鬼怒川決壊で流される住宅

2015年9月、台風から変わった温帯低気圧の影響で発生した線状降水帯による豪雨で、茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊し、震災関連死を含む死者は15人、全半壊した家屋は5000戸以上、浸水被害も2700戸以上にのぼった。濁流は住宅街に一気に流れ込み、フジテレビの取材班は上空から流されていく住宅の映像を捉えたが、逃げる間もなかった多くの住民に対してヘリなどによる救出活動が行われた。

2015年9月鬼怒川決壊 常総市 流される住宅(住民はその後救助)
2015年9月鬼怒川決壊 常総市 流される住宅(住民はその後救助)
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常総市では被害を受けて周辺自治体や県、国と対策に乗り出し、堤防のかさ上げや河川の改修、住民の避難を促すためのタイムラインの作成などにあたってきた。

ただ2017年にも鬼怒川の増水により支流の川で逆流がおき、住宅地で道路冠水がおきた。限られた人員では突発の災害に対応しきれないことがあらためて分かり、翌年からALSOK(綜合警備保障株式会社)が支流の八間堀川、新八間堀川の樋管(小型水門)8箇所の管理をすることになった。

樋管の開閉作業 ALSOK提供
樋管の開閉作業 ALSOK提供

現場に駆けつけ逆流を防ぐ

樋管の近くには監視カメラや水位計、太陽光発電パネルが設置され、データはクラウドで管理され、市の職員がパソコン上で川の画像や水位を確認できるようになった。2019年には台風で鬼怒川が増水し、支流の水位も上がったため、市からの要請を受けて急遽、ALSOKの担当者が現場に駆けつけ樋管を閉めて、河川から市街地への逆流を防いだこともあった。

河川監視・水位確認システム ALSOK提供
河川監視・水位確認システム ALSOK提供
河川監視・水位確認システム ALSOK提供
河川監視・水位確認システム ALSOK提供

常総市は民間企業との協力について「災害時に職員がほかの対策にあたることができ、住民の安全につながっている。また最先端の防災システムを取り入れることもでき、これからも官民の連携は重要になると考えている」としている。

土砂災害を防ぐ

ALSOKは神奈川県逗子市では崖地などの土砂災害対策として、傾斜計を設置する斜面監視システムの実証実験を行っているほか、ほかの自治体にはゲリラ豪雨によるアンダーパスなどの冠水の情報をLINEで受け取れる機器を提供している。

土砂災害監視システム ALSOK提供
土砂災害監視システム ALSOK提供

また阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)の際は企業などの警備員の派遣の他、がれき撤去や救援物資の仕分けのボランティアにも参加している。

東日本大震災でのボランティア活動 ALSOK提供
東日本大震災でのボランティア活動 ALSOK提供

一方、従来の業務である防犯に関しては、通り魔犯罪など危険な状況になったときにGPS機能を使って警備員を呼ぶ携帯端末「まもるっく」が幅広い年代で使われている。

防犯だけでなく防災も

ALSOKの鈴木基久取締役常務執行役員は「常総市での取り組みは鬼怒川決壊の水害を受けて、地域の安全に関わることが必要だと考えて市と協力態勢を築いた。これからも社会の安全安心を守るために防犯だけでなく、防災についても人員派遣やシステム構築などに取り組んでいきたい」と話している。

ALSOK 鈴木基久取締役常務執行役員
ALSOK 鈴木基久取締役常務執行役員

【執筆:フジテレビ 解説委員室室長 青木良樹】  

青木良樹
青木良樹

フジテレビ報道局特別解説委員 1988年フジテレビ入社  
オウム真理教による松本サリン事件や地下鉄サリン事件、和歌山毒物カレー事件、ミャンマー日本人ジャーナリスト射殺事件をはじめ、阪神・淡路大震災やパキスタン大地震、東日本大震災など国内外の災害取材にあたってきた。