2019年10月12日、東日本台風で大きな被害をもたらした要因の一つは記録的な豪雨だった。あの日の雨がどんなものであったのか。
気象庁の観測では、宮城県内で最も多い雨量は丸森町筆甫地区で記録された、午後7時から8時にかけ74.5ミリの雨。
また、2021年2月に東北地方整備局が検証したところ、丸森町の士ヶ森地区や由縄坂地区では1時間に113ミリという雨が降ったことも新たに分かった。
この113ミリという雨、一体どれほどの強さなのか。実際に体験するため、新潟を訪ねた。

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1時間120ミリの雨を体験すると… 

堤勇高 アナウンサー:
新潟県の新潟防災センターです。ここにあるのが降雨体験装置、その名も「雨二ティー号」。1時間に10ミリから180ミリまでの雨の降り方を体験できます

まずは、「激しい雨」に分類される1時間に30ミリの雨を体験。

堤勇高 アナウンサー:
30ミリ、すでにかなり激しい雨です。まだ視界は悪くなっていないですが、普段、町の中で降っていたら、ただ事ではない雨と感じると思います

続いて、丸森町筆甫で観測された雨に近い80ミリ。

堤勇高 アナウンサー:
先ほどよりも重く、雨が降っているというよりも、上から水をかけられている感じがします。視界もかなり悪くなってきました。周りを水の壁で覆われているような感じです

ディレクター:
歩ける?歩ける?聞こえない?

堤勇高 アナウンサー:
今、ディレクターと2、3メートルぐらいしか離れていないのですが、ディレクターの声が全く聞こえない状況です

歩いてみると…

堤勇高 アナウンサー:
歩くたびに傘が振られて、立っているだけでもかなり負担が大きくなっています。実際の台風で風が吹いて、この強さの雨が降って、足元には水がたまって、この状態で避難しろというのはかなり厳しいと思います

そして、丸森町士ヶ森地区などで降ったとされる1時間当たり113ミリに近い、120ミリを体験。

堤勇高 アナウンサー:
片手では傘は支えられません。両手で支えてやっと、というところです。一番変わったのが視界です。すぐ先の景色が白くぼやけて見づらくなりました。80ミリの時と比べても格段に見づらいです

堤勇高アナウンサー:
これで風が吹いたら、傘だけでなく恐らく体も持っていかれて転倒して流される危険があるなと感じます

【取材後記】
新潟防災センターに取材をした日には、新潟県内の小学校生が校外学習に訪れていた。
「雨二ティー号」の体験が終わった直後の子供たちに話を聞くと…

雨二ティー号を体験した子供:
雨が強くなる前に逃げる

子供たち全員がこう話してくれた。
いざという時にどうすれば良いか、しっかりと学んでいたようだ。

仙台放送 堤勇高アナウンサー
仙台放送 堤勇高アナウンサー

私自身、豪雨体験で得た学びは子供たちと同じ。
「こんな雨の中、逃げるほうが危ない」「こうなる前に逃げなくては」と肌で感じた。
東日本台風ではこうした雨が実際に降り注ぎ、丸森町では11人が亡くなり、1人が今も行方不明。

豪雨災害が増える近年、「雨が強くなる前に逃げましょう」と、今回の経験に基づいた言葉で伝えられるよう努力したいと思う。

(仙台放送 堤勇高アナウンサー)

堤勇高
堤勇高

仙台放送アナウンサー