「子ども」運賃・料金 値下げの動き
2021年後半、鉄道や航空業界では子ども運賃に関する”驚き”の発表が相次いだ。東海道新幹線「のぞみ」では、大人と一緒に利用する子どもの料金を実質無料に。会員限定やチケットレス乗車などいくつかの条件があり、12月19日までの期間限定ではあったものの、親子連れにとっては嬉しいキャンペーンとなった。

また、主に千葉県内を走る北総線では、2022年10月から通学定期運賃を大幅に下げる施策を発表。例えば、京成高砂から印西牧の原駅間では、1カ月分の通学定期が、現在の1万4990円から4990円となる。1万円もの値下げだ。6カ月定期では、現在の8万950円から2万6950円に。値下げ率は64.7%となる。
狙いはずばり、子育て世帯・若い世代を沿線に呼び込むこと。北総鉄道は「コロナなどの社会情勢もあり、値上げをする事業者もある中、好意的な声が寄せられている。」としている。

航空業界では、ANAが大人と一緒に乗る子どもを対象に、抽選で往復の運賃が1000円になるキャンペーンを、2022年1月から、土日祝日に期間限定で実施。北海道の千歳や沖縄といったこれまでも家族旅行で需要の高い路線に人気が集まっているという。
子ども運賃「一律50円」のインパクト
各社で相次ぐ子ども運賃の値下げやキャンペーンの中、最もインパクトが大きかったのは小田急電鉄の一律50円。2022年春から、ICカードを利用する6歳以上12歳以下の小学生の運賃が、全区間一律で50円になる。期間限定ではなく、IC運賃を大人運賃の半額以下で、一律に定額化するのは、鉄道会社で初の取り組みだ。この思い切った施策について担当者に聞いてみた。
Q今回の施策の一番の目的は?
小田急電鉄交通企画部・飯田尚宏氏:小田急線沿線に愛着を持って頂いて将来も居住地として選んで頂きたいと思っています。

子育て世代・若い世代の誘致は、どこの鉄道会社・航空会社でも、同じ思いだ。一方で、小田急におって、もう一つの大きな狙いがあるという。それが「沿線各地の潤い」だ。
小田急電鉄交通企画部・飯田尚宏氏:観光だけではなくお買いもの、習い事、日常のイベントに行くのも行きやすくなる。親子でのお出かけをより身近なものにして頂ければ・・・。
しかし、新宿―小田原駅間の子どもIC運賃は現在445円。1回の乗車で395円収入が減ることになる。小田急電鉄は今回の取り組みによる減収は2億5000万円と試算している。減収の心配や社内からの反発はなかったのか。

小田急電鉄交通企画部・飯田尚宏氏:短期のイベントにする案もあがったが、ずっと寄り添っていきたいという思いがある。子育て応援ポリシーとして方向性を示し、その姿勢のシンボリック的なものが50円。決意表明のような位置づけです。今後は、より子育てしやすい沿線地域へと環境整備していきたい。
2022年 「子育て世代」誘致の動きが加速へ
今回の小田急の取り組みについて、国土交通省の担当者は、「思い切った施策で他社も驚いているようだ」とした上で、「人口減少が避けられない中、路線の利用者を増やすために、色んなサービスが模索されるだろう」と分析する。

コロナ禍が続いた2021年、鉄道・航空業界は利用者、収入の減少などから厳しい状況が続いた。これまでと同じように乗ってもらえることが当たり前ではなくなっている危機感からか、各社、試行錯誤しながら新たな取り組みを模索しているように感じる。
一方、利用者にとっては運賃の値下げのみならず、新しいサービスや普段の移動に付加価値をつけてくれるのはありがたく、双方にとってウインウインになると感じる。2022年を迎え、こうした動きは、さらに加速するだろう。
(フジテレビ社会部・国交省担当 滝澤教子)