「皆さん助けて下さい かわいい小さな命で私の命と同じです」

9月28日、中国のSNSに1人の女性が悲痛な訴えを投稿した。そこには次のような言葉が書かれていた。

「私は新型コロナウイルスの患者で今病院で治療を受けています…居住地域の担当者から飼い猫が陽性なので安楽死させるという通知を受けました…心が折れそうです。猫は私にとってとても大事な存在です。5、6年も一緒に生活しました。私の命と同じくらい大事です…皆さん声をあげていただけますか。人は治療・隔離できるのにどうして猫に機会が与えられないのか…猫はずっと家にいて外に出ていないのに…猫にも隔離と治療をしてもらえないのか、皆さんお願いします」

女性が投稿したメッセージ 中国SNSウェイボより
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女性が飼っていた猫

安楽死させる同意書を…

メッセージを投稿した女性は中国黒竜江省のハルビン市に住んでいる。この地域では新型コロナウイルスの感染が9月20日頃から広がっていて、当局によって外出禁止などの封鎖措置がとられている。

女性は9月21日に感染が確認され、自宅で隔離されていた。その後、病院に入院し治療していたところ27日に住んでいる地域の担当者から「飼っている3匹の猫が2回行った検査で2回とも陽性と確認されたため安楽死される」と通知が来たという。

女性は猫を安楽死させることについて同意書を書くよう求められたが当初は同意せず、猫を治療する機会を求めた。しかし、地域からの回答は「ペットを治療する前例はない」というものだった。女性によると3匹の猫のうち、1匹は5~6年、残りの2匹は4年飼っていた猫だという

女性が飼っていた猫

「国は人を救うために全力を尽くしている」

女性に猫の安楽死を求めた地域の担当者は中国メディアの取材に対して次のように答えている。

「現在、動物に対しては専門的な治療法がありません。猫を治療する場所はなく、それに猫は人と違います。猫を処理しない場合、彼女の部屋はウイルスだらけで、戻ることができず、このアパートの人々も、さらにこの一帯の人々も元いた場所に戻ることができない。それでは感染拡大は永遠に終わらないでしょう。国は人を救うために全力を尽くしています。人を救うために多くの物資が使われています。 長年飼っていた猫でかわいい命ということは、我々も理解できますが…」

中国の感染症の予防と管理に関する法律には、「感染症が爆発した際、必要な場合は感染した動物を殺処分する緊急措置を取ることができる」と記載されている。

中国の感染症の予防と管理に関する法律(第42条)

「猫ちゃんたちはもう死んでしまった」

「猫を助けてほしい」という悲痛な訴えをSNSに投稿してから約8時間後、女性が再びメッセージを投稿した。

「猫ちゃんたちはもう死んでしまった。皆さんありがとう。誰かを追及するつもりはありません。小さな猫たちに生きる道を見つけてあげたかったのですが、私たちにチャンスは与えられませんでした。地域の人はみんないい人たち、国のために頑張っているだけです。現在の状況では、国と人々の安全が最優先です。我々感染者の気持ちは感染者しか理解できません。我々も周りに迷惑かけたくないです。健康が最も重要です。私はただウィルスにやられた免疫力の弱い普通の人です…」

女性が再び投稿したメッセージ

“ウィズコロナ”と“ゼロコロナ”の違いがもたらすもの

中国のSNSでは今回の件に関して、「感染拡大を防ぐためには仕方がない」という意見がある一方で、「文明社会ならできる範囲で命を尊重する必要がある」という意見もあった。また、「本当に猫が新型コロナウイルスに感染していたのか?」という疑問の声もある。

飼い主が飼っていた猫

日本やヨーロッパなどが“ウィズコロナ”政策をとっているのに対して、中国は“ゼロコロナ”政策を推し進めている。その結果として数年間一緒に過ごしていたペットが殺処分された。一部の研究では、飼い主が感染した場合、ペットも感染することは珍しくないとされている。

ただ、人から動物への感染は確認されているものの、ペットから飼い主への感染を示す証拠はまだ確認されていないという。このため、実際に感染したペットを殺処分するほど厳しい対応が必要なのかは、感染対策をどこまで徹底するかにかかっていると言えるだろう。

中国の場合は、「国は人を救うために全力を尽くしている」とされ、ペットも“ゼロコロナ”の例外ではないことがわかる。3匹の猫を殺処分された女性も悲しみながらも「現在の状況では、国と人々の安全が最優先だと思う」と受け入れている。

それでは日本で同じような状況になった場合はどうなるのか。東京都福祉保健局の担当者は「ペットに対する考え方は国によって違う」とした上で、東京都の場合は、「新型コロナウイルスの感染に関わらず、基本は普段から飼い主に何かあった時にペットを預かってもらえる場所や人を確保しておいてほしいが、どうしようもない時は東京都の動物愛護センターで預かります。」と話す。そして、「中国のように殺処分することはあり得るか?」という質問に対して、「そのような対応は現時点ではない。」と話した。

【執筆:FNN北京支局 河村忠徳】
【猫の画像:中国SNSより】