鹿児島県の代表的な和菓子「軽羹(かるかん)」。製造する明石屋菓子店によると、原材料の確保が難しくなっているのだという。

鹿児島県の銘菓「軽羹(かるかん)」(提供:明石屋菓子店)
鹿児島県の銘菓「軽羹(かるかん)」(提供:明石屋菓子店)
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「かるかん」は、安政元年、時の藩主・島津斉彬公のお声掛かりで生まれた和菓子だ。

空気をたっぷり含んで蒸されるため、ふんわりと柔らかく、際立って白いのが特徴で、質実剛健の薩摩気質を映し出す郷土菓子として、永く人々に親しまれてきた。

原材料は“自然薯”と“米粉”と“砂糖”だけで、このうち確保が難しくなっているのが自然薯だという。

自然薯(提供:明石屋菓子店)
自然薯(提供:明石屋菓子店)

そんな中で1月28日付の南日本新聞に、自然薯の確保が難しくなっている現状を伝える新聞広告を掲載したのだ。

その内容がこちら。

自然薯、買います。

自然薯は当社の大切な原料ですが、鳥獣被害等により確保が難しくなっています。自然薯をお売りいただける方は、下記にお電話いただければ幸いです。

すると、この広告がTwitter上に転載されて拡散し大きな反響を呼んだ。

実は広告の掲載は今回で8回目

では実際、原材料である自然薯の確保が難しくなっている理由や、生産への影響はどうなのだろうか? 合名会社明石屋菓子店の代表社員・岩田英明さんに詳しく聞いた。

――広告が掲載されたのは「1月28日付の南日本新聞」?

はい。これが、8回目の掲載です。


――8回目ということは、これが初めてではない?

2021年11月14日が1回目の掲載で、2022年1月28日は8回目となります。

1回目:2021年11月14日
2回目:2021年11月16日
3回目:2021年11月22日
4回目:2021年12月1日
5回目:2021年12月9日
6回目:2021年12月17日
7回目:2022年1月22日


――新聞広告を出した理由は?

将来にわたり、自然薯の確保が厳しくなるとの予測のもとに、鹿児島・宮崎で自然薯をお売りいただける方にご連絡を頂きたいというのが理由です。


――地域を鹿児島、宮崎に限定した理由は?

理由は2つあります。

(1) 南日本新聞の購読者エリアを想定していたこと
(2) 当社の原材料供給エリアが鹿児島・宮崎であるため

明石屋本店(提供:明石屋菓子店)
明石屋本店(提供:明石屋菓子店)

――新聞広告の反響は?

1月28日に掲載されるまでの問い合わせは、鹿児島県内10件、九州管内1件です。そして1月28日以降の問い合わせは、鹿児島県内6件、九州管内2件、九州外5件です。


――その反響をどのように受け止めている?

南日本新聞に掲載しておりますので、鹿児島、宮崎からの問い合わせを数件、予測はしておりましたが、SNSの発信により、県外からこれほどまでに問い合わせがくるとは想像しておりませんでした。少し困惑しているのが現状です。

明石屋「今現在、ピンチなわけではない」

――そもそも、「自然薯」の確保が難しくなっているのはなぜ?

主に3つの理由があります。

(1)自然薯を山に掘りに行く方々(掘り子さん)の高齢化
(2)猪が自然薯を先に食してしまう(ただ、これは自然界としては当然)
(3)山林の開発により、自然の山が少なくなっている


――自然薯の確保が難しくなったのは、いつ頃から?

年により収穫量に差がありますが、4~5年前から減少傾向にあります。ただ、ここが一番重要で、SNSなどで「かるかんピンチ」といった言葉が見られますが、今現在、ピンチなわけではないんです。

今年、来年に向けての確保はしっかりできています。将来に向けて、情報を収集するためにも、この時期に広告を出すのが最適と判断した、とご理解ください。

※軽羹(出典:明石屋HP)
※軽羹(出典:明石屋HP)

――ということは現状、生産に影響は出ていない?

全く影響はありません。


――新聞広告の反響によって、確保が難しくなっている状況は改善された?

未来にわたり、確保が安定であるという保証はないです。自然薯は農作物ですので自然災害や気候により、収穫量に差が出る作物ですので、毎年、収穫を気にしながら、商売させていただいています。

この30年の間にも、2回ほど、かるかんの生産量を限定して、商売させていただいたこともありました。
ただ、「かるかん」は創業以来、当店を代表する菓子です。これまでもこれからも、「かるかん」を作り続けていく所存です。


Twitterで拡散し、話題となった「かるかん」製造会社の新聞広告。今回の取材で、将来を見据えた上での自然薯の確保が目的だったことがわかった。伝統的な和菓子が続くためにも、鹿児島県と宮崎県で自然薯を売りたいという人はぜひ連絡してみてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。