身元不明者の特定を行う特別捜査班

宮城県警察本部の地下にある部屋。
ここに、東日本大震災で亡くなった人たちと、2020年も向き合い続ける警察官たちがいる。

震災身元不明・行方不明者捜査班 菅原信一検視官:
きょうまでに、9,541体の記録が全てここに置いてある。

9,541人」。
震災によって亡くなり、県警が身元を特定するために検視した遺体の数。

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身元の特定に専従であたる菅原検視官たち特別捜査班の努力によって、県内では これまでに全体の99.9%にあたる「9,533人」の身元が特定され、家族の元へ帰った。

残るは「8人」。
しかし…

震災身元不明・行方不明者捜査班 菅原信一検視官:
年数が経過するとご遺体も腐敗し、死後 変化していく。その身元を特定するには、本人のDNAがあれば、すぐに特定となるが、そういう方はほとんどいない

身元を特定する捜査では、「DNA鑑定」が主流。
しかし、海の中に長い間さらされるなど遺体の損傷が激しい場合、DNAが検出されない場合もある。
また、遺体からDNAが検出されたとしても、適合する相手となる家族も亡くなっている場合があり、親族を探すのも時間がかかるという。

震災から9年がたった2020年も、遺体に残されたわずかな手がかりを探し、身元を割り出すという地道な捜査が、今もなお、続けられている。

身元の判明が難しい遺体も…

捜査班の1人、京野祐也検視係長。

震災身元不明・行方不明者捜査班 京野祐也検視係長:
これから気仙沼市の鹿折にある公営墓地に向かいます

今も身元が分からない8人の遺体は、見つかった場所の自治体が、それぞれ安置している。
2月、そのうちの1人の遺体を京野検視係長が引き取りに向かった。

気仙沼市内の漁港で見つかったという遺体。
身に着けていた衣服から、女性とみられている。

しかし、これまでさまざまな捜査が行われたものの、身元の特定に至る手がかりは見つかっていない。
京野検視係長は、「骨の状態から体の特徴を推測する手法」を専門家に依頼すると言う。

震災身元不明・行方不明者捜査班 京野祐也検視係長:
今ある情報だけでは、身元をしぼり切れないところがあるので、候補者となり得る行方不明者をしぼり込んでいけるように、ささいな情報でも得られたら

その後の専門家の鑑定で、この遺体は「女性」で、「背骨に加齢による骨折があることから、高齢であることが推測される」ということが新たに判明。
2020年3月現在、この2つの情報を元に、発見現場の周辺で、この女性に合致する行方不明の高齢女性がいなかったか、捜査が続けられている。

身元判明が難しい遺体もある一方で、ほとんどの遺体は捜査班の努力によって家族の元に帰されている。

震災から7年9カ月 妻の遺骨と再会した夫

気仙沼市の佐藤信行さんも、震災から7年9カ月を経て、妻・才子さん(当時60)の遺骨と再会できた。

佐藤信行さん:
変わり果てた姿なんだけど、やっぱり妻。待ちに待っていた

才子さんの遺骨は、2018年10月、気仙沼市内の自宅近くの防潮堤の工事現場で見つかった。
見つかったのは全身の骨と、震災当時に身に着けていた衣類の一部だけ。
DNA鑑定の結果、才子さんと判明し、震災から7年9カ月ぶりに、夫・信行さんの元に帰ってきた。

佐藤信行さん:
本当に頭が下がる思い。寒い中、暑い中でも一生懸命捜索してもらって。昼夜問わず鑑識を一生懸命やってもらって、間違いないように家族に引き渡してもらって…。本当に感謝しています

身元不明者の似顔絵など公開 情報提供を呼びかけ

県警は、いまだ身元が分からない人について、似顔絵や遺留品などをホームページ上で公開し、身元特定のための情報提供を呼びかけている。

震災身元不明・行方不明者捜査班 菅原信一検視官:
身元を明らかにすれば、その方が生きた証になる。世の中に生を受けて、懸命に生きた証を探してあげる。「最後の1人まで」に尽きます

最後の1人まで、帰るべき場所を探し続ける。
捜査員たちは、執念を燃やし続けている。

(仙台放送)