「あと1mずれてくれれば…」気象災害で尊い命が犠牲に
取材のきっかけは、2021年8月・長野県岡谷市で起きた土砂災害。
住宅の裏山に面したこの1軒に土砂が流れ込み、親子3人の命が犠牲になった。周辺に避難指示は発令されていなかった。
「あと1mずれてくれれば…」と遺族は話す。

同じ岡谷市では、15年前にも梅雨末期の長雨で8人が犠牲になる土砂災害が起きていた。
いま、頻発化・激甚化する気象災害から身を守るためには、避難指示に頼るのではなく“家単位”で避難を判断する事が大事だ。
“自分は大丈夫”と、どこかで“命を守る行動”という言葉を他人事で遠く感じてしまってはいけないのだ。
筆者自身、気象予報士という立場から、もっと身近に、そして誰でも今日から始められる防災とは何かを考えた。
防災で重要なのは“想像力=イマジネーション”
“家族単位”の防災力を上げようと取り組む団体がある。
団体名は「サニーエンジェルス」。
北海道から沖縄まで約200名規模の団体で、全員が気象予報士である。メンバーに子育て経験者が多いのも特徴だ。
子どものうちから天気を身近に感じられるよう、親子で一緒に学べる教室を開催している。

「サニーエンジェルス」を立ち上げた山本由佳さんは「防災で重要なのは、想像力・イマジネーション。想像力をどれだけ豊かにするかがキー。」と話す。
では、その“想像力”を豊かにするために家庭ではどんな事が出来るのか?
「サニーエンジェルス」代表の親子に普段の様子をみせてもらった。
“発見”と“想像力”を身につけることが真の防災教育

息子のそうくん(8)の“発見”と“想像力”を大事にしていると言う母・水渡敬子さん。親子でハザードマップを囲み、自宅の周辺の様子を確認した後に、実際に外を歩いてみた。
親子が向かったのは、普段そうくんが遊んでいる公園。実はこの取材の3日前、この辺りは台風の雨の影響で一面が冠水していた。

子どもでにぎわう楽しい公園が見せる別の表情。
水渡さん親子は、多くの雨が降った後にこの公園で遊ぶと危険だという事を確認し合った。
他にも、近所を歩いてみると…ハザードマップに載っていた“緑道”があった。
「えーっとね・・・浸水しやすいみたいなことをお母さんが言ってた」と8歳のそうくん。
そうくんが覚えていたこの緑道。
家で見たハザードマップに「浸水しやすい場所」として青や水色で示されていた道で、元々は川があった水がたまりやすい場所だ。

他にも住宅街を歩いていると発見があった。
そうくん:
電線と木があたってる!
そうくんの母・水渡敬子さん:
風が強いと切れて発火の可能性があると思う。

実際に歩いてみると、ハザードマップだけでは分からない街中のちょっとした変化を発見し、天気が悪い場合こうなるかもしれないと親子で一緒に想像することができた。
“ヤバい”を養う
子どもの身を守るために、大人が教えなければいけない事は何か?
「サニーエンジェルス」代表でもある、そうくんの母・水渡敬子さんに聞くと・・・
「サニーエンジェルス」代表・そうくんのお母さん 水渡敬子さん:
毎日の生活の中でここ“ヤバい“な!と思える直感を養えるのが良いのかなと思う
大人が言う防災力とは…子供にとって分かりやすい言葉に置き換えると“ヤバい”。
これを発見して次に何が起こるかを想像できる力、今回の取材でそうくん親子はまさにそれを具現化していた。
日頃から何気ない会話で感性を上げておくこと、その家族の小さな積み重ねが、“いざ”という時の“家単位”の防災力に繋がるのではないか。
そして地域・友人へと広がり、気象災害から一人でも多くの人が自分の身を守って欲しい。
(フジテレビ「Live News days」寺西未有)