2022年1月8日以降、岩手県内各地で行われた成人式。
このうち、「成人の日」に式が行われた葛巻町では、町の民間企業で働く技能実習生のベトナム人の女性が、憧れの着物姿で出席した。
「日本の文化に触れてみたかった」ベトナム人女性が着物姿で成人式に
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
楽しみですが、緊張する。どきどきしている
1月10日に開かれた葛巻町の成人式に、1人の外国人女性が会場を訪れた。
ベトナム国籍のクァック・ティ・トゥ・フォンさん(21)は、町の成人式に外国人として初めて出席した。
フォンさんは、特別な思いで、この日を迎えた。
ベトナムにある日本企業の縫製工場で働いていたフォンさんは、技能実習生として2020年に来日した。2023年3月までの期限付きで、葛巻町にあるグループ会社の工場に務めている。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
(仕事は)企業向けユニホームのパンツの縫製です。服が好きで、手に職をつけたかった
工場では、最年少ながら、丁寧な仕事で会社から信頼されている。
ミドリアパレル中央 坂本博之工場長:
縫いも速いし、不良にも自分で気づく、品質に気配りができる。周りを笑顔にしてくれる存在だと思う
会社近くのアパートで、4人の技能実習生と生活しているフォンさん、この町が大好きだ。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
(葛巻の)人は、みなさん優しいし、親切。四季もきれいです
しかし、来日当初は苦労もした。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
(日本は)言葉が難しい。雪がいっぱいで大変。友達と家族に会えないのが寂しい
8年前に病気で父を亡くしたフォンさんは、ベトナムに住む5人の家族を支える大黒柱で、給料の9割を仕送りに充てている。
日本語の勉強も熱心で、言葉を覚えようと見ていたニュースで、成人式の存在を知った。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
テレビを見て(知った)。皆さん、いろいろな着物できれいだった
ベトナムの成人年齢は18歳。
母国とは違い、20歳でお祝いする文化に憧れを抱いたという。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
ベトナムには成人式がない。日本の文化に触れてみたかった。着物も着てみたかった
そして2021年6月、住所と年齢が対象だったことから、フォンさんのもとに町から成人式の案内状が届いた。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
(案内が届いて)うれしい気持ちだった。楽しみに感じた
町の人が協力して着付け
成人式当日。午後の式を前に、いつもと少し雰囲気が違うフォンさんの姿があった。
勤務先の工場長の奥さんや町の人が協力して、着物を着付けてあげることになったという。振袖ではないが、町の女性職員が持っている着物から、フォンさんが自分で選ばせてもらった。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
とても感謝しています。ありがたい
工場長の妻 坂本絵理さん:
いつもにこやかで、ふわっとした印象だけど、きょうはきれいな女性になっているなと思う
初めての着物は少し窮屈だったが、鏡に映る自分の姿に、思わず笑みがこぼれた。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
着物を着られてうれしい。(帯の)ひもがすごくきれい
「着物がきれいだった」憧れの文化に触れ笑顔も
そして迎えた成人式。
葛巻町 鈴木重男町長:
晴れて成人された皆さんに、心からお慶びとお祝いを申し上げます
町の人の協力のもと、日本で大人の仲間入りを果たしたフォンさん。周りは知らない人ばかりで少し不安もあったが、最後は笑顔を見せてくれた。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
いろいろな皆さんの着物が見られて、きれいだった
(Q.大人になったらやりたいことは?)
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
お酒を飲む
この日も胸にあるのは、大切な家族の存在だ。
クァック・ティ・トゥ・フォンさん:
「きれい」「かわいい」と(家族は)言うと思う。(夢は)家族と一緒に旅行に行きたい。日本の有名なところに行きたい
ベトナムから4000km離れた日本で、憧れの文化に触れたフォンさん。
ふるさとに胸を張って帰る日を夢見て、大人としての道を一歩ずつ歩んでいく。
(岩手めんこいテレビ)