自民党の佐藤正久外交部会長と国民民主党の玉木雄一郎代表が19日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演し、政府が2022年2月の北京五輪・パラリンピックに政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を表明するよう主張した。

佐藤氏は、「日本の外交は人権について『協調と対話』を基本にすると言うが、中国が絡むと『無言と二股』になる。日本は人権よりカネかという疑念を持たれては絶対にいけない」と強調した。

そのうえで、「政府は政府高官を送らないと言っても、『外交的ボイコット』という言葉は使わず、『人権問題が理由』とも言わないと思う。『総合的に勘案して適切な人間を派遣した』と言うレベルだろう」とも指摘した。

玉木氏は、「今の中国の人権状況を日本は認めたという誤ったメッセージになるので、政府高官を送るべきではない」と述べた。

また、「今の中国の人権状況に対して、政府、国会が明確なメッセージを出していないことは問題」と指摘。

今国会でも対中非難決議を行えなかったことについて、自民党の責任に触れ、「腰砕け」と非難した。

佐藤氏は、「玉木氏の指摘の通りで非常に残念だ。議会がまず(対中非難)を決めてから、政府が態度を示す。それが普通の国」と述べた。

番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(元大阪市長、弁護士)は、中国の人権問題は五輪後も続くことを念頭に「五輪が終わったあとの外交はどうするのか。断交するのか」と指摘し、五輪期間中に限った外交的ボイコットのあり方に疑問を呈した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子(キャスター、フジテレビアナウンサー):
けさは北京冬季五輪に「外交的ボイコット」を表明する国が相次ぐ中、日本はどのような態度で臨むべきなのか。自民党外交部会長の佐藤正久さんと国民民主党代表の玉木雄一郎さんと議論をしていく。各国の動きをまとめた。中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由とするアメリカのほかオーストラリア、イギリス、カナダ、リトアニアなどが外交的ボイコットを表明している。一方、ロシアのプーチン大統領は五輪開会式への参加を表明。次期夏季五輪を控えているフランスは「政治化すべきではない」として外交的ボイコットに慎重な姿勢を示している。

松山俊行(キャスター、フジテレビ政治部長・解説委員):
日本は閣僚レベルの派遣は行わない方向で調整しているようだが、どういう態度で臨むかは正式には表明していない。日本が外交的ボイコットの態度表明を留保している状況をどう考えるか。

佐藤正久氏(自民党参院議員、党外交部会長):
(態度表明を)遅らせて得るメリットがあるのかと疑問に感じている。アメリカやオーストラリアが態度表明している以上、日本も人権の問題、日本人拘束、尖閣諸島への侵害と主権の問題からも「政府高官等を派遣しない」と明言すべきだ。特にウイグルの強制労働、強制的な結婚、強制的な不妊の問題に黙っていることは絶対におかしい。日本の外交は人権については「対話と協調」を基本にすると言うが、こと中国が絡むと「対話と協調」が「無言と二股」になってしまう。日本は品格から言っても、「人権よりカネか」と言われるのは本当不本意だ。経済的に世話になっているから人権については目をつぶるというような疑念を持たれては絶対いけない。特にわれわれにはひとつの大きなトゲがある。2008年の北京夏季五輪時の一連の流れを一度おさらいした方がいい。

梅津キャスター:
こちらが2008年北京夏季五輪をめぐる動き。

佐藤氏:
8月8日が北京五輪だった。その約半年前の3月にチベットのラサで大暴動が起きて、中国政府はそれを武力鎮圧した。多くの国が人権問題から外交的ボイコットをすべきだと議論になった。ところが福田(康夫)政権は人権に若干懸念はあるものの一生懸命開会へ向けて頑張っており、参加するとかしないとか言うべきではないと火消しに回り、5月には胡錦涛国家主席(当時)を日本に招いて天皇陛下に会わせた。つまり、ボイコットの流れを打ち消した。それでアメリカのブッシュ大統領も五輪開会式に行った。しかし、後にブッシュ大統領は「行くべきではなかった。後悔している」と。その反省に立てば、今回われわれとしては人権上も日本の主権上も態度を早急に明確にすべきだ。

