宮城県の養豚家・高橋希望さんは、東日本大震災の津波から生還した豚に「有難豚(ありがとん)」と名付け、その子孫約100頭を育てている。

高橋さんが取り組む、豚に与えるストレスを最小限にする養豚法「アニマルウェルフェア」や大学生の有志によるプロジェクトを追った。

津波で流された豚たちの使命

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「東日本大震災の時に、うちの農場が津波で全部流されているんですが、流された豚が戻ってきたんです。豚を豚らしく、のびのび健康的に育てたいなっていう思いが高まって、『アニマルウェルフェア』の飼育方法に出会いました」と高橋さんは語る。

日本の一般的な養豚法では、豚はおりから出ることがなく、ストレスで目が充血したり、ケンカで傷ができることもあった。

人間が家畜に与える苦痛や不快感を最小限に抑え、健康的な生活ができるようにする飼育方法「アニマルウェルフェア(動物福祉)」をヨーロッパで学んだ高橋さんは、豚を家族単位で飼い、屋内外でたくさん遊ばせている。

豚を家族単位で飼えば、ケンカをして傷つけ合うことも少なく、高橋さん手作りのおもちゃでみんな仲良く遊んでいる。

エサは酒かすや地元特産の乾麺などを混ぜた特製ブレンド。急激に太ることもなく、病気も減った。

仙台から見学に来たシェフたちは、ゆっくり大切に育てられた「有難豚」が臭みもなく、優しい味わいであることを食べて実感する。

日仏食堂「ラトリエ・ドゥ・ヴィーブル」のシェフ・吉田勝信さんは「すごく愛情がこもっているので、その思いを自分たちの料理で伝えていかなければならない」と話した。

高橋さんは「“いただきます”の本当の意味や裏側にあるその動物たちの命や人間の責任を発信するのが、津波で助かったうちの豚の役割だと思っています」と語った。

“命をいただく”意味を学ぶ

慶應義塾大学商学部の有志が参加する「有難豚プロジェクト」は、高橋さんから一匹の子豚を買い取って、半年間の成長を見守り、肉になった後の試食・販売までを行う活動をしている。

そのメンバーで商学部4年生の八代瑠菜さんは「中高生ぐらいの時に生き物をいただくことに少し抵抗を持ったことがありました。豚にも感情があったりするのを知ったことで、スーパーのお肉とかしか見ていなかった豚が全然違うものとして見えてきた」と活動を通して“食肉”に対する考えが変わったことを明かす。

プロジェクトのメンバーは子豚を「はーとん」と名付け、成長を記録。

しかし、コロナ禍で卸先がなくなったため、はーとんを母豚にして出産を見守ることに。そして、はーとんが13匹の子豚を出産するところまで見届けた。

学生たちは「命のつながりを感じました」と貴重な体験ができたと話す。

今年はこの子豚の中から一匹を選んで、お肉になるまでを見届けていくという。

八代さんは「ずっと見守ってきた豚を食べるってなった時には、『ありがたい』『幸せだな』って気持ちになる。いろいろな視点から『アニマルウェルフェア』の是非を、もっと深く考えていって欲しいと思います」と語った。

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