全国的にSDGsへの取り組みが広がる中、長崎県内でもリサイクルや食品ロスを減らす取り組みを通して、持続可能な生産・消費形態を創り上げようという取り組みがある。

SDGsが掲げる17の目標、その12番「つくる責任 つかう責任」。取引先の炭鉱閉山で苦境に陥ったものの、独自の視点でユニークなペット用品を開発した企業を取材した。

最大の取引先を失い、新たな事業を模索

2021年11月に発売された小型犬やネコ用の「ベッド」。

新聞紙や古紙をリサイクルした素材で作られている
新聞紙や古紙をリサイクルした素材で作られている
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新聞紙や古紙をリサイクルした素材を使った、人にも環境にも優しいペット用品だ。

手がけているのは、西彼杵郡時津町の平山工業。4人のスタッフが、一つ一つ縫い合わせて仕上げている。

工場主任・中尾美保子さん:
全然違う商品を作ることになって。バッグを作るのもみんな初心者だったので、かなり手こずりながら、みんなで相談しながら作っていきました

平山工業は、かつて炭鉱の島として栄えた長崎市の池島で1994年に創立。炭鉱や島の暮らしに必要な電力をつくる発電所のメンテナンスをしていた。

かつて炭鉱の島として栄えた長崎市池島
かつて炭鉱の島として栄えた長崎市池島

松島炭鉱・田代勉社長(当時):
池島炭鉱は、これ以上経営を継続することは不可能

 
 

池島炭鉱は国のエネルギー政策の転換などを背景に、2001年に42年の歴史に幕を閉じた。

平山工業・平山勝治 代表取締役:
一番のうちのお客さんだった池島炭鉱が閉山になって。そんなに早く(炭鉱が)なくなると予想していなかったので、どうしようっていう感じでしたね

 
 

平山勝治社長は、炭鉱が閉山した年に社長に就任。島内の公衆浴場の管理のほか、船で使う製品を作るなど事業を広げてきた。

平山工業・平山勝治 代表取締役:
造船の方も、うちは孫請けという状態で仕事していたので、金額的なところもかなり厳しくなってきましたし。機械に巻くカバーをミシンで作っていたんですね。これを何か製品にできないかと前々から考えていた

「防臭効果と湿度調整」が特徴の断熱材に着目

長崎を代表する基幹産業、造船業の将来が見通せなくなる中、培ってきた縫製技術を生かそうと取り組んだのがペット用品の商品開発だ。

 
 

平山工業・三根七豊課長:
建築用のセルロースファイバーという断熱材に着目し、効果をいろいろと調べていくうちに、ペット用品に適しているのではと

セルロースファイバーは、新聞紙や古紙をリサイクルして作られる断熱材だ。建築資材として家の壁などに使われるが、コストがかかるため日本ではあまり使われていない。

平山工業・三根七豊課長:
特徴は、素材である新聞紙による防臭効果と湿度の調整、防虫効果も得られる

ノミやダニなどを寄せ付けず、ペット特有の匂いへの消臭効果が期待されることから、ベッドやバッグの底の部分に使っている。

立ち上げたブランド名は「calore(カローレ)」。イタリア語で「温もり」を意味する。

平山工業・三根七豊課長:
お客さまと、お客さまの愛するペットが快適な生活を送れる温もりを提供したいと思いまして、「calore(カローレ)」と名前を付けました

商品も会社も“持続可能”を目指して

現在はネコや小型犬用のバッグやベッドが主な商品だが、今後はペット用の小屋や日用品としてスリッパなど、商品の幅を広げたいとしている。

平山工業・三根七豊課長:
セルロースファイバーという断熱材があることを世間の方に知っていただいて、効果を実感していただけたらなと思います

今回、商品開発のヒントになった断熱材は、造船業と建築業に携わっていたからこそ出会えた。
造船業をはじめ長崎の企業が持つ高い技術を視点を変えて生かすことで、さらに違う分野への進出も期待している。

さまざまなペット用品
さまざまなペット用品

エコな素材が、建築分野からペット用品にも展開できると証明されたわけだが、セルロースファイバーを卸す業者は「前例がない」と話しているという。コストもかかるが、平山工業ではSDGsにつながり、多くの人に知ってもらえればと使っている。

人にも環境にも優しい素材で、商品も会社も持続可能に…。炭鉱閉山から20年、ペット用品と共に新たな一歩を踏み出している。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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