【ここ2回は有権者の約半分しか投票せず…今回は投票率の向上なるか】

令和初の総選挙となる10月31日の衆院選投開票日が刻一刻と迫っている。各政党や候補者の選挙戦や選挙結果予測が大きな注目を集める中、かつてないほど注目されているのが投票率の行方だ。

前回2017年の衆院選の投票率は53.68%と、2014年の52.66%に次ぐ戦後2番目の低さだった。特に10歳代が40.49%、20歳代が33.85%、30歳代が44.75%と、若い世代の投票率の低さが顕著だった。平成最初の総選挙だった1990年の衆院選の投票率73.31%と比べるとその低下ぶりに衝撃を受ける。

では、どうすれば選挙や政治への関心は高まるのか、フジテレビなどFNNが投開票日に放送する特別番組「Live選挙サンデー」とYahoo!ニュースは共同で、今回の衆院選に関する意識調査を行った。

【投票に行く理由は、「義務」か「権利の行使」か】

今回の調査で、衆院選に「投票に行く」と答えた人は76.7%、「投票に行かない」と答えた人は23.3%だった。ここ最近の投票率に比べ高い数字だが、本アンケートに回答していただいた方は、元々選挙への関心が比較的高い人が多いと考えられるだけに、実際の投票率はこの数字より低くなること確実だろう。そこでここでは、それぞれの回答の理由の方に着目したい。

「投票に行く」と答えた人にその理由を選択肢から最多で2つまでの複数回答で聞いたところ、以下の結果となった。(%は母数全体における比率)

投票するのは国民の義務だから          49.5%
政治をよくするためには投票することが大事だから 44.0%
支持する政党があるから             10.1%
投票したい候補者がいるから           3.4%
家族や知人などに投票に行くように言われたから  2.2%

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このように「国民の義務」という答えが一番多いという結果になった。ただ、そもそも憲法に定められた国民の三大義務と言えば「勤労」「納税」「教育」である。この中に「投票」はない。「投票」は義務ではなく「権利」と言う方がふさわしい。それでも「義務」という答えが上回ったところを見ると、一票の行使について「義務」という受動的な行動と捉えている人が多く、「権利」という能動的な行動と捉えている人がやや少ないという現実も垣間見える。

その背景としては、戦後日本では1955年以降のほとんどの期間を自民党が政権を担ってきたため、国民が政権交代という一票の重みを実感する機会が少なく、政権交代が起きても、その政権が短期間に自壊していったという歴史も関係していそうだ。

【投票に行かない理由は「変わらない」と「わからない」】

一方で、「投票に行かない」と答えた人の理由は以下となった。(%は母数全体における比率)

自分が投票しても政治や世の中は変わらないと思うから 11.4% 
誰、どの政党に投票して良いのかわからないから    8.6%
投票所に行くのが面倒だから  5.9%
政治に関心がないから  5.6%
他の予定があるから   3.5%
今住んでいる市区町村で投票できないから 0.7%

このように「投票しても政治は変わらない」と「誰に投票していいかわからない」という意見が上位となった。最も多かった「自分が投票しても政治や世の中は変わらないと思うから」との回答に関連しては、自由記述欄に「誰、どの政党になっても大差ない」「誰が当選しても経済は変わらない」「候補者の人格などではなく組織票で当選が決まるのに行く必要を感じない」など、選挙と政治への諦めの声が並んだ。

また、「誰、どの政党に投票していいのかわからない」という答えに関連しては、「どの人にも魅力を感じない」「どの政党の選挙公約も気に入らない」「投票に値する政治家がいない」といった辛辣な声が並んだ。

特に今回の選挙は、安全保障はともかく、経済対策などに関して政策の違いが見えにくいという指摘もある。それだけに候補者や政党には、こうした厳しい声を乗り越え「自身が国会議員となることでこう変わる」「他の政党や候補者と違うこんな価値が自身にはある」というような発信が一層求められているのかもしれない。同時に、そうした政策の違いをメディアが、的確に伝えていくことも求められているのも間違いない。

【電子投票などの利便性向上求める声と投票質の両立】

一方で、全体の5.9%ではあるが「投票所に行くのが面倒だ」という意見も無視はできない。電子投票の導入を求める声も広がりつつある中で、投票率向上の最終手段となる可能性はあるからだ。

ただ、ここで同時に考えたいのは、投票にあたっての質、いわば「投票質」だ。1人でも多くの国民が選挙権を行使することが大事なのは言うまでもない。しかしただ投票率だけが上がっても、深く考えない一票の行使が増えるのではもったいないし、いわゆる衆愚政治につながってしまう恐れも否定できない。しっかり考えて投票することが大事だという「投票質」の向上も、投票率と同時に意識したいところだ。

【投票の量と質の向上のカギは「投票の成果の実感」と「政治のウソへの不信】

では、投票率と投票質の向上の前提として、多くの人がより政治に関心を持つにはどうすればいいのか。今回の調査では「今後どんなことがあったら政治にもっと関心を持つか」について、選択肢から最多で3つまでの複数回答で聞いた。結果は次の通りだった。

