新型コロナウイルスの感染拡大により、未だ開幕の目途が立たないプロ野球。そんな中、千葉ロッテマリーンズの公式インスタグラムに過去のレプリカユニフォームで作られたカモメ柄の入った黒いマスクの写真が公開された。「かっこいいー!」「買わせて欲しい」ファンからは商品化の要望が多数寄せられるこちらのマスクは清水将海1軍バッテリーコーチ(45)の奥様と「ジョニー黒木」ことOBの黒木知宏氏(46)の奥様が「新型コロナウイルスの収束」と「プロ野球開幕」を願って作ったという。

球団提供
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黒木氏と清水コーチは現役時代にはバッテリーも組み、1998年にはプロ野球史上ワースト記録となる18連敗を経験した。

現役時代に黒木氏とバッテリーを組んだ清水コーチ
現役時代に黒木氏とバッテリーを組んだ清水コーチ

ロッテは98年に出口の見えないトンネルをさまよっていた。7月7日、七夕のオリックス対ロッテ戦。「七夕の悲劇」は起こる。グリーンスタジアム神戸には平日の5位対6位の試合にもかかわらず、2万人の観衆が集まり、テレビで緊急生放送されるなど、異様な盛り上がりを見せていた。

16連敗中のロッテは3対1とリードし、先発の黒木氏が9回裏オリックスの攻撃を迎えていた。
球威は衰えず、先頭のイチローを空振り三振、ニールにライト前ヒットを許すも、谷佳知をファウルフライで2アウト。続く5番・プリアムを2ストライクと追い込む。

「あとアウト1つ…」の中の139球目だった。内角低めのストレートをプリアムがまさかの同点2ラン。黒木氏はそのままマウンドに崩れ落ち、投手交代。ベンチ裏で号泣した。

そして同点で迎えた延長12回裏にオリックスの代打・広永益隆が満塁サヨナラホームラン。この時にキャッチャーマスクを被っていたのが現コーチの清水氏だ。

9回あと1球のところでも勝てず、これで17連敗…さらに翌試合で18連敗。コロナ禍のような出口の見えない長いトンネル…それでも、黒木氏はその年に13勝をあげ、最多勝と最高勝率の2冠に輝いた。「魂のエース」と称された右腕は苦難と我慢を乗り越えた先にあるものを知っている。

外出自粛「ステイホーム」の大型連休…緊急事態宣言の延長…未だ開幕の目途の立たないプロ野球…それでも、明けない夜はない。各チームともファンとのSNSでの交流を通じて絆は強くなっている。アスリート、ファンの願いが届き、再びマスクを外せるその時、スタジアムはひときわ大きな歓声に包まれるだろう。

(フジテレビ・加藤忍)

加藤忍
加藤忍

早稲田大学卒業。フジテレビ入社。スポーツ局すぽると!ロッテ担当、ヤクルト野球中継などを経て現在は報道局兼スポーツ局。