漁網に絡まった状態で島根・隠岐の島町で保護され、片足を失ったアカウミガメのリブ。
リハビリを経て、2021年の夏に海へと戻された。
地域一丸となって、その軌跡を絵本で伝えようというプロジェクトが新たに動き出している。

保護したのは、瀕死のウミガメ
保護したのは、瀕死のウミガメ
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2020年の夏、隠岐の島町の海岸に、漁網に絡まった状態で漂着していたアカウミガメ。保護されたときは瀕死の状態だった。

網が絡みついた右前足は壊死、フンからはプラスチックごみが見つかるなど、海洋汚染の深刻さを島民に訴えかけた。

網が絡まり壊死した足
網が絡まり壊死した足

生きる希望を託し、保護した島民たちが「リブ」と名付けた。
その後、神戸市の水族館でリハビリし、右前足を失いながらも、独自の泳ぎ方も習得した。

片足で懸命に泳ぐ
片足で懸命に泳ぐ

そして2021年7月、元気に隠岐の島町から自然の海に帰っていった。

リハビリを終え、海へ帰る
リハビリを終え、海へ帰る

リブが残した“環境保護”のメッセージ…多くの人に届けたい

旅立ちから4カ月。リブと地域の絆を形に残す、新たなプロジェクトが動き出していた。
隠岐の島町で16日にあったミーティング。
机の上に置かれているのは、ニッコリと笑うウミガメのイラスト。

にっこりほほ笑むリブ
にっこりほほ笑むリブ

リブを題材にした絵本を作ることになったのだ。
発起人の安部由起さんは、瀕死だったリブを一時的に引き取り、保護した地元ダイビングショップのインストラクターだ。

なぜ絵本を作るのか。

発起人・隠岐の国ダイビング 安部由起さん:
リブが残してくれた大きなメッセージが心にひっかかるので、絵本にしてずっと残していきたいと思いました。小さなお子さんから大人まで、幅広い方に読んでもらえると思ったので、絵本にしようとした

海洋ごみなどについて学ぶ隠岐の子どもたち。保護されたリブがその機会を作っていた。

傷を癒やし、隠岐から旅だったリブ。

安部さんをはじめ保護に携わった地域の人たちは、絵本の中のリブが、隠岐以外の子どもたちにも海の環境問題に関心を持つきっかけを与えてくれると考えている。

その絵本の原案がこちら。
漂着前、両足で優雅に泳ぐ姿から、足を失い涙するリブ。

優雅に泳ぐ…
優雅に泳ぐ…
足を失い涙するリブ
足を失い涙するリブ

そして、餌を食べて元気になる姿など、実際の保護から海に戻るまでの経緯を丁寧に描く構想だ。

保護から旅立ちまでを描く
保護から旅立ちまでを描く

自身も聴覚にハンデ…リブにもらった勇気を絵に込めて

絵を担当するのは、隠岐の島町在住のイラストレーター・中村一夫さん。
絵本づくりへの参加で、リブと自身のもつハンデを重ね合わせている。

イラストレーター・中村一夫さん:
私も耳が聞こえないから、ハンデを背負って頑張っている。リブも片手を失って大変な状況にあって頑張っている姿をみると、勇気をもらっている

幼少期の高熱で聴覚に障害を抱え、中村さんは両耳ともほとんど聞こえない。
補聴器を使って聞き取りはできるが、基本は筆談。片足で懸命に泳いだリブの姿を見て、絵本制作への参加を決めたという。

イラストレーター・中村一夫さん:
みんなが見て、わっと訴えられるような絵を書きたいなと思っている

絵本は300冊の製作を予定し、費用は120万円。
インターネットで多くの個人から資金を募る、クラウドファンディングで制作費を集めている。

クラウドファンディングで制作費を集めている
クラウドファンディングで制作費を集めている

そして完成した絵本は、販売ではなく、全て図書館や県内の学校などに寄贈する計画だ。

発起人・安部由起さん:
少しでも自然に優しく、自分にできることがなんだろうと考えてもらうきっかけになれば良いと思っている

リブが海へ帰った今も、漂着し続ける海洋ごみ。
リブを襲った悲劇が繰り返されないために…絵本完成予定の2022年3月に向け、作業が続く。

クラウドファンディングは11月末まで行われていて、制作した絵本は全て寄贈する予定だが、これとは別に5000円以上を出資した人には、返礼品として絵本が贈られることになっている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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