党首討論は「いい人対決」になる
11月30日に行われた代表選挙で泉健太氏が立憲民主党の新代表に選ばれた。彼は僕の大学(立命館)の後輩なのでよく知ってるのだが、とってもいい奴である。ということは国会での岸田文雄首相との党首討論はこれまでにない「いい人対決」になるだろう。

いや別に安倍晋三元首相や枝野幸男前代表が「ワルい人」と言ってる訳ではない。ただ安倍・枝野対決は相当ピリピリしていたが、岸田・泉対決は、もう少し優しいと言うか、悪く言えばユルーい感じになるのかなと思うのだ。
菅義偉前首相も含めた約9年間のアベ・スガ長期政権の後に岸田政権に代わった事と、トップダウン型の枝野氏からボトムアップ型の泉氏に代わったことはもしかしたらリンクしてるのかもしれない。
枝野体制とどこが違うのか
今回の立憲の代表選の最大かつ唯一の見どころは共産との関係を今後どうするかということであった。ただ泉氏は共産との「限定的な閣外協力」については否定的だったが、選挙協力については継続するという主張で、これは他の3候補も似たり寄ったりだった。
4候補の論戦を聞いていてオヤッと思ったのは、「私たちはそんなに共産と近くはないのに、まるで近いかのように有権者に誤解を与えたことは申し訳ない」という趣旨のことを4人が言っていたことだ。

そうなのだ。確かに立憲と共産の政策は全く違う。特に「天皇制」「自衛隊」「日米同盟」の3点セットでは越えがたい溝がある。だから立憲と共産が「近くない」ことはみんなわかっている。でも近くないなら選挙協力しちゃダメなんじゃないか。立憲の人達はそこをわかってない、じゃなくてわからないふりをしている。それは有権者をナメてると思う。

分裂した方がよかったかも
だから泉新代表がたとえ「限定的な閣外協力はもうやめます」と言っても、共産との選挙協力を続ける限り、枝野体制とおんなじなのだ。おそらく麻生さんは参院選でも「あちらさんは立憲共産党ですから♪」と言い続け、泉氏はそれに抗議するだろうが、有権者は麻生さんの言うことをフムフムと聞くだろう。
今回、左派の逢坂誠二氏が右派の泉氏に敗れたのは立憲内で「枝野は共産に寄り過ぎた」という評価が働いたからだ。だがいくら左から右に少しだけシフトしても、共産との選挙協力を続けるなら本質は変わらない。
むしろ「なぜ君は総理大臣になれないのか」の小川淳也氏のようなトンデモない人が代表になって、左右で分裂でもした方が本当の「立憲再生」のためにはよかったのではないかとも思う。民主主義にとって2大政党制は必要だ。だから立憲民主党には覚醒してほしいのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】