まだ食べられるのに捨てられてしまう食品は多いことだろう。
もったいないと思いつつも解決の難しい「食品ロス(フードロス)」問題だが、ファッション業界では、捨てられてしまう食品から染料を抽出して活用するプロジェクトが進んでいる。
繊維品を扱う豊島株式会社(名古屋)が展開する「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」で、規格外の食材やカット野菜の切れ端、コーヒーの出し殻などの“捨てられるはずの食材”から、成分を抽出して独自の技術で染料を製造。糸や生地に染め上げ、さまざまなオリジナル商品を生産・販売しているのだ。
2015年にスタートしたプロジェクトなのだが、この「FOOD TEXTILE」の生地を使用したサステナブルなハンカチの販売が、繊維製品企画・販売のブルーミング中西株式会社が運営するオンラインショップ「ハンカチーフギャラリー」で2月22日に始まった。
36×36cmサイズの綿100%のハンカチで、カラーは9色。税込み1430円で購入できる。
〈カラーバリエーションと食品〉
コーラルピンク:さくら
ブルー:赤カブ
グリーン:抹茶
グレー: ブルーベリー
オレンジ:ルイボス
ブラウン:ドリップコーヒー
アイボリー:エキナセア
ピンク:紫キャベツ
ダークブラウン:エスプレッソコーヒー
50食品500色以上のカラーバリエーション
廃棄食材から抽出されたとは思えないような淡く繊細な色合いだが、1つの食品からいくつのカラーができるのだろうか? また、作り出された染料にはどういった特徴があるのだろうか?
豊島株式会社・広報担当の佐藤菜津紀さんに聞いた。
ーー1つの食品からいくつのカラーができるの?
1つの食品から10色ほどの色が取れます。現在、50食品500色以上の展開があります。
例えば「ドリップコーヒー」からは、コーヒーそのもののような濃い茶色を始め、淡い色まで全11色が取れるという。
ーー染料が作り出せない食品はあるの?
作れない食品は、「加工されているもの:糖化されていたり調理されたあとのもの」や「混ざっているもの:キャベツとレタスが一緒になっている等」は染料にできません。
ーーどのような特徴がある染料なの?
天然染料が持つニュアンスカラーは化学染料にはない、自然原料の成分から抽出したやさしい色です。目に優しく自然との調和になります。食品の種類によっては抗菌効果や消臭効果が得られるものもあります。また、天然染料でありながら色落ちしにくく、長く使用できるところも特徴です。
ーー原料になる食品はどのようにして集めている?
食品関連企業や農園より買い取っています。
食品だけでなくファッション産業での問題
ーーどんな生地にも染められるの?
天然素材を中心に展開していますが、リサイクルポリエステルなど合繊素材の染色も可能です。残渣(残りかす)が出てくる企業様のユニフォームや資材などに使用され始めています。
トレンドの移り変わりの激しいファッション産業では、発生してしまう売れ残りなどを廃棄処分してしまう現状がある。そして、そういったアパレル製品の多くには化学染料が使用されており、地球や自然環境に大きな負荷を与えてしまっているという。それは食品業界でも同様で、食べ残しや規格外を理由にした廃棄など、食品ロスの大きな課題を抱えている。
そういった経済中心の社会システムの弊害に対し、「何かできることはないだろうか?」という思いから「FOOD TEXTILE」は誕生した。
染料を作り出すのには、食品の残りかすの抽出試験や染料として使用できるかのテストを幾度も繰り返したそう。さらには、赤色のイメージのトマトだが抽出した染料は黄色であったりと、試行錯誤して出た色も人が感じる食品のイメージと違うこともあった。それをどのようにして消費者に理解してもらい商品にするのかといったことに苦労したという。
ーー最後に、「FOOD TEXTILE」の今後の展開を教えて。
インテリア分野(カーテン、椅子張り)、海外販売、企業ユニフォームや特別な商品など今まで行っていることの深耕。染料や顔料を使用してインクなどへの転用を考えています。
2月22日に販売した「ハンカチ」は、FOOD TEXTILEの持つ優しい色合いがより伝わるように、あえて刺繍などは加えずに作っているという。
ブルーミング中西の担当者は「ハンカチは洗って繰り返し使うことができる、エコなアイテムです。ハンカチという身近なアイテムで気軽にエコを楽しみながら、ハンカチの魅力をお伝えすることができればと思っております」と話している。
誰しもが関わりのある「食品ロス」という問題を、こうした商品を持つことで、改めて“考えるきっかけ”にもなるかもしれない。