も印象的です。作品にはビニール袋、アンカラ布(アフリカの織物)、新聞紙などリサイクル素材が取り入れられており、COVID-19で受けた悲しみなどを表現しています。

イギリス出身のGlen Farrellyさんの作品も、印象深いです。彼の作品のメインテーマは「森林保護」。
過去に山火事を経験したことから、自然を大切にするメッセージを込めた作品が多いですね。木を使った面白い彫刻作品を数々出品しています。

ウクライナ出身のTanbeliaさんも、環境問題をメインコンセプトに作品を登録している方です。
風景画に見えますが、彼女の作品の一つひとつには「人々に自然を守り、保護してほしい」という思いが込められています。
作品の裏側にあるストーリーをアーティストから直接知るということは、きっと私たちの刺激になるはずです。インテリアとして作品を選び購入するのも良いですが、その裏にあるコンテクストを理解するのも芸術の醍醐味。「TRiCERA ART」でその面白さを感じていただければと思います。
世界的に有名な日本人アーティストの作品も多数登録
「TRiCERA ART」を通して、世界的に有名になった日本人アーティストの作品も登録されている。井口さんのイチオシのアーティストを2人、紹介していただきました。
まずは、タケダヒロキさんです。「TRiCERA ART」を開始してすぐにご参加いただいている方で、植物をモチーフに動物を表現する水彩画がメインの作品です。

――とても可愛らしくて鮮やかな色の作品ですね、すぐにでも欲しいです!
彼の作品はかなり人気で、海外のメディアでも取り上げられたことがあります。2022年3月の時点で依頼しても、作品が手に入るのは早くて2023年の12月だそうです。人気アーティストの中でも2年待ちというのは相当です。
さらにもう一つ特徴があって、お求めやすい価格帯なんですね。数万円から十何万円とありますが、版画作品も制作しており、こちらは2万円~3万円で購入する事もできます。

もう1人は、ishii-nobuo(石井伸夫)さん。もともと陶芸家の方で、絵画は67歳から始めたとのこと。
メインはピカソのようなキュビズム的な絵画で、物事を多面的に描いているのが特徴です。海外からのファンも多く、5万人いるInstagramのフォロワーのうち98%が海外の方だそうです。
――もはやインスタグラマーですね。キュビズムって毎日見ても見方が変わるので、楽しいです。
そう言ってもらえると、ピカソも喜んでいると思います(笑)。アート作品は、その日の自分の心の持ちようで、見え方が変わってくるんです。そして、その毎日の違いを楽しめるのは、購入した方だけなんですよ。
――ところで、オンラインだけでなく、この「TRiCERA Museum」では、実際に作品を見ることも出来るのですよね。
「TRiCERA Museum」という展示場を東京都港区に設けておりまして、月に1回、個展やテーマに応じたグループ展を企画しています。
2022年2月は、中島健太さんの個展「旅するミュシャ展」を、3月には大橋麻里子さんの個展「Unexplored」を開催しました。

――大橋麻里子さんの作品には、どのような特徴があるのでしょうか?
彼女は、あらゆるものがデジタル化してメタバースが進んでいる時代でも、物体が存在するリアルな世界を大切にしています。それを可視化させるために、コラージュを用いており多層的に見える作品が多いですね。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、アーティストが持つ「ステートメント」を読み解く力、「読解力」は今後ますます必要になると言われています。例えばビジネスの世界でも相手の考えを理解する事は重要ですよね。アートを理解する努力は、そのような読解力を養う事につながり、自分の力になっていきます。
現代アートは「知的ゲーム」で、難解だと言われる事もあります。表現の美だけではなく、「何を」表現しようとしているのか? アーティストと鑑賞者の「対話」に近いのです。鑑賞者は自分の中で考え続ける。見るだけでなく考える事も含めたアート、それが現代アートなのです。
自分のキャリアを築ける環境を作り上げたい

――井口さんが思い描く今後のTRiCERAのビジョンについて聞かせてください。
直近の目標はTRiCERAを通じてサポートするアーティストの数を増やすこと、そしてサポートの幅を広げることです。例えば、昨今注目されているNFTのようなブロックチェーン技術を使って著作権を管理するサポートなども考えています。
長期的なビジョンとしてはTRiCERAを、作品を販売する環境だけでなく、アーティストが自らキャリアを築ける場所にしていきたいです。現状、アーティストのキャリアの道は少ないのですが、もっと色々な選択肢があって良いと思っています。
100年後200年後にはアーティストが自分でキャリアを作っていける、そのサポートをしていくのが我々の永遠に続くミッションです。
――これからTRiCERAをきっかけに世界で活躍する日本人アーティストも増えていきますね。
グローバル化が進んでいる世の中ですが、我々は「創造力に国境なんてない」というビジョンを掲げています。自分の限界を自分で決めなくて良いですし、もっと可能性を考えて欲しい。
グローバルなマーケットはすぐそこにあって、弊社のようなサービスを使えばすぐに行けます。私が(前職の)NIKE時代に学んだ「Just Do It」というのは、「すぐにやろう」というよりは「一歩踏み出そう」という意味です。この一歩踏み出す勇気を感じ取ることが出来れば、より良い未来が開けて行くのだと思います。
<インタビューを動画で見る>
株式会社TRiCERA
国の境界線を越え、世界のアートを結ぶ一気通貫のサービスを提供。アーティストの海外進出に関する課題を解決し、言語や国境の壁を感じることなく、 より広い世界市場へ展開できるようサポートする。
〒108-0074 東京都港区高輪3-22-5 SDS高輪ビル
https://tricera.co.jp
TRiCERA ART:
https://www.tricera.net/ja
【ウクライナ在住アーティストの支援プロジェクトを実施中】#StandWithUkraine

TRiCERAではウクライナ在住のアーティストを経済的に支援するプロジェクトを実施中。「TRiCERA ART」に登録している約200人のウクライナ在住アーティストの作品を購入すると、配送料などの諸費用はTRiCERAが負担し、売上全額がアーティストに支払われる。また「TRiCERA ART」で3月中に購入された全作品の販売価格10%が在日ウクライナ大使館へ寄付される。
<詳細はこちら>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000043089.html
提供:フジ・スタートアップ・ベンチャーズ
制作:FNNプライムオンライン編集部
文=トヤカン