世界的に株安の連鎖が起きている。ニューヨーク市場のダウ平均が600ドルを超える急落となったのに続き、東京市場の日経平均株価も600円を超えて下落した。市場に一撃を与えたのが、中国不動産大手「中国恒大集団」の経営危機だ。

「金を返せ!」の叫び声

「恒大集団」の本社には先週、たくさんの投資家が詰めかける事態となった。「金を返せ!」との叫び声が響きわたるなか、警備員と睨み合い、座り込みをする人の姿も見られた。

「恒大集団」は、1996年に許家印氏が創業した会社だ。一代で中国第2位となる不動産会社に成長させた。マンション開発を主力に、中国の不動産市場の拡大とともに急成長し、積極的に借金を重ねて投資を広げてきた。

不動産業以外にも、電気自動車事業にも参入し、サッカークラブ運営に乗り出したほか、食品の販売や観光業も手掛け、子供向けのテーマパークも建設して、ディズニーランドより広いとうたうなど、多角化経営を行ってきた。

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強化されてきた不動産業界への規制

一方で、このところ、中国経済は、コロナ禍から立ち直り、大量に余ったお金がさらに不動産に回り、不動産価格が一段と高くなっていた。中国政府はそのバブルを抑え込もうと、不動産業界への規制を相次いで強化する。

そのため、恒大は銀行からお金の借り入れを増やすことが出来なくなり、借金を減らすため、資産の切り売りにさらに追い込まれていたのだ。

FNNでは、今日、工事が止まっている恒大の建設現場を取材した。新規プロジェクトが停止し、建築がストップしている。近くで働く男性は次のように語った。

「(工事が止まったのは)だいたい8月上旬だと思う。恒大の資金繰りが苦しいからみたいだ。工事現場の労働者はもう撤退した」

膨らむ負債と到来する利払い日

一段と資金繰りが厳しくなるなか、今年6月時点で、有利子負債は5718億元、日本円で9.8兆円にまで膨らんでいた。きのうは一部金融機関に対する利払いの期限だったが、支払いができなかったとみられている。

さらに、あさって以降、過去に発行した社債の利払い日が相次いでやってくる。

世界の金融市場では、このところ、株価は堅調な動きを見せていた。

なかでも、新政権への期待で上昇が目立っていたのが日本株だったが、アメリカでは、市場に大量のお金を流し込んできた金融緩和の縮小が年内にも始まるのではとの見方が強まり、世界的な物流網の混乱などもあって、楽観ムードが後退していたのだ。

こうしたなか、中国巨大企業の経営悪化への懸念が投資家の間で広がったことが、株安の引き金を引いたというわけだ。

リーマン・ショックの再来は

恒大集団の経営が破綻したら、かつてのアメリカのリーマン・ショックのときのように、世界的な金融危機になると懸念する声がある一方、一部の貸出が不良債権化しても、十分に処理が可能な範囲のため、金融システムが大きく揺らぐ可能性は高くないとの指摘もある。

ただ、その場合でも、景気が減速する要因として、注意しておく必要は十分ありそうだ。

一方、日本も恒大集団と意外な関わりがある。日本の公的年金を運用するGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人が、「中国恒大集団」とグループ企業に投資した実績があることがわかったのだ。今年3月末時点で、株式と社債をあわせておよそ97億円分保有している。全体の運用資産額およそ186兆円からすると、割合は少ないといえるものの、GPIFは、「年金運用に影響が生じるとは考えていないが、今後もリスク管理に努めながら、長期的な観点から運用を行っていく」とコメントしている。

果たして、中国政府が救済に乗り出すのか、救済しない場合は、経済への打撃を抑えて決着させることができるのか。「チャイナリスク」が今後の世界の金融市場の行方を左右することになりそうだ。

【執筆:フジテレビ 経済部長兼解説委員 智田裕一】