シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は泌尿器科の専門医、くぼたクリニック松戸五香の窪田徹矢院長が、梅毒など性感染症について解説。2021年が過去最多の感染者になったという梅毒はコロナ禍でなぜ増えているのか。そして梅毒だけでなく、クラミジアや淋菌など性感染症の症状や治療法についても語る。

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梅毒の感染者が過去最多の理由

今コロナ禍の影響で性感染症に対する注意が薄れている印象があります。
梅毒は、1999年の統計から初めて、2021年に7000人を超え過去最高の人数になっています。

クラミジア、淋菌、HIVなどの性感染症の数は増えていませんが、梅毒が特に増えています。
昔は、女性の感染率は5~7%ぐらいでしたが今は35%、特に20代、30代の若い女性に多くなっています。

なぜ増えているかというと、保健所に行くとHIV梅毒の検査が無料でできたのが、今はコロナ禍で保健所が忙しくて中止しているなど、検査をする母体の数が減っています。

あとは密を避けて検査場に行かなかったりなど検査をする人が少なくなってきています。
さらに、SNSはコロナの話はすごく多くありますが、梅毒はあまりフィーチャーされていません。昔はHIVやエイズは啓発などのためにテレビやマスコミで取り上げられていましたが、今はコロナの影響で減少し、梅毒の怖さを若い人が知らないという実態があると思います。

梅毒の症状 厄介な「第1期」

梅毒は性感染症の1つで、最初に「第1期 梅毒」といって潜伏期間が3週間ほどあると、性器肛門できものが出来ます。

その時一番厄介なのは、症状が出ても消えてしまうんですね。
これは治っているわけではありません。治っていないのに症状がなくなるので、もう良くなったと思って他の人に移してしまう可能性があります。

薬などの治療をしないと、「第2期 梅毒」になり、だいたい3ヶ月くらい過ぎると全身に、手のひら足の裏に多いのですが、斑点のような「バラ疹」というものができます。

顔にもできるので、そうすると皆さんびっくりして診察に来ます。
今は抗生物質でしっかり治療すれば治る病気で、亡くなる方はゼロです。第1期と第2期の間に見付かる病気となっています。

梅毒の治療法

治療は基本的には抗生物質の飲み薬となります。
飲む期間は、2週間から長ければ12週間とかなり長い期間になります。人によって体内にどれくらい梅毒の菌が残っているかによって薬を飲む期間が変わります。

途中まで飲んで、何となく治ってきているからということで病院に来なくて、最後まで治っていないのに他の人に移してしまうということがあります。

新しく、昨年の2021年9月に注射製剤の認可が下りました。これは、早期の梅毒であれば1回の治療で完了するものです。

まだそこまで普及していませんが、飲み薬のように長く飲まなくて良いので、注射という選択肢ができたことは非常に良いことだと思います。

クラミジアとは

クラミジアは、クラミジア・トリコマティスという病原体が性行為などによって粘膜に感染して起こる病気です。オーラルセックスで喉に感染することもあります。

症状は、男性の場合は、尿道から少し透明な膿が出たり、尿道に痛みがあったりします。
女性はいわゆる不正出血やお腹の痛みおりものが多くなるなどの症状がありますが、無症状のこともあります。

男性の場合は何もしなくても症状がなくなることがありますが、基本的には飲み薬を飲まないと治りません。ですから必ず治療することが大事です。

女性の場合は症状がなかったとしても、将来的に不妊症子宮外妊娠流産早産の可能性が出てくる病気です。

治療は抗生剤を飲むかたちになります。
必ず検査をすることが大事ですし、パートナーとお互いにしっかり治療して治すことが大事です。

淋菌とは

淋菌は、淋菌の感染による性感染症の1つです。
クラミジアは潜伏期間が2週間ぐらいで尿道などに症状が出ますが、淋菌は2~3日、早い人はすぐに症状が出るケースが多いです。

淋菌は、ドロッとした濁った膿が出て、症状が強いので痛みも強いです。一般的には、淋菌性尿道炎、オーラルセックスで喉に感染して咽頭炎になることもあります。

淋菌は、飲み薬では治らないことが多く、一般的に治療は注射点滴となります。
一番は、性感染症のガイドラインでも示されている点滴です。確実に1回点滴をしていただくことが大事です。

クラミジアか淋菌かということが多いのですが、両方に感染しているケースが約30%ありますから、クラミジアに対する飲み薬を飲んで、淋菌に対して点滴をする、という一緒にやってしっかり治す必要性があります。

性感染症の予防

性感染症の予防は、ちゃんとスキンをつけることが大前提になってきます。
オーラルセックスでも移る可能性がありますので、そういう行為は控える。こういったことが非常に大事になってきます。

コロナ禍で検査が受けづらい体制がありますので、自分で検査できる様々なものがインターネットで売られているので、自分でちょっとおかしいなと思ったら検査していただくことが大事です。

検査して、もし陽性が出た場合は、速やかに医療機関に行って治療をすることが大事。
今はオンライン診療もありますので、病院に行きづらい場合は、自費検査をして陽性が出たら、オンライン診療で薬をもらうこともできますので、まずは検査をしてみることが大事です。
 

窪田徹矢
窪田徹矢

くぼたクリニック松戸五香 院長 平成15年 獨協医科大学卒業 その後千葉医療センター、成田赤十字病院で研修 平成20年 国保松戸市立病院 泌尿器科 医員 平成21年 千葉西総合病院 泌尿器科 医員 平成23年 同上医長 平成27年 同上部長(その後現在も非常勤勤務) 平成29年 くぼたクリニック松戸五香 開設