橋下徹氏(番組コメンテーター、元大阪市長、弁護士):
僕も中国のさまざまな問題に言いたいこと山ほどある。ただ、外交的ボイコットと佐藤さんは言うが、五輪が終わったあとの外交はどうするのか。全部やめる、断交なのか。それともこの冬季五輪期間だけなのか。しかも五輪外交なんて儀礼的なもので実質的な意味はない。顔を合わせて酒でも飲むか、乾杯かぐらいの話だ。五輪期間だけ儀礼的な外交をとめて、五輪が終わったあとも外交をやめるのか。

佐藤氏:
外交をやめるなんて言っていない。当然、日中間には大きな懸案事項がある。私の出身の福島で言えば、福島の、あるいは東北地方の農産品の輸出規制の問題もある。外交課題はあり、外交交渉をやらないといけない。次は日本の外務大臣が中国に行く番だから、それはやるべきだ。

橋下氏:
では、冬季五輪期間だけ外交をやめるのか。

佐藤氏:
冬季五輪前の今、同じ価値観を持つ多くの国々が外交的ボイコットと言っている。実際日本は外交的にアメリカやオーストラリアとこの問題をずっと議論してきている。そういう中でアメリカやオーストラリアが(政府関係者の派遣を)やめると言ったこの段階で、林外務大臣が北京に行くなどは時期的に全然違う。

松山キャスター:
玉木さんにも聞きたい。佐藤さんは、政府がもっと早く外交的ボイコットを決断し表明すべきだとの意見だが、玉木さんはどう考えるか。

玉木雄一郎氏(国民民主党衆院議員、党代表):
今の段階で政府の高官を送ることは誤ったメッセージ、つまり、今の中国の人権状況を日本は認めたということになるので、私も高官を送るべきではないと思う。その決断が今まで引っ張られ、国内でこういう論争になっていることが外交的に失敗しているのではないか。そもそも誰を送るか送らないかよりも、今の中国の人権状況に日本政府として、日本の国会として明確なメッセージを出していないことが問題だ。その明確な方針があって、では北京五輪にはこういう対応をしようという話が出てくるのだが、その根っこの方針で腰が定まっていないため、今の中国の人権状況に対する国会非難決議も結局今回も見送りになった。それも自民党内の(調整の)話で、今回もいわば腰砕けになって、明確なメッセージを出していない。その中で単に外交的ボイコットをどうするかということになっていること自体が非常に拙速だ。もう少しうまくできなかったのか。

佐藤氏:
まったくご指摘のとおりだ。人権状況については、多くの国ではまず議会がリードし、意思を示すものだ。今回、政府は政府高官を送らないと言っても、「外交的ボイコット」という言葉を使わないし、おそらく人権状況を理由とすることもないと思う。「総合的に勘案して適切な人間を派遣した」と言うレベルだろう。であればあるほど国会で「人権状況は問題だ」との決議をすることで、日本として人権について大きな懸念を有しているということが言えるわけだ。

松山キャスター:
自民党の茂木幹事長が「そのタイミングではない」と言って、今回の決議は見送られた経緯がある。

佐藤氏:
非常に残念だ。高市政調会長も同じ意見だと思う。議連の立場で申し入れたが「中身は良いがタイミングの問題だ」という話をされたようだ。前回の通常国会では、公明党との調整が十分でなく、(非難決議の)文言が出なかった。今回は調整が終わっていた。タイミングと言うと、政府が態度を決めてから議会が態度を決めるのは順番が逆だ。議会がまず決めてから政府が態度を示す。しかも、政府はおそらく人権が理由とは言わない。さまざま次のことがあるから、それは言わないほうが賢いと思う。それであればあるほど議会がまず先に立って環境を作り、その後に政府が決めるというほうが(いい)。普通の国はだいたいそんな感じだ。