小さく生まれた赤ちゃんにとって、今必要だと言われている取り組みを取材。母乳をあげたくてもあげられない、そんなママの選択肢として注目されている。

1500g未満で生まれた赤ちゃんに母乳を

広島で生まれる赤ちゃんは年間約2万人。そのうち約1,800人が2,500グラム未満の早産で生まれている。約10人に1人。赤ちゃんたちは「リトルベビー」と言われている。

この記事の画像(13枚)

11月、そんな「リトルベビー」の写真展が広島市内で開かれた。企画したのは、広島の「リトルベビー」のママたち。

しずくの木代表・漆畑希望さん:
保育器の中に赤ちゃんがいるお母さんって、成長していく姿をイメージできないと思うので、こういう風に生まれたけど元気に成長する姿だったり、そのイメージができるだけでも心が軽くなったりするかなと思い、そうなったらいいなと思ってやっています

そんな広島のリトルベビーママたちが注目しているものがある。それは「母乳バンク」。

しずくの木代表・漆畑希望さん:
今はまだ広島では利用ができない状態なので、そういうのが選択肢の一つとしてあったらいいなとは思います

東京にある「母乳バンク」。ここは、寄付された母乳を処理し、「ドナーミルク」として提供する施設。使用されるのは国際的な運用基準の元で検査した人から提供された母乳で、それを低温殺菌処理し保管する。

利用できるのは、1,500グラム未満で生まれた赤ちゃんの母親が母乳をあげられない場合で、医療機関からの要請を介した上で無償で提供される仕組み。

2017年に「日本母乳バンク協会」が設立され、現在、登録する50を超える医療機関が利用。2021年度に利用した赤ちゃんの数は約500人を超える見込み。

しかし、利用が必要な赤ちゃんは年間6,000人と言われ、需要に見合う施設の整備と経済的なサポートが急がれている。

厚生労働省も2020年度から研究班を立ち上げ、医学的効果など3年間の調査研究を進めている。母乳バンクを立ち上げた昭和大学の水野教授は、1,500グラム未満の赤ちゃんに、より必要だと言う。

日本母乳バンク協会・水野克己代表理事:
正期産児ではないので、未熟な状態で生まれてきます。そういう未熟な腸管に粉ミルクをあげるのは、いろいろなリスクがある

日本母乳バンク協会・水野克己代表理事:
一番わかりやすいものとしては、壊死性腸炎が起きて腸が壊死してしまう。命とりとなって、助かっても聴覚障害、視力障害、脳性マヒ、こういったものを残して生きていくことに。それを防ぐために母乳バンクのドナー、ミルクというものが世界的に使われていて、この10年でも倍近くに増えている

母乳が役に立つことで母親も救われる

一方、救われるのは赤ちゃんの命だけではない。

しずくの木・林里恵さん:
赤ちゃんが飲める量に対して(母乳が)出る量のほうが多くて余ってしまって、冷凍庫がいっぱいになったりとか、搾乳自体がむなしい行為。むなしい上に、せっかくとれたものを流し台で水を流しながらジャーって…何やりよるんだというのがあったんで、それが誰かの役に立つなら役に立ててほしいと思います

しかし、広島県ではまだ提携する病院はない。施設整備などの予算や倫理委員会での承認など、ハードルが高いため。
一方、利用した奈良県のお母さんは…

母乳バンクを利用した・村島伸子さん:
私が25週1日で娘を584グラムで出産しました。緊急帝王切開だったので、私自身も意識の方がなくて、とてもじゃないですけど搾乳ができるような状態ではなかったんで、生後すぐからドナーミルクの方を使わせていただきました

母乳バンクを利用した・村島伸子さん:
すごく成長も順調でしたし、壊死性腸炎というのもならなかったです。のちのちわかったことで、娘の体には(市販の)ミルクが合わなかったという事で、もしかしたら娘はこの世にいないかもしれないというのを考えるととても怖いですね

現在の娘の陽華(はるか)ちゃん。

母乳バンクを利用した・村島伸子さん:
2才です。とっても元気です。私のように生後すぐに搾乳できずに母乳を届けてあげられないお母さんにとって、本当に助けになると思うので、まずはドナーミルクを知っていただいて、導入してもらえる病院が少しでもふえれば、一人でも多くの命が救われるのではないかとすごく期待しています

無償提供のドナーミルク。母乳バンクは赤字が続き、寄付を中心に運営されてきた。

日本母乳バンク協会・水野克己代表理事:
赤ちゃんは国の宝。国の宝である赤ちゃんに対して、日本国民みんなで支えよう、みんなで元気に育ってもらおう。それが最終的には、母乳バンクの活動になると思います

日本母乳バンク協会・水野克己代表理事:
みんなで小さな赤ちゃんたちに目を向けてもらえるということで、私たちはそのあたたかい気持ちを受け止めて日々活動しているということになるかなと思います

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。