障がいを抱える人も、座ったままスキーが楽しめる「デュアルスキー」。今シーズン、志賀高原のホテルも導入した。「我が子と一緒に」という母の思いを出発点に、誰もがスキーを楽しめる環境を目指している。
背もたれ付きの椅子にスキー板
ゲレンデをさっそうと滑る「デュアルスキー」。背もたれ付きの椅子にスキー板がついていて、後ろの「パイロット」に操作してもらいながら、座ったままスキーが楽しめる。
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障がいがある人でも気軽に滑走でき、近年、長野県内でも導入が進んでいる。志賀高原の丸池スキー場に隣接する「丸池ホテル」も、クラウドファンディングによる資金調達や県の補助で今シーズンから導入した。
丸池ホテル・池上惠光さん:
2021年はコロナの影響で導入することができなかったのですが、今季は晴れて導入することができ、本当に良かったと思います
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家族でホテルを経営する池上惠光さん。デュアルスキーに特に乗ってほしい人がいた。
15歳になる長男の将太さん。体はほとんど動かせない。
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食事のトレーニングを続け、学校行事にも参加
すやすや眠る、赤ちゃんだったころの将太さん。2598グラムで生まれ、何事にも興味を持つやんちゃな子だった。
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しかし、1歳の誕生日の3日前に突然、けいれんと意識障害を起こす。3週間後にようやく目覚めた将太さんは体を動かすことができず、ただ泣くばかり…。ヘルペスウイルスによる「急性脳症」だった。
丸池ホテル・池上惠光さん:
あのときは「こんなの将太じゃない」って思っていて、もう本当にどうしたらいいか分からなくて。どん底にいる感じで、将太と一緒に死んだ方がいいんじゃないかという気持ちが強かったです
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丸池ホテル・池上惠光さん:
でも、とある方に「どんな状態でも将太は将太だよ」って言葉をもらって。よくよく考えてみれば、そうだよなって。どんな形であれ、どんな姿であれ、中身が将太であることは変わらない。とても反省しました。将太と楽しい生活を送っていこうと、私にできることはなんでもしてあげようと
全身にまひの後遺症が残り、歩くことも話すこともできない将太さんだが…。
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小宮山アナウンサー:
笑顔が素敵ですよね
丸池ホテル・池上惠光さん:
でしょ?ヒマワリなんです、将ちゃんは。僕は皆のヒマワリなんだもんね
将太さんの笑顔のために母・惠光さんは、根気よく食べるトレーニングを続けた。
丸池ホテル・池上惠光さん:
将ちゃん、いただきます
口から接種するのは難しいと言われていたが、できるようになった。
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小学校の遠足は将太さんを背負って参加。スキー教室も股ではさんで一緒に滑った。
しかし、将太さんが大きくなるにつれ、背負ったり支えたりが難しくなった。そうした中、「デュアルスキー」と出会ったのだ。
丸池ホテル・池上惠光さん:
見たときは、こんなにすごいものがあるのだと、ただただ感動して。将太だけでなく他の障がいをお持ちの方、このデュアルスキーを必要とされる方にも利用してもらい、雪に感動して楽しんでもらえたらなという思いが、ものすごく強くなりまして
池上さんの兄・晴隆さんがパイロット
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この日が将太さんの今シーズン初滑り。
丸池ホテル・池上惠光さん:
行く?きょうは誰とスキー行く?ママ行きます!
![リフトに乗車](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/3/700mw/img_33a5ece80bbc00c9d1673bb438dee3fb229926.jpg)
デュアルスキーはリフトにも簡単に乗せられ、人を乗せたまま楽に運ぶことができる。
兄・児玉晴隆さん:
はい、じゃあ行ってきま~す
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新雪のゲレンデを滑走。でこぼこも、へっちゃらだ。
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惠光さんも一緒に滑る。
兄・児玉晴隆さん:
はい、到着
丸池ホテル・池上惠光さん:
将太、楽しかった?楽しかった人!よかったね、将太。また行こう!
![パイロットは惠光さんの兄・児玉晴隆さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/c/700mw/img_7cec9119679b0426b9d5cd69388053e8217573.jpg)
パイロットを務めたのは、惠光さんの兄・晴隆さんだ。
兄・児玉晴隆さん:
大した話してない…バカ言い合ったり、アホな妹なので(笑)
![池上惠光さんと晴隆さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/d/700mw/img_fdc2acc06cfa1670d4fc57c1662eb4af195851.jpg)
丸池ホテル・池上惠光さん:
アホな兄なので(笑)。でも頼もしい兄です、なくてはならない存在です
兄・児玉晴隆さん:
何も出ません
母と子を見守ってきた晴隆さん。進んでパイロットの資格を取得した。
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兄・児玉晴隆さん:
障がい者だからスキーができない、健常者とは違うことをやらされることが、ちょっと残念に思うので。できれば障がい者も健常者と一緒に雪の上を滑ったり、そういうことができるよう、いろいろサポートしていきたい
アクティビティを楽しんで、世界を広げてほしい
お年寄りや雪に触れたことのない外国人にも楽しんでもらえるデュアルスキー。小宮山アナウンサーも体験した(※許可を得て、カメラで撮影しながら滑っています)。
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小宮山アナウンサー:
初めてのデュアルスキー、よろしくお願いします
兄・児玉晴隆さん:
はい、じゃあ行きまーす
小宮山アナウンサー:
ちょっと待って、けっこう高いかも
兄・児玉晴隆さん:
はい、曲がりまーす
小宮山アナウンサー:
楽しい。高さがあるので、ゆったりと志賀高原の自然を楽しむことができます。わあ、すご~い、ジェットコースターみたい!爽快感がものすごくあって、背もたれにカバーがしっかりされているので、安定感がありますね。初めて乗ったんですが、はまっちゃいそう。すごく楽しかったです
![デュアルスキーを体験](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/f/700mw/img_9f1214b0c815cc63c4891cf4395b9b52113267.jpg)
惠光さんも近くパイロットの資格を取得する予定。3日前までに電話で予約をすれば体験でき、丸池ではデュアルスキーを楽しむ光景が増えそうだ。
丸池ホテル・池上惠光さん:
こういう自然の中での活動、出かけるというのは、障がい者にとってはなかなか難しいですよね。でも人出と機材があれば、どこでも行けるということを将太と実体験していますので、無理だなとあきらめるのではなく、まず私たちに声を掛けていただいて、協力できることは協力して、一緒にアクティビティを楽しんで、世界を広げてほしい。お山においでって、言ってあげな、将太。楽しいよって
(長野放送)