食品ロス問題も解決?「パンから作るビール」

まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品、いわゆる「食品ロス(フードロス)」の問題。環境省の発表によると、平成29年度の食品廃棄物等は約2550万トン、このうち食品ロスにあたるのは約612万トンと推計されている。

「もったいない…」と思いつつも、解決の難しい食品ロス問題。そんな中、捨てられるはずだったパンからビールをつくる取り組みを、シンガポールを拠点とするフードテクノロジー企業・CRUSTグループの株式会社CRUST JAPANが行っている。

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それが「CRUST PILSNER」プロジェクトで、食べられるにも関わらず、廃棄予定にあった“フードロスパン”と日本アルプスの天然水を原料に、ピルスナータイプのクラフトビールを作るというもの。

日本初上陸となったこのプロジェクトは、クラウドファンディングサイト「Makuake」で3月4日から目標金額40万円で先行販売を開始。3月18日現在、22万円の支援を受けて進行中となっている。

CRUSTグループでは「2030年までに世界の食品ロスを1%削減する」という目標を掲げており、このプロジェクトも「美味しいだけではなく、飲む事でSDGsへの貢献にも繋がる」活動とのことだが…

遠からずやってくる夏、ゴクゴク飲み干すビールは格別だが、パンから作ったビールはやっぱりパンの味がするのだろうか?

気になる製法やお味、そして食品ロス問題への取り組みについて、CRUST JAPAN株式会社にお話を聞いてみた。

パンの「皮」を使って製造

――パンからビールを作る仕組みはどんなもの?

私たちがパンのアップサイクル(新たに原材料として活用)の際に主に使っているのは、サンドイッチや食パンなどから廃棄されるパンの「皮(クラスト)」の部分です。 これが当社の社名の由来です。

酵母と麦芽で発酵させる際に糖分を抽出しやすいように、パンの「皮」を小さくカットしています。 もちろん、適切な温度、水分量、発酵時間をコントロールするための独自の技術も持っています。

CRUST独自のレシピ、配合、技術を用いることで、従来のビール原料のうち、パンや米などの食品ロスを最大50%まで代替することができます。 この比率が重要なのは、世の中の食品ロスを減らすことができれば、それだけ二酸化炭素の排出量を減らすことができるからです。


――「フードロスパン」と「廃棄パン」は異なるの?

CRUSTがシンガポールで立ち上がった時、多くの人は食品廃棄と食品ロスを混同していて、他の人が消費したり使用したりした食品をビールに変えていると思っていました。実際には、使われず、売られずに余ったパンをビールにしていたのです。


――どんなパンが使える?

バターやクリームを含まないパンを原料として使用しています。現在バターやクリームを使ったパンも原料に出来るよう、私たちのイノベーションチームが新しい配合を研究しています。

原料となるパン

――原料になるパンはどのように集めるの?

生パンの回収は、取引先の工場と直接行っています。 これらの工場は通常、パンを廃棄するための費用を負担しなければなりませんが、私たちはこのサービスを無料で提供しています。

2021年2月時点で、すでに150kg以上のパンを削減しており、これは3450kg以上の温室効果ガスを削減したことになります。


――いろいろな種類のパンが混ざっても、ビールの味にばらつきは出ない?

私たちは、ビールの一貫性と品質を確保するために、原料が同じ種類の "クラスト"を使用しています。 また、醸造所で使用された使用済み穀類は、天ぷらやホットケーキ、クッキーなどに使用できるパンケーキミックスの粉にアップサイクルする予定です。

――完成したビールはパンの味がする?

ピルスナー本来の味わいを追求する為、原料のパンの印象を感じるピルスナーには仕上げません。ピルスナー本来の香りとパンから生まれる麦芽と相性よい風味がより引き立つ後味の良さを気に入って頂けたらと思います。 とても滑らかな舌触りです。 お花見やアースデイのお供にも最適です。


同社によると、「CRUST PILSNER」の特徴は、フードロスパンを燃料や肥料にしたりする「ダウンサイクル」ではなく、新たに原材料として活用する「アップサイクル」で作られたビールであるということ。日本でこのプロジェクトを始めたのは2021年からだというが、すでに150kg以上のパンが削減できたという。

これにより、食品を作る工程にかかったエネルギーが無駄にならず、さらに焼却などの廃棄にかかるエネルギーも不要となったことから、温室効果ガスを削減できたということだ。

気になるビールのお味は「パン味!」にはならないそうで、ちょっと意外にも感じるが、ピルスナー本来の香りや後味が好き…というビール党の人でも楽しめそうだ。

また原材料はパンの「皮」の部分で、いわゆる「お総菜パン」のようなものは原料に使えないそうだが、バターやクリームを使ったパンを原料にするための研究は進んでいるとのことで、今後それらを原料にした、また違った味わいのビールが登場するかも楽しみだ。

おいしく環境問題にも貢献

このほか、CRUST JAPANではオレンジの皮やパイナップルの皮、マッシュルームの茎などを使った健康飲料「CROP」も4~5月に発売予定だという。

――フードロス問題への今後の活動は?

SDG2(飢餓をゼロに)、4(質の高い教育をみんなに)、13(気候変動に具体的な対策を)、17(パートナーシップで目標を達成しよう)の達成に向けて活動しています。 私たちは、CRUST JAPANの環境活動にご協力頂ける食品会社、スーパーマーケット、流通サービスを探しています。パートナーは私たちの技術をOEMとして活用し、共同でSDGsの活動に参加することができます。

私たちは日本の消費者がCRUSTやCROPのようなSDG関連製品を求めてくれることで迅速に規模を拡大し、食品ロスをできる限り減らすことを期待しています。 また、地球温暖化を抑制するための手段のひとつであるネットゼロエミッションについても、多くの企業と協力して実現していきたいと考えています。

CRUSTは現在、シンガポールと日本で展開していますが、今後はタイやベトナムなど他の市場でも展開していく予定です。


新型コロナの感染拡大を受け、飲食店やホテルでも大きな問題となっているフードロス。遠からずやってくる夏、今年は地球の環境にも優しいこんなビールで乾杯…というのもいいかもしれない。

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