優れた技術や驚く製品を生み出す、新潟のモノづくりを紹介する特集「すごいぞ!新潟の工場」。今回は創業から110年を超える、新潟県長岡市の大原鉄工所にお邪魔した。

大原鉄工所 渡辺博さん
大原鉄工所 渡辺博さん
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大原鉄工所 渡辺博さん:
他社が目をつけないような弊社ならではのモノづくりを見て欲しい

ということで早速、人が気づきにくいニッチな分野で大躍進しているモノづくり現場に潜入。

世界でわずか3社のみ…世界の「雪上車」を支える

大原鉄工所 工場内
大原鉄工所 工場内

大原鉄工所では、なんと国内で唯一製造を手掛けている車両がある。それが「雪上車」だ。

国内で唯一製造 大原鉄工所の雪上車
国内で唯一製造 大原鉄工所の雪上車

日本で唯一、大原鉄工所が製造している雪上車のマーケットを見ると、実は世界中を見渡しても作っているのはドイツに1社、イタリアに1社、そして日本の大原鉄工所の3社のみとなっている。

大原鉄工所では今から70年前に雪上車の製造を開始以来、様々な状況で活躍する車両を生み出してきた。

小型雪上車「Caliber(キャリバー)」
小型雪上車「Caliber(キャリバー)」

スキー場、自衛隊、テレビ局 活躍する場所は様々

こちらの小型雪上車「Caliber(キャリバー)」は、物資・人員を運搬する目的で開発された雪上車。

主な納品先としては、スキー場、北海道や東北方面の電力会社、陸上自衛隊、航空自衛隊の他、テレビ局で雪山のアンテナの保守点検で導入されることも。

スキー場でゲレンデを整備する雪上車「FUZIN(風刃)」
スキー場でゲレンデを整備する雪上車「FUZIN(風刃)」

そしてこんな車両もある。真っ白な雪原の中に姿を現したのは、大原鉄工所製の雪上車「FUZIN(風刃)」。全長約10メートル、総重量10トンオーバーという、まさにモンスターマシンだ。

前日にどれだけ雪が積もっても、これ一台で最高のゲレンデに仕上げるという。また国内唯一のメーカーとして、日本の雪に合わせた雪上車づくりを追求してきた。

大原鉄工所 渡辺博さん:
一番大きな違いは、海外の氷河のような氷に合わせて開発されたマシンではなくて、日本の雪質に合わせた足回りになっているので、操作性も登坂能力も海外に負けない作りになっている

地球一過酷な環境に挑む!? その内部は

そして、大原鉄工所のアイデンティティともいえるこちらの雪上車は、なんと南極観測用の雪上車!

南極観測用の雪上車
南極観測用の雪上車

1967年に初めて採用されて以来、時には氷点下90℃に及ぶという世界一過酷とも言える極地での作業を支えている。

大原鉄工所 渡辺博さん:
南極の観測用に使うので、1000kmを2~3週間かけて走り、荷物を引っ張って観測する。内部は4~5人がこの中で生活できる居住スペースにもなっている

南極観測用雪上車の内部
南極観測用雪上車の内部
南極で稼働する雪上車の様子
南極で稼働する雪上車の様子

そして、運用から約30年が経った2021年10月、現地隊員からのリクエストなど受け、操作性や安全性をさらに追求した新型車両が完成した。

居住スペース空間を拡大 「バイオガス発電機」製造も

約30年ぶりの開発!最新型南極観測用雪上車「OHARA LAV」
約30年ぶりの開発!最新型南極観測用雪上車「OHARA LAV」

最新型の南極観測車両「OHARA LAV」は、 居住スペース空間の拡大や機能、シルエット、カラーなどが大幅にアップデートされ、なんと2021年「グッドデザイン賞」の金賞にも選ばれた。

大原鉄工所 渡辺博さん:
背が高い方でも立ってすれ違える高さで、広さも大きくなっている。無駄なスペースをなくし、用途に応じてカスタマイズできるなど居住スペース空間を十分に改善した

「OHARA LAV」内部の様子
「OHARA LAV」内部の様子

また大原鉄工所では、現地でのメンテナンスや緊急時に対応するために、社員も南極観測隊の一員として同行している。

大原鉄工所 小島裕章さん・中西勇太さん:
約1年4カ月同行した。蜃気楼がよく見えたり、あとは南極の野生動物とか日本では絶対に巡り合わないものにたくさん出会えた

南極地域観測隊に参加した小島裕章さん(左)と中西勇太さん(右)
南極地域観測隊に参加した小島裕章さん(左)と中西勇太さん(右)

さらに大原鉄工所では、CO2削減や再生可能エネルギーに代表されるカーボンニュートラルを実現するための機器製造にも力を入れている。

生ゴミを原料とするバイオガス発電機
生ゴミを原料とするバイオガス発電機

そのひとつが「バイオガス発電機」。こちらの発電機では、生ごみを利用して電気をつくる仕組みになっている。

大原鉄工所の小型バイオガス発電機
大原鉄工所の小型バイオガス発電機

集められた生ゴミを投入すると、破砕選別機の中で原料となる有機物とビニール袋などに分別される。分けられた生ゴミは、発酵を経てメタンガスを発生することで発電の燃料に。またガスをつくった後の残った有機物は、肥料などとして再利用することが可能だ。

国内唯一のオンリーワン技術を持つ大原鉄工所は、地球規模の未来にも貢献する工場だといえる。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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