ロシアのウクライナ侵攻で国際情勢が緊迫する中、台湾では中国の軍事的な圧力が強まらないか懸念が広がっている。アメリカが警戒を高める台湾有事と、沖縄が置かれている状況について考える。

ウクライナ侵攻により広がる台湾有事への懸念

2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻では、3月4日時点で2000人の犠牲者が出ていると報じられている。

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国際社会の秩序を無視するかのような武力行使が続く中、台湾である懸念が広がっている。

台湾に住む日本人 上田功さん:
台湾でもニュースは連日、ウクライナの情勢をやっています。その論調は基本、アメリカはやはり軍事的にヘルプはしない、というもの。ウクライナだって国民も、キエフに攻めないって言っていた。それを一気にやってしまったからね、そういうことが(台湾でも)起こりえるという話

2021年3月、アメリカ議会におけるアメリカ軍司令官の発言が世界中に波紋を広げた。

フィリップ・デービッドソン 米インド太平洋軍司令官:
今後、6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある

台湾を自国の領土と主張し、軍事的な圧力を強める中国。力により一方的に現状の変更を試みるロシアの姿を、台湾の人々は中国と重ねている。

国際政治に詳しい沖縄国際大学の野添文彬准教授は、中国の思惑を次のように解説する。

沖縄国際大学・野添文彬准教授:
台湾は自分たちの領土だったから統一したい、というのが1つ。2つ目は、台湾というのは中国からすると、太平洋に出ていくための重要な出口になる。それは軍事的にも大事だし、経済的にも大事ということです

もし台湾有事が起きたらアメリカは…

中国が台湾に侵攻する、いわゆる台湾有事が起きた際に注目されるのがアメリカの対応だ。

沖縄国際大学・野添文彬准教授:
アメリカが台湾へ軍事介入するかといったら、すると思いますね。なぜかというと、台湾が地理的に重要な位置、第一列島線の大事な位置にあって、太平洋に中国が進出していく重要な場所になる。それから、もし台湾をアメリカが見捨てた場合、アメリカは簡単に同盟国を見捨てるんだというメッセージになってしまう。さらに加えると、台湾は経済的にもどんどん最先端の技術を作っている。そこが中国に取られると、やはりアメリカにとって非常にまずいですよね

ウクライナへの軍事侵攻が始まってから5日後の3月2日、アメリカ軍の元幹部が台湾を訪れ
蔡英文総統と会談した。

蔡英文総統:
現在、中国軍は台湾海峡と領土への威嚇を強めています

マレン元米軍統合参謀本部議長:
台湾海峡の平和と安定は、アメリカだけでなく世界の利益です。だからこそ、アメリカ政府は一方的な現状を変更する行為に反対し続け、台湾の人々の希望と最善の利益となる海峡問題の平和的解決を支持します

台湾に近い沖縄 米の軍事介入で自衛隊の拠点に

台湾有事が勃発してアメリカが台湾軍を支援すれば、基地が集中する沖縄への影響は避けられない。

沖縄国際大学 野添文彬准教授:
中国が明らかに台湾に大規模な攻撃を仕掛ける事になった場合には、在日米軍基地を含めた西太平洋の米軍を台湾に送り込んで反撃することになる。よく言われるのは、台湾有事になった時、中国は先島あたりを占領するのではないかとか、アメリカ軍の介入を阻止するために沖縄の米軍基地をミサイル攻撃するのではないかということ。沖縄は台湾に非常に近いので、台湾有事は沖縄にとって決して他人事ではない

2015年、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案が成立。自衛隊とアメリカ軍の一体化が進む中、2022年1月に行われた外務・防衛閣僚会議2プラスで、日米は南西諸島の態勢を強化し施設の共同使用を増やすことで一致した。

台湾有事でアメリカが軍事介入に踏み切れば、自衛隊は与那国・宮古・石垣を拠点にアメリカ軍を後方支援する役割を担うことが予想される。

沖縄国際大学 野添文彬准教授:
台湾有事になった時には、沖縄や先島などが攻撃される可能性は当然あるということもそうですし、それを阻止するために沖縄を含む南西諸島に自衛隊を配備していったということがあると思います。日本政府の考えというのは、自衛隊などのいない空白的な地域は占領されやすいと。他方で、軍がいるからこそ敵に攻められるんだ、攻撃の標的になるんだという考え方は、沖縄戦などを経験した沖縄においては当然、出てくると思います

南西諸島が軍事拠点となり、再び住民が巻き込まれる事態になりかねない。2022年1月、沖縄戦の研究者らが新たな市民団体を発足させた。

沖縄女性史家 宮城晴美共同代表:
戦争体験をずっと聞いてきて「なぜあの時、戦争に反対しなかったの?」と疑問に思った人はたくさんいると思います。今私たちが声をあげなければ、次の世代から今度は私たちがそう言われる番が来るんじゃないかと

軍事力による抑止だけでない、外交努力の必要性

中国への対応を念頭にアメリカ軍は2月、宮古海峡で自衛隊との共同訓練を実施。那覇軍港でも、これまで行っていなかった大規模な訓練を展開した。

さらにアメリカ空軍の極東の要、嘉手納基地には2月下旬からF35戦闘機などが相次いで飛来。

嘉手納基地の住民:
(騒音が)すごかったですよ、ここ2~3日前。ちょっと異常。今までとは違うなと思ったね

国際情勢の狭間で、基地の周辺で暮らす住民は負担を強いられている。戦争が平穏に暮らしていた多くの人々に火の粉を降らせ悲劇を生むことを、今回のウクライナ侵攻はまざまざと世界に突きつけている。

武力衝突という最悪の事態を避けるため、野添准教授は軍事力による抑止だけでなく、外交による努力が必要だと力説する。

沖縄国際大学 野添文彬准教授:
国際社会が一致してウクライナを支持している。ロシアを批判すると。中国もウクライナの様子を見て、台湾に攻め込むことは簡単ではないと考えているのではないかと個人的には思います。台湾に関しても、国際社会の連帯というのはとても大事だと思います

(沖縄テレビ)

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