新型コロナウイルスが猛威を振るい、全国でも最悪の感染状況となった沖縄。いくつもの厳しい局面に直面、命の選別をも迫られた医療現場の一年を振り返る。

「急な入院は今でもある」無くせないコロナ病床

県立中部病院で新型コロナウイルス対策を統括する椎木創一医師。

県立中部病院 椎木創一医師:
流行の極期の時は、2つの病棟が全部コロナ患者さんを診させて頂くことになっていた状況ですね

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県立中部病院 椎木創一医師:
急に入院という話は今でもあるわけで、病床を無くすわけにはいかない

5月に4度目の「緊急事態宣言」、6月「デルタ株」初確認

玉城知事:
県内の感染状況、医療体制のひっ迫度を考えると緊急事態宣言を発する域に達している

2021年5月19日
2021年5月19日

県内では、年度末やゴールデンウィークなど、人出の増加に伴って流行が拡大し、2021年5月には実に4度目となる緊急事態宣言が適用された。

一方で、3月からは収束の切り札と言われたワクチンが、重症化のリスクが高い高齢者から始まり、その後に小規模離島、一般へ進められていった。
しかし、私たちはその後、変異ウイルスの脅威を知ることとなる。

6月24日、県内で初めて確認されたデルタ株。瞬く間に置き換わりが進んだ。

県立中部病院 椎木創一医師:
デルタ株が元々、人に移しやすくなったっていうのは、ウイルスの出す量が非常に多かったという事が分かっているわけですね。一般の前の株と比べると、10倍から20倍じゃないかって言われるようなランクでしたね

8月に過去最多の感染者数確認・・・命の選別迫られる

7月下旬からは、1日当たりの感染者の数が連日過去最多を塗り替え、8月9日には最も多い1日当たり809人の感染者が確認された。医師たちは命の選別を迫られていた。

県医療コーディネーター 佐々木秀章医師:
県内にありとあらゆる医療資源を集めて、何とか受け入れているわけですけど、これ以上は次の手が浮かばないので、今日感染した人たちが入院が必要となった時は、あなたはもう入院するところないですよって言いたい

浦添総合病院 原國政直看護師:
キャパオーバーしている状況になるけど、僕たちが断ったらこの人どうなるんだろうって。日々どうにかして、今日を乗り切ってみようをずっとやっているんですよ

県医療コーディネーター・梅村武寛医師:
重症者の数が僕たちは一番気になる。今3つしかない、今日は一晩、この3床で生き延びるって言ったらおかしいけど、これを超えたときにはまた一つ考えなきゃいけない

県は、コロナ患者を一時的に受け入れる入院待機ステーションを開設したが、それだけでは追い付かず、自宅療養者へ酸素濃縮器を貸し出す対応に踏み切った。

県立中部病院 椎木創一医師:
そういったことをしないと、どうにも止まらないっていう事態が起きていましたね

入院待機中の男性が自宅で死亡

しかし、恐れていた事態が起きた。8月、新型コロナウイルスに感染して入院待機中だった男性が、自宅で亡くなっていたのが発見された。男性は基礎疾患を持っていて、入院による治療が必要だったが、病床のひっ迫により自宅療養中だった。

自宅療養者と連絡が取れなくなった場合、24時間以内に保健所の職員が自宅を訪れるという基準があったが、この時は保健所も多忙を極め、男性の自宅への訪問は約40時間後となった。

亡くなった男性の姉:
保健所から、その日でも10人以上連絡が取れない方がいたと、物理的に無理ですよね。限られた時間の中で出来ないことは、出来なかったかったんだろうと。涙ぐんでいました。保健所の方も声を詰まらせて教えてくださった

こうした状況に加え、医療機関や施設でのクラスターも相次いだ。うるま市の「うるま記念病院」では、入院患者や職員約200人が感染する大規模なクラスターが発生し、患者71人が亡くなった。院内は個室が無く、構造上ゾーニングなどの感染症対策を施すことが難しく、さらに他の病院の病床ひっ迫により転院させることが困難だった。

県立中部病院 椎木創一医師:
みなさんの中では医療が受けられない、これを一つの医療崩壊というのであればそうだと思うんですけど、今回の流行でみなさんも強く感じられたんじゃないかと思いますね

1人1人が感染対策の実践を

県内では12月に入り、感染力が強いと言われるオミクロン株の感染が初めて確認された。

さらにキャンプ・ハンセン内では、感染者数が180人を超えるクラスターが起きているが、米軍は県が提案したゲノム解析に難色を示していて、オミクロン株が流行しているかどうか分かっていない。

こうした中で県内のワクチン接種率は、12月19日時点で1回の接種を終えたのは69%で、県が掲げた目標値の70%に未だに届いていない。流行の第6波が忍び寄る中、椎木医師はこれまで培ってきた感染対策を1人1人が実践することで影響を小さくする事が出来ると話す。

県立中部病院 椎木創一医師:
マスクであったり手指衛生であったり、人との距離の取り方、そういった形っていうのを、これはオミクロン株に関して確実に有効なわけですよね。大きな波を起こさずに、ほどほどのものに出来ると期待しています

これまでに約50,000人が感染し、398人が命を落とした新型コロナウイルス。(12月20日時点)
2022年も予断を許さない状況が続くことが予想されるが、私たちがこれまで培ってきた感染対策の実践が、沖縄を、そして医療現場を左右することになると言えそうだ。

(沖縄テレビ)

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