“文通費”今国会成立は絶望的
国会議員の「第二の給与」と揶揄される月額100万円の文書通信交通滞在費、いわゆる「文通費」の改革は、臨時国会の目玉のひとつとして注目を集めた。ことの発端は、10月31日の衆院選で初当選した新人議員らに在職1日で満額の100万円が支給されたこと。国会議員の「特権」が問題視され、与野党ともに見直す姿勢を示した。
しかし、自民党が支給を日割りにする改革を主張するのに対し、野党側は日割りだけでなく使途公開なども求めたため、折り合いがつかず、膠着状態が続いている。今の臨時国会は12月21日で閉会するが、国会での文通費の見直し法案の成立は絶望的な状態だ。「決められない国会」での動きを振り返る。
「決められない国会」の裏の攻防
臨時国会が召集された12月6日、日本維新の会と国民民主党は、文通費の使途公開などを義務化する歳費法改正案を国会に共同提出した。両党の法案は、文通費を「日割り支給」とした上で、「使途の公開」と「未使用分の国庫返納」の「3点セット」を明記した他、新人議員らへの10 月支給分も返納や寄付を可能にする内容となっている。
1日遅れで立憲民主党も7日、歳費法改正案を単独で提出した。法案は、維新・国民両党と同様の内容だ。立憲と維新が国会対応で距離感があることもあり、ちぐはぐにも見える対応となった。そして最終的には、早期成立を目指すため、維新・国民両党が、立憲案に賛成する形で法案を取り下げた。
この記事の画像(6枚)一方、自民党の茂木敏充幹事長は、7日の会見で、「1ヶ月働いてないのに全額払われることを是正するには、日割り計算にすることだ。優先的に日割りをやる」と述べた。使途の公開については「日割り以上のことで合意できるなら異存はない。各党各会派の議論だ」と述べるにとどめた。自民党は、使途の公開には慎重な姿勢で、公開に応じる動きはない。
文通費の見直し法案には、国会ならではの“慣例”が大きな壁となっている。国会には、議員の身分に関わることは、与野党全ての会派が一致して採決をする慣例がある。与野党が合意した法案を全会一致で審議時間を短縮して成立させるのだ。
このため、与党だけで「日割り」のみの法案を成立させることは厳しい。与党は、野党側と協議して合意を得なければならない。だが、野党側は使途公開を含めた抜本的な改革を譲らず、膠着状態が続く。
国会終盤戦でも与野党の溝埋まらず
自民党の高木毅国対委員長は17日、野党との協議状況について、「まずは日割りからやってほしい。その他は、さらに協議を続けることでお願いしたいと伝えている」と述べた。
一方、立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長は17日、「3点をセットとして法案を提出し、与党の立場で、全党全会派がまとめられるように努力してほしいと申し入れてきた」と述べた。さらに、馬淵氏は、高木氏に国対委員長会談を申し入れたとした上で、「現時点では整わず」と述べた。
これについて立憲の幹部は「国対委員長が会談をしても平行線になったと思う。こちらの主張は一貫していて、自民党に対応を求めるしかないが、このまま(臨時国会での)動きはないだろう」とあきらめモードで語った。双方の溝は深い。
法案成立が困難な状況の中、日本維新の会の藤田文武幹事長は17日、FNNの取材に対し、「使途公開を求めたことが問題提起になった」と述べ、成立を目指す動きと並行して、党独自の取り組みも検討を進めていると強調した。
具体的には、「個人の口座で文通費を一元管理し、党のガイドラインに基づいて口座から支出を行い、支出分の領収書を公開する」案だ。さらに「1年間で口座の残高がある場合は、党を通じて歳費同様に被災地や医療関係者に寄付する」という。近く独自の改革案を取りまとめる方向だ。
また、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は17日の会見で、「まず野党第一党がどうするのか。与党と野党第1党がやらないなら、自ら率先してやっていくだけだ」と述べ、党独自の取り組みを示唆した。立憲に対する不信感も垣間見え、野党内も1枚岩とは言えない状況だ。
「日割り先行」か、使途公開まで含めた抜本的な改革か。国民の厳しい視線が向けられる中、文通費をめぐる問題は、1月に召集される通常国会に持ち越されることになる。
(フジテレビ政治部 野党クラブ)