長年、四国を中心に路線バスや高速バスの車内アナウンスを担当してきた香川・高松市の女性が、高齢のため引退することになった。
45年間、バスを利用する多くの人に親しまれた声。女性の思いを取材した。
高齢のためバスの車内アナウンスを引退
(バス車内音声)
次は岩崎病院です。車内事故防止のため、バスが止まってから席をお立ちください

香川・三豊市を走るバスの車内に響く車内アナウンス。この女性の声は45年間、四国にある20以上のバス会社で採用され、親しまれてきた。

その声の持ち主は、中川美和子さん(77)。30代から45年間担当したバスの車内アナウンスを、高齢のため引退することになった。

中川美和子さん:
改めて45年前からやっていたのを認識して、自分でも長すぎたかなと
テレビ局のアナウンサーから転身
車内アナウンスの原稿を読む中川さん。
中川美和子さん:
例えば、「引田線(間をあけて)上り」じゃなくて、「引田線上り」。大事なところに印をつけて、注意を払いながら

大学卒業後、中川さんはテレビ局のアナウンサーとして働いていた。

転身を考えていた32歳の時、縁あってこの仕事を始めることになった。
しかし、そこには思わぬ壁があった。
中川美和子さん:
普通にアナウンサーが読めば、「広島」「羽ノ浦」となるけど、(バスアナウンスでは)「広島」「羽ノ浦」(※共に頭にアクセント)という感じで。聞きなれない


中川美和子さん:
バスの車内放送は、そこに人が乗っているから、自分もその場にいる気持ちで、乗っている人に分かりやすく、疲れない読み方(を心掛けた)

変わらない声…トーンもスピードも安定
45年間、声の収録を行ったのは高松市の東洋通信特機。四国で唯一、バス事業者向けの音声を録音している会社だという。

20年以上前に収録された中川さんの声が残っていた。

東洋通信特機・村上勇人さん:
(声が)あまり変わらないですね
中川美和子さん:
わからない(笑)

東洋通信特機・村上勇人さん:
中川さんの声は、30年前でも、今でも中川さんと分かるので。声のトーンもスピードも安定している

数十年前の声と今の声を混ぜ合わせても気にならないため、昔の声も使い続けられるという。

「いつまでも覚えてくれているのが嬉しい」
東洋通信特機・田中基治社長:
長い間大変、大変お疲れ様でした
中川美和子さん:
こちらこそお世話になりまして、ありがとうございました

長年、四国各地のバスで親しまれた声は、徐々に後任の女性の声に切り替わる。
中川美和子さん:
私自身、この45年間無駄じゃなかったんだと、反響のコメントをいただいて。声を長年続けていると、皆さんの耳に慣れて、いつまでも覚えてくれているのがうれしくて、やっててよかったと思った

中川美和子さん:
バスをご利用いただいている皆さま、長い間お世話になりまして、ありがとうございました
(岡山放送)