政治に国民の意見が反映されていることを実感できる 62.1%
自分の暮らしと政治を身近に感じられる   50.4%
わかりやすい政治ニュースが増える   33.8%
政党同士の議論が活発になる    28.2%
今より生活の安定が危うくなる   12.9%
周囲の人と政治の話が気軽にできるような社会になる 12.8%
スター政治家が現れる    12.7%

上位には、「政治に国民の意見が反映されていることを実感できている」と「暮らしと政治を身近に感じられる」が入った。前者については、世論と政治家の意見の乖離がたびたび起きることへの不信感が背景に感じられる。特に自由回答欄で「ちゃんと行動する政治家が現れたら」「嘘・隠蔽との決別」「嘘をつかず誠実に」「公約をきちんと守る政党が現れたら」などの答えが並んだ。政治家の言葉が有権者にはウソに聞こえるなら、民主主義国家としてゆゆしきことと言わざるを得ない。

一方、「自分の暮らしと政治を身近に感じられる」との答えを踏まえれば、この2年弱のコロナ禍は、政治と暮らしがいかに密接かを再確認する機会になったという指摘もある。緊急事態宣言の発令や解除、感染防止策に注目が集まり、マスク・ワクチンの調達から供給、そして給付金などの支援策に関する政治の対応に、様々な賛否両論が沸き起こった。多くの犠牲を払ったこのコロナ禍だが、結果的に政治と暮らしの関係を見つめ直す機会とし、今後に活かすべきと言えるのかもしれない。

【くすぶる「首相公選制」を望む声と懸念点】

そして政治により関心を持つための要素として、「スター政治家が現れる」という選択肢を選んだ人は12.7%だった。一方で、自由回答欄には「大統領制になって国民が代表を決めたい」という声もあった。

実はここ20年の政界で「スター政治家」「大統領制」といった論点に関係した人物がいる。それは小泉純一郎元首相だ。小泉氏は、2001年の自民党総裁選において、当時の橋本派主導による自民党の体制をぶっ壊すスターとして国民から圧倒的支持を受け、首相の座を手に入れた。その際に言及していた1つが、大統領制に近い形で国民が直接総理大臣を選ぶ首相公選制の導入だった。

首相となった小泉氏は早速、官邸に「首相公選制を考える懇談会」を立ち上げ、初会合でのあいさつで「私は、首相公選制も、ある意味においては、国会議員だけが握っていた首相を選ぶ権利を、国民の手に引き渡すという規制緩和の一つだと思っている」と提起した。

その後懇談会は首相公選制に関する複数の案を盛り込んだ報告書を提出したが、本格的に導入すれば憲法改正も必要になる難しさからか、首相の座を手に入れた小泉氏にとっては、もはや重要ではないと感じられたからか、報告書はたなざらしとなった。今後、政治の停滞が続くようなことがあれば、こうした首相公選制が再び提起される時があるかもしれない。それがこの日本になじむものかどうかは何とも言えないところではあるが。

【投票の基準は? 制作や人柄の見極めとメディアの役割】

このように多くの国民がより政治に関心を持つ手段については、様々な考え方があるが、目下は選挙に行く有権者が「投票にあたって何を基準にするか」も気になるところだ。アンケートで最多で2つまで選択肢から選んでもらった回答の結果は次の通りだ。

政策に共感するかどうか 70.1%
候補者の人柄が信頼できそうか 44.1%
支持する政党や団体が支援する候補者かどうか 29.4%
候補者の経歴がふさわしいか 10.3%
周りの人の評価やこの人に入れて欲しいという依頼に応じて 3.3%
ポスターを見た感じで 3.0%

ここでは「政策」「人柄」「政党」という、極めて常識的な答えが上位となった。特に政策を重視する人の多さは際立っている。ただし、一口に政策と言っても、政党や候補者の政策を見極めるのは簡単ではないかもしれない。ポスターやパンフレットには、有権者に甘い言葉が踊っているのが常で、それがどれだけ本音か、あるいは実行力を伴うものかは千差万別だからだ。

となると、そうした政策についてかみ砕き、解説するメディアの役割は重要だろう。この設問に対しても3人に1人が「わかりやすい政治ニュースが増える」と答え、自由回答欄に「メディア、マスコミによる公平な報道」「マスコミがもう少しましになれば」といった声が多かった。

メディアとして、こうした声を受けての自戒も心に刻みつつ、10月31日に投票率がどの程度となり、どのような選挙結果が示されるのかを見つめ、報じていきたい。

果たして今回の選挙での投票率はどの程度となり、どのような選挙結果が示されるのか。10月31日放送の「Live選挙サンデー」では、その選挙結果を国民の「知りたい」に沿って、どこより詳しくわかりやすくお伝えする。さらに強力な出演者たちが、与野党の大物政治家に対し、国民の疑問をぶつけ、日本をどのように導いていくのか生直撃する。

(フジテレビ報道局「Live選挙サンデー」制作班)

※この記事はフジテレビ「Live選挙サンデー」と Yahoo! ニュースによる共同企画記事です。記事内ではYahoo!ニュースが実施したアンケート調査を活用しています。アンケートは10月15日にネット上で実施。有効回答は2000人。回答者の性別は男性が61%、女性が37%。回答者の年代は18・19歳が1%、20代が6%、30代が19%、40代が35%、50代が26%、60代以上が12%。

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