素朴な甘さと食感が楽しい「ビスケット」。そのままでも美味しいが、岩手県の西和賀町には、“天ぷら”にした郷土食があると話題になっている。

この食文化をTwitterで紹介したのは、岩手県在住のすぺすぽん(@Iwatekko6969)さん。自身はアレルギーのため食べられないとしつつ、地域のB級グルメとしてお勧めしたいという。

ビスケットを揚げる。文字だけでもインパクトがあるが、実際の見た目も特徴的だ。さつまあげのような姿をしていて、おでんに具材として入っていても分からないかもしれない。

これが「ビスケットの天ぷら」(画像提供:西和賀町)
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このおやつはどのようにして生まれたのだろう。揚げることで、味や食感がどう変わるのだろうか。家庭での作り方も含めて、西和賀町に聞いてみた。

西和賀町の住民には「当たり前の文化」

――ビスケットの天ぷらを食べるというのは本当?

はい。ビスケットの天ぷらがあるのは本当です。生まれた時から当たり前の文化でした。恐らくですが、町内の方であれば誰もが一度は食べたことがあるのではないでしょうか。


――この食文化が生まれた理由は知っている?

いつごろ生まれたのかははっきりしていないのですが、食糧やビスケットがまだ希少だった時代に、天ぷらの衣でボリュームを加えて食べ始めたのが始まりとされています。おやつや農作業の合間での一服に食べたり、冠婚葬祭の場にも出されます。

発祥の理由(画像提供:西和賀町)

――今も定期的に食べたりはする?

はい。家庭で作ることが多いですね。お盆で親戚が集まるときなどに、ある程度の数を一度に揚げたりします。普通の天ぷらのついで…ではなく、食べたくなって揚げますね。日常的なおやつとして、産地直売所などでは「ビスケットの天ぷら」という名前で販売したりもしています。

食感はサクサクしっとり…自然な甘さ

――ビスケットを天ぷらにすることで、味や食感はどうなるの?

食感は衣がサクサクで、ビスケットはふわっと、しっとりしていますね。衣に甘さを加えるかは好みですが、ビスケットの甘味が感じられます。おいしいので好きな子どもも多いです。衣にもち粉を使うこともあり、もちもちした食感にもなります。

実際の調理過程 その1(画像提供:西和賀町)

――西和賀町の家庭で作っているレシピを教えて。

普通の天ぷらと同じ流れで、(1)小麦粉と米粉を半々にした粉を、水に溶いてあげます。ホットケーキミックスの粉を使うこともありますね。(2)この液をビスケットにさっとつけます。(3)熱した油に投入して、衣がきつね色になるくらいまで揚げたら完成です。使う油は一般的な植物油、温度も普通の天ぷらを揚げる程度で大丈夫です。

実際の調理過程 その2(画像提供:西和賀町)

――ビスケットの種類は決まっているの?

西和賀町では、イトウ製菓の「かーさんケット」という商品が一般的で、他は基本的に使いません。揚げるとしたらなぜかそれなのです。理由はよく分かりませんが、ビスケットの甘さがちょうどいいのかもしれないですね。

これが「かーさんケット」(画像提供:イトウ製菓)

豪雪地帯が独自の食文化を育んだ?

――岩手県の他地域でもビスケットは揚げる?

他の地域ではないようですね。西和賀町だけだと思います。ここは豪雪地帯で山に囲まれているような地域なので、独自の食文化が生まれたのかもしれませんね。ただ全国ですと、長野県でもビスケットを天ぷらにするという情報を聞いたことがあります。

西和賀町は豪雪地帯だという(画像提供:西和賀町)

――西和賀町には他に変わった食文化はあるの?

ビスケット以外だとあまりないのですが、私の知人はまんじゅうを購入して揚げています。揚げ饅頭を買うのではなく、揚げるのです。一般的ではないかもしれませんね。


――この食文化について思うことはある?

町内では当たり前のことですので、珍しいという感覚はないですね。町の第三セクターである「西和賀産業公社」では、ビスケットや天ぷら粉のセット商品を販売していて、ふるさと納税の返礼品にもなっています。宜しければ、いかがでしょうか。

ビスケットの天ぷらの断面図(画像提供:西和賀町)

世にも不思議な「ビスケットの天ぷら」は確かにあった。イトウ製菓の担当者に聞くと、かーさんケットは1970年から全国販売しているとのことで、西和賀町でも昔から親しまれて、天ぷらにするビスケットにも選ばれたのではないかと話した。

材料さえあれば、家庭でも簡単に作れるので気になる人は一度試してみてほしい。