自民党新型コロナウイルス感染症対策本部座長の田村憲久前厚労相は23日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、急拡大するオミクロン株の1日あたりの新規感染者数に関し、「1日10万人で収まればいいほうだと思う」と述べた。

統計学が専門の土谷隆教授(政策研究大学院大学)が、東京で現在のペースで感染拡大が続いた場合、2月8日時点で濃厚接触者が約143万人に上るとの試算を出したことに関し、田村氏は「(新規感染者数が)1日10万人なら(濃厚接触者数は)さらに増えるかもしれない」と述べた。東京都の人口は約1,401万人(2021年11月11日時点)で、10人に1人が濃厚接触者になる計算だ。

こうした事態を受け、田村氏は、社会活動が停止する可能性があるとして、エッセンシャルワーカーなどの濃厚接触者の待機期間について、今よりも基準を緩和する準備をするよう厚生労働省に伝えていることを明らかにした。

埼玉県の大野元裕知事は、オミクロン株の感染力の強さに危機感を示し、医療従事者など県内のエッセンシャルワーカーに対し、濃厚接触者にならないようにテレワークが困難な職場でもできる限りテレワークを進めるよう呼びかけた。また、医療従事者の家族に対する3回目のワクチン接種の前倒しを進めるよう、政府に要請していると説明した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行(キャスター・フジテレビ政治部長兼解説委員):
オミクロン株の拡大を受けて、田村氏は先日、一日の新規感染者数が10万人に上ってもおかしくないと発言した。いつ頃を想定しているか。また、そこからピークアウトするとの見通しか。

田村憲久氏(前厚労相、自民党コロナ対策本部座長):
それは専門家でもなかなかわからないと思う。科学的ベースではないが、欧米を見ると3倍から10倍、多いところではフランスの十数倍までピークが増えている。日本のピークは8月21日の2万6,000人弱だ。当然その4倍ほどに達してもおかしくないので、1月11日の自民党コロナ対策本部の会議でそういう話をした。10万人で収まればいい方だと今思っている。

梅津弥英子(キャスター、フジテレビアナウンサー):
東京の濃厚接触者に関する試算を見てみたい。統計学が専門の土谷隆教授(政策研究大学院大学)によるシミュレーションで、東京で現在のペースで感染拡大が進んだ場合、2月8日に濃厚接触者が143万人に達するという。つまり東京の人口の10分の1が濃厚接触者になる可能性があるということだ。土谷教授は、今のまま濃厚接触者の待機が続くと、社会機能がマヒする恐れがあると警鐘を鳴らしている。

松山キャスター:
東京の10人に1人が濃厚接触者認定を受ける可能性があるとの試算。社会経済活動が回らなくなる危惧がある。

田村前厚労相:
1日10万人の新規感染者が出たとして、濃厚接触者はおよそ4倍。本人に合わせると50万人だ。それが10日間で500万人ということになる。

松山キャスター:
濃厚接触者は一日一日積み上がっていくから、トータルで(東京だけで)143万人となるという。

田村前厚労相:
(新規感染者が)1日10万人なら、(濃厚接触者は)さらに増えるかもしれない。

松山キャスター:
(待機期間の)基準を変えないと、社会が回らなくなってしまう。

田村前厚労相:
自民党コロナ対策本部の会合で、どこかでトリガーを引かなければいけない場面が出てくると厚労省の担当者に伝えた。社会活動が停止してしまうから、その時には今よりもさらに基準を緩め、濃厚接触者が毎日検査をして陰性なら働いてもらう。検査能力はあるのか、という話になるが、そういうことを考えなければならない時期がくるかもしれない。準備だけはしておいたほうがいいと伝えた。

梅津キャスター:
2月8日というとあまり時間がない。

田村前厚労相:
本当にそうだ。ただ、物理的にどこまで濃厚接触者を追えるかという問題もある。本当に1日10万人の新規感染者が出たときに、ひとりずつ全て濃厚接触者を追えるのか。保健所としてできるのか。理屈ではそういうことも起こり得る。

松山キャスター:
濃厚接触者がどんどん増えていく状況に、基準を変えないと社会が回らないのではないかとの見方について、大野知事はどう考えるか。

大野元裕氏(埼玉県知事):
それは大いにありえると思う。専門家に話を聞くと、抗原検査を行うことで一定程度担保できるという。エッセンシャルワーカー、例えば、医療関係者、医療従事者らが濃厚接触者になると治療もできない、検査もできない、という事態になる。そのため、埼玉県では先々週ぐらいにとにかく厳しい職場においてもテレワーク進めてほしいと(要請した)。濃厚接触者で仕事ができないのではなく、最初からしっかりと(テレワークで)分けること(を要請した)。それから医療従事者等の家族の(3回目の)ワクチンの前倒し接種をぜひ早く進めてほしいと国に要望している。家族が感染すると、医師や医療関係者が職場に出てこられなくなってしまう。実際には、政府は基準変えたが、(まん延防止措等重点置を先行適用している)沖縄に聞いたところ、政府の基準にそって(医療従事者が)どんどん職場復帰しているところはほぼないとのことだ。院内感染などがやはり怖いという。そう考えると、(テレワークなどで)事前にしっかり準備して、(感染拡大を)止めるという方が正しいと思う。

橋下徹氏(コメンテーター、元大阪市長、弁護士):
それなら検査についても優先順位をつけなければいけない。最後は政治の責任だ。医療現場ではとにかく全検査だが、全体を見てバランスをとるのは政治家の役割だ。2年間コロナ対策をやってきて、政治家の役割と専門家の役割は徐々に見えて来たが、未だにはっきりしない。医療現場や感染症の専門家からは「感染を抑えろ」という声は出てくるが、感染症を完全に抑えようとすると、社会的に様々な弊害が出てくる。最後は政治家がバランスを取らなければいけない。田村さん、言いにくいが、最終的にはやはりコロナでの死亡者、重症者をどこまで受け入れていくのかという当初の議論を政治家が決めないといけない。医療現場はひとりでも多く助けに行かなければいけないと思っているから。まん延防止等重点措置については、専門家はデータに基づいて、これぐらいの効果しかないよと。だけど、政治家はもう手がないものだから、取りあえずやったふりではないが、これしかないからこれをやるのだと、政治家の判断だと。専門家の意見でまん延防止措置をやっているのか、効果はよくわからないが、やる手がないからやるという政治家の判断なのか、この辺りもはっきりしない。ここを政治家と専門家でしっかりと判断、領域のすみ分けをしなければいけない。

田村前厚労相:
検査については、無症状者を含め全国民をやっても感染を抑えられることはない。ただ、様々な不安を解消するのに余裕があるのなら、無症状者もやったほうがいい。しかし、いよいよより(社会が)動かなくなってきた時は、やはり症状のある人を中心にやる。今、エッセンシャルワーカー、例えば、医療従事者は濃厚接触者となっても、次の日には検査で陰性なら待機解除となるはずだ。それを今度、介護まで広げようという話だ。そういう優先順位はきちんとつけないといけない。専門家と政治家との関係でいえば、(厚労省)アドバイザリーボードの人たちからは様々提言をいただく。最終的に判断するのは政治家だ。政治家が今までも判断してきたし、岸田内閣でもしっかりやってもらいたい。

橋下氏:
まん延防止等重点措置は、政治家がある意味やったふりを示すような形でやっているという意味か。

田村前厚労相:
各知事らから要望が来る。その要望を聞いた上で最終的には政府が判断した。

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