新型コロナウイルス患者の重症化を改善する治療法「ネーザルハイフロー」が注目を集めている。金沢医療センターの北医師は、「医療資源の確保にもメリットがある」と期待を寄せている。

重症化防ぐ治療法「ネーザルハイフロー」

県内の元コロナ患者:
空気が(肺に)すごく入ってくる感じがして、深呼吸の「吸う」のが、一瞬だけで大丈夫みたいな感じでした

このように話すのは、石川県内で新型コロナウイルスに感染した元患者。肺炎による呼吸困難で人工呼吸器を装着する寸前だったが、ある治療法のおかげで症状が劇的に改善した。
それが「ネーザルハイフロー」。

呼吸療法機器「ネーザルハイフロー」
呼吸療法機器「ネーザルハイフロー」
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患者の鼻に管を装着し、加湿・加温された最大100%の濃度の酸素を、1分間に約40リットルという高い流量で投与する治療法。

高い濃度の酸素を投与できる
高い濃度の酸素を投与できる

一般的な酸素マスクなどと比べると、投与できる酸素の量は数倍。これまでだと人工呼吸器を付けざるを得なかった状態の患者を次々と救っている。

この治療方法は、鼻をふさがれているので、口からウィルスを含む飛沫(エアロゾル)が飛び散り周囲環境が汚染されたり、医療従事者が暴露するといった院内感染のリスクが高まることが危惧されてきた。

しかし、陰圧個室で使用し、医療者はN95マスクを含めたPPE装着を遵守する、カニュラを鼻腔内に正確に設置する、カニュラの上からマスクを装着するなどの感染対策を徹底することで院内感染のリスクを減らすことが出来るようになり、2021年5月に厚生労働省のコロナ診療の手引きに加わった。

投与できる量は数倍
投与できる量は数倍

金沢医療センター 呼吸器内科・北俊之部長:
これまでに、この治療法を13人の患者さんに対して使ってきております(2021年9月17日現在)。そのうちの6人は人工呼吸器に移行することなく、元気になって退院されました。3例ほどはこの治療でも改善しなくて、人工呼吸器に至った患者さんもいらっしゃいます。ただ、その方々も人工呼吸器から上手く離脱できて、元気に退院していらっしゃいます

「ネーザルハイフロー」により症状が改善した例も
「ネーザルハイフロー」により症状が改善した例も

酸素マスクのように口を覆わないため、会話や食事もできるこの治療法。

会話や食事も可能に
会話や食事も可能に

医療スタッフ確保につながるメリットも

医療従事者にもメリットがあると、北医師は言う。

金沢医療センター 呼吸器内科・北俊之部長:
人工呼吸器というのは全身麻酔をかけますので、生体情報(血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度など)のモニタリングが必要になります。回復後もリハビリなどが必要となる場合が多く、入院期間も長くなり、医療側の負担も大きくなり、たくさんのスタッフが必要になります。
ネーザルハイフローの段階で回復すれば人手もかからず、医療側の負担軽減につながりますし、集中治療室のベッドや人工呼吸器の台数にも余裕が生まれます。医療資源を温存できるという点に関しても、これを使うことでメリットがあると思います

スタッフやベッドの確保にもメリットがあるという
スタッフやベッドの確保にもメリットがあるという

現在は退院し、少し後遺症はあるものの、日常生活を送れるまで回復した元患者は…

元コロナ患者:
人工呼吸器にならずに済んで本当に良かったなと思います。治療とかお世話とかしていただいて、本当に感謝しかありません

確実に治療の選択肢が増えてきた医療現場。
問題は、その治療法が必要な人に届かないこと。感染爆発を起こさないために私たちができることを一つ一つ行うことが大切となる。

(石川テレビ)

石川テレビ
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