「見切り発車で不法な埋め立て」と玉城知事

普天間基地の移設問題をめぐり、沖縄防衛局の設計変更を不承認にした玉城知事。12月4日、名護市のキャンプ・シュワブのゲート前で開かれた集会で、辺野古への移設阻止を訴えた。

同じ日には菅前首相も沖縄を訪れていて、2022年1月に迫る名護市長選挙を前に、移設問題をめぐる国と県の対立は激しさを増している。

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玉城知事:
この変更承認申請には正当なる事由が認められない。(辺野古沖の)埋め立ては、見切り発車で始まった不法な埋め立てであると言わざるを得ないんです

軟弱地盤の存在が明らかになった辺野古移設をめぐって、玉城知事は地盤調査の不十分さを理由に11月、沖縄防衛局が申請した「設計変更」を不承認にした。

県と国の対立が深まる中、移設計画に反対する玉城知事が切った最大のカード。その背景には、名護市長選挙に向けた「追い風とするため」という見方もある。

「辺野古新基地を止める」移設阻止を訴える知事と候補者

岸本洋平・名護市長選挙予定候補者:
1月23日に行われる名護市長選挙に向けて、決意をしっかりと固めて辺野古新基地を止める

名護市長選挙への出馬を表明している名護市議の岸本洋平さん。かつて名護市長を務めた故・岸本建男さんの息子で、知事と共に辺野古移設阻止を訴えている。

岸本洋平・名護市長選挙予定候補者:
完成の見通しも立たないこのような工事は直ちに止めるべきだと、皆さんと玉城知事と力を合わせて止める。そのことをしっかりと訴えて参ります

2021年10月に投開票された衆議院選挙では、普天間基地の移設先の名護市を含む沖縄3区で自民・公明が支援する候補者が勝利。

「辺野古への移設反対」を公約に当選した玉城知事にとっては、市長選挙の結果次第では、これまで移設工事の阻止に向けて後ろ盾にしてきた民意を失う事になりかねない。

沖縄3区で当選した島尻安伊子衆議院議員
沖縄3区で当選した島尻安伊子衆議院議員

玉城知事:
沖縄は、新しい基地を県民自ら提供する立場には立たないという事を明確にすること。私たちの子や孫たちに、私たちの責任を示すことが出来ます

玉城知事は選挙戦で移設計画に反対する岸本さんの支援にまわり、岸本陣営は辺野古移設の是非を争点に選挙戦に臨む方針だ。

「普天間飛行場を一刻も早く返還」辺野古隣接の区長と面談

菅前首相:
私自身は一議員として、沖縄問題にライフワークとして一生懸命取り組んでいきたい

玉城知事が集会に参加した同じ日に沖縄を訪れた菅前総理大臣。移設先に隣接する久辺3区長などと面談した。

菅前首相:
住宅地に囲まれた普天間飛行場を一刻も早く返還すべく、キャンプ・シュワブへの移設に取り組んでいますが、みなさんのご理解とご協力なしでは叶わない事であります

面談の場には、名護市長選挙への出馬を表明している現職の渡具知武豊市長も同席した。

渡具知武豊 名護市長:
北部振興事業がちょうど節目を迎えまして。その継続とさらなる増額、中身についてもいろいろとご協力を頂きたいという要請書になっています

北部12市町村の首長たちが出席した意見交換会で、政府与党とのパイプをアピールした渡具知市長。

現職名護市長は賛否示さず「辺野古が唯一の問題ではない」

政府は普天間基地の移設計画を推進する立場だが、渡具知市長は前回の選挙で県と国が係争中という事を理由に、辺野古移設に対する態度を明確にせず「推移を見守る」とした姿勢を貫いた。

今回も「状況は変わっていない」として、今のところ賛否を示していない。

渡具知武豊 名護市長:
常に名護市において辺野古代替施設建設の移設問題が取り上げられ、その賛否について最大の争点と報道されています。この問題というのは大変難しい問題でもあります。しかしながら、名護市の唯一の問題では無いです

こうした「辺野古」の争点化を避ける戦略に政府与党も歩調を合わせる。

――名護市長選で米軍・普天間飛行場の辺野古移設問題が争点になるかどうか?

菅前首相:

それは争点にならないと思っています。身近な生活ですかね、そうしたことについての審判というのが、今度の選挙戦だというふうに思っています

玉城知事が設計変更の不承認という最大のカードを切り、新たな局面を迎えた移設問題。激しさを増す県と国の対立の縮図が、約6万4000人の名護市民に重くのしかかっている。

(沖縄テレビ)

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