トランプvsクリントン再び?

年が改まったばかりに再来年の話で恐縮だが、次の米国大統領選はトランプ対ヒラリー・クリントンという2016年の対決を再現することになりそうだという観測がワシントン周辺で広まっている。

この記事の画像(9枚)

こうした見方に火をつけたのは、ワシントンの政界情報に特化したニュースサイト「ザ・ヒル」で、2021年12月15日の次のような見出しの記事だった。

ヒラリー2024?民主党内の候補者の競合を見ると、彼女が民主党にとって最も希望が持てる候補者かもしれない

クリントン氏以外は「イマイチ」

記事はまず現職のバイデン大統領について、I&IーTIPPの世論調査では同大統領の二期目を望む有権者が22%しかおらず、民主党支持者に限っての世論調査でも二期目を望むのは36%に過ぎないことを挙げる。

そこで、カマラ・ハリス副大統領ではどうかということになるが、同副大統領の支持率はUSAトゥデー紙の調査では28%に過ぎない。他に今名前が上がっているピート・ブティジェッジ運輸長官やバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)やエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)らも「イマイチ」だと記事は分析する。

ハリス副大統領
ハリス副大統領
ブティジェッジ運輸長官
ブティジェッジ運輸長官
サンダース上院議員
サンダース上院議員
ウォーレン上院議員
ウォーレン上院議員

そこで浮上するのがヒラリー・クリントン元国務長官だと「ザ・ヒル」は指摘する。

彼女は74歳でバイデンに比べて若い。加えて、5年前にトランプに敗北を喫したのは、トランプとロシアの陰謀のせいだったと言い続けている。

幻の勝利宣言を“再現”

さらにクリントン元長官は2021年12月9日、オンラインの高等教育サイト「マスタークラス」で2016年に勝利したら演説するはずだった勝利宣言をビデオで再現した。

勝利宣言を読み上げるクリントン元長官
勝利宣言を読み上げるクリントン元長官

クリントン元長官​:
国民の皆さん。今日あなた方は世界に向かって米国という国はお互いの相違によって定義される国ではないこと。また対決の国ではないというメッセージを世界に向かって発信しました。米国の夢は全ての人々を包括するのです。

クリントン元長官は、2016年11月8日の夜に行う予定だった演説を淀みなく再現したが、これが何を意味するのかワシントン政界は騒然とした。

5年前の演説を再現するのは笑い物になったかもしれないが、今回はクリントンという銘柄がまだ通用するかどうかを探る観測気球のようなことになった。

「ザ・ヒル」の記事はこう分析して、ヒラリー元長官は出馬に意欲満々だと伝えた。

その後、英国のデイリー・メール紙も「またヒラリー対トランプか?」と外野から囃し立てて、この話はワシントンの情報通の間で格好の話題になっているとか。

トランプ氏「また彼女をやっつけるのは楽しみだ」

一方のトランプ前大統領は、2024年の候補として共和党内で60%の支持を得ており(I&I-TIPPの調査)現状では再出馬は間違いないように見える。FOXニュースの番組で、クリントン元長官との対決について問われるとこう答えた。

 ヒラリーがまた出てくるかどうか分からないが、また彼女をやっつけるのは楽しみだ

次の大統領選までにはほぼ3年あるので候補者選びもこれから紆余曲折があるだろうが、トランプ前大統領が独走中の共和党の場合はともかく、党内が揺れ動く民主党の場合はクリントン元長官の動きが本人の出馬を含めて候補者選びに大きく影響するのは間違いないだろう。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。