今回の衆院選では、野党共闘がどれだけ効果をあげるのかが大きな注目点だが、そのメルクマールと言える選挙区の一つが、自民党と立憲民主党の候補者が1対1で戦う埼玉12区(熊谷市の一部、行田市など)だ。
自民党前職・野中厚氏(44)と立憲民主党前職・森田俊和氏(47)が立候補し、自民vs野党共闘の構図となっている。
立憲・森田俊和氏 “野党共闘”より“候補者個人”を前面に
立憲・森田氏は「今回こそ小選挙区で勝ちたい」と意気込む。前回2017年の衆院選では、野中氏が8万6499票、森田氏は8万6007票。森田氏は、わずか492票差で競り負け、比例復活となった。森田氏は「負けたのは自分の努力不足」とし、この4年間、つじ立ちはもちろん、自転車で選挙区内を回り、住民と交流を深めるなど地道な活動を続けてきた。
今回の野党共闘は、一見すると森田氏にとって“追い風”に見えるが、陣営は「有利だとは思わない」と懸念を示す。森田氏がもともと自民党出身で保守層からの支持も高いためだ。関係者は「森田個人の人柄で勝負している」と話す。実際に選挙戦は“保守系対決”とも評され、野党共闘を前面に打ち出すのは必ずしも得策ではないというのが実情だ。
街頭には、党の顔である枝野代表のポスターを掲載しておらず、応援に入る予定もないという。なるべく“野党色”出さない戦略で選挙戦に臨む。
自民・野中厚氏 「共産党との連携政権阻止」
逆に、森田氏の“野党共闘”を徹底的に強調するのが、自民・野中氏の陣営だ。
「共産党との連携政権阻止」
野中氏側は、こう記したステッカーを大量に用意し、ポスターに貼り付ける予定だという。森田氏支持の保守層に対し、「共産党と連携する森田候補を支持できるのか」と訴え、支持離れを狙う戦術だ。
陣営は「前回よりもさらに厳しい選挙戦」と位置付ける一方、「楽観はできないが悲観もしてない」と強気の構えを示す。前回の衆院選で、森田氏と共産党候補の票をあわせると、野中氏の票を上回る。野党共闘を有権者が支持するかどうかは選挙の行方を左右する。
野中陣営は、終盤戦で、茂木外相、河野前規制改革担当相が応援に駆けつけるなど、保守層に向けて、与党の強みをアピールする方針だ。
(衆院選2021・埼玉県)