新型コロナウイルスの影響でホテルや飲食店から生鮮食品の需要が減る中、出来立てが美味しい沖縄の豆腐も大きな打撃を受けている。
このような状況でも売り上げを伸ばす豆腐店がある。逆境に挑み続ける三代目社長の戦略とは。

富をもたらす…豆で人生を豊かにする「豆富」

移動式の豆腐店といえば、池田屋。出来立てほやほや、あっつあっつの島豆腐を消費者の元に届ける。

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移動式販売を利用する人:
ここの「ゆし豆腐」。最初はスーパーでもどこでも売ってなくて、ここで始めて持ってきてもらって食べたらとても美味しくて、最近はここでしか豆腐は買わないっていうくらいになってる

斬新なアイディアと売り上げを生み出し続けるのは、三代目池田屋の代表取締役・瑞慶覧宏至さん。若くして、家族が経営していた豆腐店を三代目として引き継いだ。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
池田食品の経営理念って、「とうふ」っていう漢字は、「ふ」の漢字が「腐る」っていう漢字ではなくて「富」って書くんですよね。富をもたらすとか、豆で人生を豊にするために豆富という漢字を使っています

2015年から移動式販売を始め、新型コロナウイルスが猛威を振るった2年間で130%も売り上げを伸ばした。

父、兄の死で唐突に訪れた転機

成長し続ける企業を牽引する瑞慶覧さん、家族が経営していた豆腐店を継ぐまでは、豆腐店に携わるつもりは全くなかったと言う。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
もともと幼少期時代って、豆腐がすごく嫌いだったんですよね。僕たちの親って、エプロンつけて長靴つけて、帽子被って製造するじゃないですか。幼少期やっぱり恥ずかしいってことで、豆腐屋になりたくないなと思っていたんですけど

福岡で過ごし、豆腐店とは無縁の生活を送っていた瑞慶覧さん。転機は唐突に訪れる。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
父親が病気で亡くなったちゃったんですよね。その後に兄貴が2代目を引き継いで、そのまま2代目としてやってたんですけど、兄も不慮の事故で亡くなっちゃたんですよ。
僕、福岡の方で仕事をしていたんですが、母親が豆腐屋を閉めようかなという思いを聞いて、育ってきた環境が豆腐屋さんだったので、豆腐屋としての恩返しではないですけど、豆腐屋に恩返しをしたいという思いで引き継ぎました

売れ残りの返品問題…スーパーに頼らず移動式販売に

沖縄に戻り、豆腐店を引き継いだ瑞慶覧さん。当時の経営状況は決して良いものではなかった。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
かなり厳しかったですね。経営状況、財務状況もずさんで、立て直しも図れるかどうかも分からない状況だったんですよ

経営状況を改善しようと考え、辿り着いた先には、出来立ての豆腐をスーパーに卸して消費者のもとに届けるという方法を取ることで、売れ残って返品される商品が多くなるという問題があった。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
大きいところで返品率50%とか。朝早く作った豆腐が、半分捨てられるっていうのがすごいショックだったんですよ。年間っていうか返品額としては1300万円くらいは捨てていたので、どうにもこうにも、スーパーさんに頼っていたらできないなと思って

そこで大きく舵をきり、始めたサービスが豆腐の移動式販売。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
軽ボックスっていうんですかね、あれに発砲スチロールを積んで、最初はラッパの音を鳴らしながら、一軒、一軒ピンポンを押して、「豆腐屋なんですけど豆腐いかがですか?」っていう手売りをしながら、徐々に広げていったのが6年前位ですかね

この移動式販売が功を奏し、中城村と那覇市の新都心の2つだけの販売エリアから、南は糸満市、北は石川までにも拡大し、トラックは1台から8台にまで増えた。

緊急事態宣言にも新サービス「サブスク」が伸びる

瑞慶覧社長は、攻めの姿勢を崩すことはなかった。2020年5月に1回目の緊急事態宣言が始まった瞬間から新たなサービスを打ち出し、さらなる売り上げをたたき出す。新たな一手が豆腐の定期購入、いわゆるサブスクだ。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
定期購入っていう形で自宅にボックスを設置して、それで1週間に1回注文書と一緒に商品を置かせてもらうっていう、宅配ボックスみたいな形で5月にリリースしたんですよ。月額で引いていくみたいな形でサービスを提供したのが、すごく伸びましたね

月額3000円以上で豆腐を頼み放題のサービスを始め、2年間で60世帯に利用されるようになった。

豆腐のサブスク利用者:
お豆腐専門の宅配ボックスっていうのはとても珍しいので、メリットとしては留守でもいつも必要なお豆腐が買えること。コロナもあって、なるべく人と触れないようにとか、スーパーとかも人が多かったりするので、それで家で注文して届いてくれるっていうのは、とても助かる

新型コロナウイルスの影響でできないことが増える中、できることを模索し続け、顧客のニーズにこぎつけた瑞慶覧さん。挑戦し続ける原動力を聞いた。

三代目池田屋 瑞慶覧宏至 代表取締役:
豆腐屋になりたくないなと思っていたんですけど、今 実際に豆腐屋の代表になって、豆腐ってやっぱり格好良いなと思って。沖縄のソウルフードじゃないですか。ゆし豆腐とか島豆腐とか、プラス健康の商材。この2つが合わさっている職業ってあんまりないなって思ってて、これをもっと広めていきたいなと思って、大豆を加工して色々提供しています

豆富で消費者の人生を豊かにする。その強い思いが成長の秘訣なのかもしれない。

(沖縄テレビ)

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