緊急事態宣言は9月末で解除されたが、飲食店のなかには感染拡大前の賑わいが戻らない店も多いのではないだろうか。
厨房機器を販売する店では、廃業した飲食店からの買取依頼が増える一方で、新たに飲食店を始める人からの問い合わせが殺到しているという。そのワケとは?

厨房機器の中古品 飲食店廃業で買取が1.5倍に

静岡市駿河区の厨房機器販売店「テンポスバスターズ」。飲食店向けに、厨房機器や調理器具などを販売している。

厨房機器販売店「テンポスバスターズ」 全国で店舗展開
厨房機器販売店「テンポスバスターズ」 全国で店舗展開
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杉村祐太朗記者:
こちらでは鉄板焼きの機器、そしてガスレンジ、さらにはパスタをゆでる機械など厨房機器を豊富に取りそろえています。ずらりと並んだ商品、すべて中古品です

静岡店は在庫の半分以上が中古品 価格が新品の5分の1の品も 
静岡店は在庫の半分以上が中古品 価格が新品の5分の1の品も 

​店の在庫の半分以上は中古品で、中には新品の5分の1程度の価格で買えるものもある。中古品はすべて飲食店から買い取ったものだが、新型コロナの影響でいま買取件数が増えている。

テンポスバスターズ静岡店・杉山俊介店長:
(買取件数はコロナ拡大前に比べ)1.5倍にあがってきています。外食される方が減って飲食店の廃業が多くなり、こうした中古品が増えていると考えています

帝国データバンクによると、静岡県内の新型コロナ関連の倒産のうち、最も多いのが飲食店だ。緊急事態宣言で時短営業や休業を余儀なくされた店が、先を見通せず廃業するケースが目立っている。

静岡県内のコロナ関連倒産で飲食店は15件(帝国データバンク)
静岡県内のコロナ関連倒産で飲食店は15件(帝国データバンク)

この日、配送業者が買取に向かったのは藤枝市のラーメン店。
この店もコロナ禍で客足が途絶え、売上は3分の1に。それでもお客さんのために時短営業にも協力しながら店を継続させてきたが、9月に店を閉じた。

9月閉店のラーメン店で厨房機器の搬出
9月閉店のラーメン店で厨房機器の搬出

閉店したラーメン店の店主:
やっぱ悲しいよね。トータル4年5カ月やったんだけど、もっとやりたかったからね。しょうがないよね。またいつかやりたいとは思っているんだけどね

閉店したラーメン店主「やはり悲しいね」
閉店したラーメン店主「やはり悲しいね」

コロナはチャンス? 開店めざし中古品求める客も1.5倍に

一方、別の問い合わせも増えている。

テンポスバスターズ・杉山店長:
10月にオープンのお客様がいて、いま備品をそろえていらっしゃるのですけど、至急  品物を確認してくれと言われて確認しています

店内でも、真剣に商品を選ぶ人の姿が見られた。

新規出店をめざし商品を選ぶ客も多い
新規出店をめざし商品を選ぶ客も多い

来店客:
将来的にお店を開こうと思っていまして、リサイクルでそろえた方が金銭的にもいいので

新規出店を目指し、厨房機器を買いに来る客が急増しているそうだ。その割合は、感染拡大前と比べて1.5倍にのぼるという。

出店予定の客「(中古品は)金銭的にいいので」
出店予定の客「(中古品は)金銭的にいいので」

テンポスバスターズ・杉山店長:
コロナ禍で閉店されるお店も多かったのですが、その分、普段は出ないような良い物件や場所が空いたりします。
厨房の機材は中古でコストを落として、(節約した資金を)良い条件の場所での出店にあてようとする方も多いようです。弊社としても予想外の数字で、正直バタバタしています

杉山店長「閉店が多い分、良い物件や場所がでている」
杉山店長「閉店が多い分、良い物件や場所がでている」

出店モデルを切り替えて再挑戦

この時期に出店する方に思いを聞いた。
静岡市葵区で9月にオープンした韓国フライドチキンの専門店。ドライブスルー形式で、できたてのチキンを購入することができる。

9月オープンのフライドチキン専門店(静岡市)
9月オープンのフライドチキン専門店(静岡市)

代表の村山たくやさんは、もともと街中で大型の飲食店を経営していたが、2020年7月に閉店、今回は店舗を小さくして、場所を郊外に移した。

村山さんの前の店は「街中の大型店」、新たな店は「郊外の小規模店」
村山さんの前の店は「街中の大型店」、新たな店は「郊外の小規模店」

TAK CHICKEN 静岡沓谷店・村山たくや代表:
金額的にも抑えた初期投資で店舗自体は作ることができて、日々月々かかるコストをなるべく抑えて、それでも商売として成り立つモデルに切り替えた

苦境に立たされた時に前を向けたのは、長年続けてきた飲食業への思いからだった。

TAK CHICKEN 静岡沓谷店・村山代表:
飲食業が好きで始めたという部分も大きかったので、もうちょっと自分自身が視野を広げたらやれることがある。まだ喜んでもらえて、商売として成り立たせることができるのではないかと考え、チャレンジを決めました

村山さん「視野を広げれば、まだやれることはある」
村山さん「視野を広げれば、まだやれることはある」

初めての自分の店 期待は不安より大きい

一方、初めて自分の店をもつため準備を進めている人もいる。

店主:
ここに壁ができるのですよね

内装業者:
そう、塗り壁ができます

店主:
色合いはどんな感じになりますか

内装業者:
赤です。朱色の塗り壁です

小泉勇さんは静岡市でそば店を開店予定
小泉勇さんは静岡市でそば店を開店予定

静岡市葵区の中心地で、11月にそば店をオープンする小泉勇さん。
8年間の修行の後、2020年3月に独立を決心したが、緊急事態宣言を受け延期。2021年夏から物件探しを再開し、ようやく開業にこぎつけた。

そば店をオープンする小泉勇さん:
カウンターには一枚板のヒノキを使いまして、5人席になります。
(Q.一枚板のヒノキにこだわったのですか)
こだわりました。内装業者に無理を言って探してもらいました

初めての自分の店 一枚板のヒノキのカウンターが自慢
初めての自分の店 一枚板のヒノキのカウンターが自慢

このタイミングでのオープンに不安もあるが、夢の実現のために歩みはとめない。

そば店をオープンする小泉さん:
毎日やっぱり不安で眠れないですね。だけど毎日工事して、店内の風景が変わっていくと楽しみな気持ちもあります。おいしいそばを早く作りたいという気持ちだけを考えてやりました

小泉さん「毎日が不安。おいしいそばを早く作りたい」
小泉さん「毎日が不安。おいしいそばを早く作りたい」

テンポスバスターズ静岡店の来店客データでは、惜しまれつつ閉店する飲食店が増える一方、それを上回る勢いで増えている新規出店。

先行きが見通せない中でも、飲食業をやりたいという強い思いが挑戦を後押ししていると言えそうだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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