東京・浅草にある「伝法院通り」の名物商店街に、台東区が“立ち退き”を求め提訴する方針を固めました。「めざまし8」は商店街側・台東区の双方を取材。すると、一筋縄ではいかない数年来に渡る“主張の対立”があることが分かりました。

「不法占拠」を区が主張…議会でも迷いの声

「挙手多数であります。よって本案は原案通り決定いたしました」

15日、台東区議会は伝法院通りの32店舗を提訴する方針を固めました。区が主張するのは“不法占拠”。建物が公道上にあるとして土地の明け渡しなどを求めているのです。しかし、提訴に賛成した議員の中にも迷いの声が…

区議会企画総務委員会 秋間委員:
なぜ40年も放置してきたのかってことなんですが。

区議会企画総務委員会 寺田委員: 
区が訴訟ということは、やはりあまりよろしくないことになりますけど。

区議会企画総務委員会 堀越委員:
私はちょっと大丈夫なのかなって不安になることがありました。

区が観光スポットの商店街を提訴するまでにこじれた“立ち退き騒動”。浅草伝法院通り商栄会の西林宏章会長に話を聞きました。

「当時の区長が店舗設置を認めていた」商栄会会長が主張 区側は“確認出来ない”

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浅草伝法院通り商栄会 西林宏章会長:
今さらなぜ今なんだと、そういう話も何もできないまま向こうは裁判起こすとかやっているんですけど、浅草をつぶすようなもんだと思います。

「提訴のタイミングがなぜ今なのか」と強く訴える西林会長。納得ができない理由の1つは、この場所に商店街が生まれた経緯にあるといいます。

浅草伝法院通り商栄会 西林宏章会長:
ここには露天という形であったんです、戦前戦後。浅草・上野を整備するということで当時の内山区長さんが、ここもきれいにした方がいいだろうと。

浅草寺の門前、仲見世商店街と交差するおよそ300メートルの伝法院通り。ここにはかつて数多くの露店が出ていました。
転機は1977年。当時の区長・内山榮一氏が区画整備を推進します。

さらに、西林会長によるとその頃、内山区長は露天商に対し、舗装した道路に自費で店舗を設置することを認めたといいます。

それから40年以上。商店街側としては当時の区長に許可を得ているため、違法という認識はなかったというのです。

しかし、数年前、台東区から突然立ち退きを求められ、区によると最初に要求したのは2014年。東京オリンピック開催が決まり、多くの外国人が来日する予想があるなかで、道路空間を広げることが理由の一つでした。

商店街側の「内山元区長が認めた」という主張について台東区は、当時の記録が何も残っておらず、許可を出したか確認できないとしています。

区議会企画総務委員会 秋間委員:
あの外形的に見れば、区はやはりね40年近くね、認めてきたのです。これは否定しちゃだめですよ。そういうふうにやられたらね、そっちが嘘つかれるのと同じですから。
やっぱり内山さんが認めたんですよ。間違いないですよ。本当にそう思ってない人います?
内山さんがOKしちゃったんですよ。

周囲の委員:
そうは言えない。

割れる意見。一方で、伝法院通りには、区側が商店街の存在を認めてきたのでは、とも取れる痕跡があることが分かりました。

店の電柱から電気を…区による「街灯」

区議会企画総務委員会 堀越委員:
(伝法院通りの)あの建物に電源電気を引くために造作物とか、建物に付随した棒というか。そこが電線から電気を引いているんですね。その違法建築物の支柱から電源を引いているように見えるわけですね。ひいてるんですよ。

不法占拠として、立ち退きを求められている商店街には、店に電気を引く細い電柱が。
隣に立つ台東区が設置した「街灯」もその電柱から電気を引いているといいます。
もし商店街が違法と言うなら、区がそこから電気を引くのはおかしいのではという指摘です。
これについて区議会に参加した区の道路管理課長は。

台東区道路管理課長:
これもあのかなり古い時代に設置されたのかなという風に思ってまして。
東京電力が対応していると思うんですが、その詳しい事についてちょっと今区の方ではちょっとわかりません。

古い話で詳しくはわからないと説明しました。
さらに、提訴に反対した秋間区議を取材。すると、伝法院通りには他にも区側が商店街の存在を認めてきたのではと考えられる点を指摘しました。

「住所表記」が各店舗に設置…商栄会会長「本当に話し合いをさせていただきたい」

区議会企画総務委員会 秋間委員:
住所地のプレートですね。これはあの台東区が発行してって、これはほかのところで発行できないものです。ですから、これはあの公的なものでここの住所地を示しているものですよね。区が発行していると。

各店舗に設置されているのは区による「住所表記」。そのことから、長年、区はこの商店街の存在を認めてきたのではないかというのです。

15日の区議会で指摘を受けた区の道路管理課長は…

台東区道路管理課長:
ええと住居表示、その当時はですね。郵便配達の便宜と考慮して付けられたものに過ぎないと。従いまして、それが付いているからとして道路上の店舗建築を認めたものではないというふうに考えております。

住所表示は郵便配達のための便宜上のもので、商店街を認めているわけではないと主張しました。さらに、区議会では…

区議会企画総務委員会:
ちょっと聞きたいのは、なぜ40年も放置してきたのかっていうことなんですがそこについてはどうですか?

台東区道路管理会長:
記録等も残ってございませんので、なかなかそのときのことをですね。明確にご答弁することはできません。

伝法院通りの西林会長は、こう不満を訴えます。

浅草伝法院通り商栄会 西林宏章会長:
どうして今どけとか撤去しろという話になっているのかということを詳しく聞きたい。
それで、そういう話し合いが一切ないので、そこがクエスチョン。

西林会長によると、これまで区と直接、意見をぶつけ合う機会はなかったといいます。
そこで今年、署名活動で1万筆以上を集め、話し合いを求めたといいますが、それでも叶わないままだったというのです。

浅草伝法院通り商栄会 西林宏章会長:
裁判なんてしたくありません。本当に話し合いをさせていただきたい、だから陳情書出しましたけどそれが今回ダメになったんですけどね。

あくまでも話し合いでの解決を望んでいくという商店街側と、店舗が公道上にあり違法だと訴える台東区。提訴となった場合、名物商店街の行く末はどうなるのでしょうか。

弁護士が言及「裁判所側は和解に持って行く可能性」

山田秀雄弁護士に話を聞くと、裁判所側は和解に持って行く可能性があり、こうしたケースは半分近くが和解ということもあるとの見解が。さらに、和解となった場合は、営業を続ける代わりに金銭などを支払うことや、別の場所を提供するなど、条件付けが入ってくるのではないかと指摘しました。

(めざまし8 12月17日)